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(22) 2020/20210シーズン公演(最終更新日:2021.4.7)-------- (大部分の画像は、クリックすると大きくなります)

2020.9.3:「フィデリオ」
2020.10.10:「夏の夜の夢」
2020.11.21:「アルマゲドンの夢」
2021.3.6:「悩める劇場支配人」
2021.3.20:「ワルキューレ」
2021.4.6:「夜鳴きうぐいす/イオランタ」


《過去のシーズン公演》:  1999/2000 * 2000/2001 * 2001/2002 * 2002/2003 * 2003/2004 * 2004/2005 * 2005/2006 * 2006/2007 * 2007/2008 * 2008/2009 * 2009/2010 * 2010/2011 * 2011/2012 * 2012/2013 * 2013/2014* 2014/2015* 2015/2016 * 2016/2017* 2017/2018* 2018/2019 * 2019/2020


2020.9.3:「フィデリオ」

7ヶ月ぶりにオペラパレスに出かけ、東京二期会オペラ劇場公演(日本オペラ振興会、新国立劇場共催)の「フィデリオ」を観た。 消毒、連絡先の記入、客席の半減等の物々しいコロナ感染対策がとられていたが、オペラ公演が再開されたのは何よりである。
今年は、ベートベン生誕250周年を記念する年であり、二期会の力の入れ方も大きかったと思われるが、歌手陣は国際的な水準を抜く 素晴らしさであった。男声陣では、フロレスタン役の福井 敬(T)、ドン・ピツァロ役の大沼 徹(Br)、ロッコ役の妻屋 秀和(Bs)、 ドン・フェルナンド役の黒田 博(Br)、ヤッキーノ役の松原 友(T)、いずれも持ち前の強靭な美声を響かせ、好演であった。 女声陣では、レオノーレを歌った土屋優子(S)は、2年前の日伊声楽コンコルソ(優勝)時にも目立ったが、特大の声量を誇る福井 敬 と互角に渡り合える豊かな声量を持っているが、響きに若干硬さを感じる場面もあった。マルツェリーネ役の冨平安希子(S)は、 抜群の歌唱力と可憐な容姿で舞台に華を添えた。
一方、時代を18世紀から20世紀後半に移し、壁に閉ざされた世界と自由への願望を、2幕を通して前面の沙幕に短いコメント (主張・解説)や映像を流し強調した意欲的な深作健太の演出は、原作のストーリーともうまく合致し、なかなか説得力があった。
管弦楽は、大植英次指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2020.9.4 記)


2020.10.10:「夏の夜の夢」

文化庁芸術祭主催公演、新国立劇場の今シーズン公演の第一作としてブリテンの「夏の夜の夢」が上演された。 このオペラは、むしろ「真夏の夜の夢」として親しんできたが、原題にある midsummerは、 夏至なので真夏ではないことを公演プログラムの解説で初めて知った。なお、今公演は、コロナ禍のため予定されていた6人の外国人歌手が全てキャンセルとなり、 オール邦人歌手で上演されたが、新旧の実力派歌手を集め、なかなか高水準の公演であった。 カタカナ名の歌手が入っていないと集客力に差が出るらしいが、歌唱力では邦人歌手だけで十分と再認識した。主役級のティターニア役の平井香織(S)、ヘレナ役の 大隅智佳子、ライサンダー役の村上公太(T)、 ディミートリアス役の近藤 圭(Br)はいずれも見事な歌唱を披露し、好演であった。特に大隅ののびのびとした豊麗な声が光っていた。 なお、往年のJ・コヴァルスキーのような例外を除いて、個人的にはカウンターテナーの声は一般的に好きではないためもあり、 オーベロン役の藤木大地(Ct)は歌は上手いとは思ったが、多少物足りなくも感じた。
一方、R.スミスによる演出は、舞台左上の巨大な月に照らされたアテネの森は、幻想的な雰囲気充分ではあったが、森の巨木であるべきところに格子状の 人工物(屋根)を配したのは、やや興ざめであった。先日、クラシカ・ジャパンで観たシューベルトのオペラのように背面の大スクリーンを活用して 森林を現出する手もあったのかもしれない。衣装も美しく、小道具類もなかなか手の込んだものであった。 管弦楽は、飯森範親指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2020.10.12 記)


2020.11.21:「アルマゲドンの夢」

日本人作曲家への創作委嘱シリーズの第2弾として、20世紀初頭に書かれたH.G.ウェルズのSF短編『アルマゲドンの夢』 を題材とした藤倉大作曲の同名 の新作オペラが世界初演された。高校生時代にウェルズの「A Short History of the World」を読んだ記憶もあり、ウェルズには親しみを覚えるが、 120年前に20世紀の2度の世界大戦を予言するような小説を書いていたのは、さすがである。 ハリー・ロスによる台本(英語)は、あらすじで比較したように原作にかなり忠実ではあるが、“予習”をしていなかったこともあり、 休憩なしの100分間のテンポの早い展開をフォローするのは楽ではなかった。
藤倉大の音楽は、序曲がアカペラのコーラスで始まる斬新なものであったが、台本に寄り添い、ある時は陰鬱に、ある時は勇壮に、 精緻を極めた管弦楽の響きが特に素晴らしかった。歌手陣では、コロナ禍の制約を超えて出演した英語圏出身の主役3人(クーパー・ヒードン役の ピーター・タンジッツ、 フォ−トナム・ロスコー/ジョンソン・イーヴシャム役のセス・カリコ、 ベラ・ロッジア役のジェシカ・アゾーティ) は、いずれも素晴らしい声を持ち、まさに適役であった。脇役ながら2人の邦人歌手(インスペクター役の 加納悦子、 歌手/冷笑者役の望月哲也)も好演。
一方、映像とオペラパレスの高度の舞台機構を巧みに活用したシュタイアーの演出は、大変素晴らしかった。特に、冒頭、背景の夜の街が高速で 飛び去る電車内の場面は、臨場感満点であった。切れ目なしのスムーズな舞台転換も見事であった。カラフルな衣装にも目を楽しませてもらった。
管弦楽は、このオペラの生みの親といえる大野和士自身の指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2020.1.22 記)


(2020.11.29〜12.6:「こうもり」)
(2021.1.23〜2.3:「トスカ」)
(2021.2.7〜2.14:「フィガロの結婚」)
2021.3.6:「悩める劇場支配人」

新国立劇場オペラ研修所修了公演として、 チマローザ作曲の「悩める劇場支配人」が 選ばれた。このオペラはモーツアルトの「劇場支配人」が初演された1786年に半年 ほど遅れて初演され、好評であったことを新国の「公演情報」で初めて知った。 ストーリーは、劇場支配人が3人の気ままなプリマドンナに振り回されるという楽屋話であるが、 「秘密の結婚」や「宮廷学士長」同様、音楽的にもなかなか良くまとまっており、結構楽しめた。 今回の 出演歌手は、この日は22/23期生中心の公演であったが、 総じてなかなか立派な演奏であった。 女声陣では、フィオルディスピーナ役の原田奈於(S、22期生)の歌唱力やドラルバ役の内山歌寿美 (S、23期生)の豊麗な声が特に印象に残った。男声陣では、詩人:ドン・ペリツォニオ役の程 音総(Br、22期生)、 劇場支配人:ドン・クリソーボロ役の湯浅貴斗(Bs、22期生)及びストラビーニオ役の大久保惇史(Br、23期生)の 3人がいずれ劣らぬ美声を駆使して好演であった。これら将来を嘱望される研修生の今後の成長及び活躍に期待したい。
一方、久恒秀典演出による舞台は、吊り下げた複数の大きなアーチを自在に動かして変化がつけられ、巧みな照明と相俟って、 簡素ながら視覚的にも楽しいものとなった。
管弦楽は、辻博之指揮下の新国立アカデミーアンサンブル。(2021.3.7 記)


2021.3.20:「ワルキューレ」

故ゲッツ・フリードリッヒ演出による「ワルキューレ」が5年ぶりに上演されたが、コロナ騒動下の今公演では 当初予定されていた5人の外国人歌手が1人だけになってしまい、邦人歌手主体となった。しかも、ジークムント は、1幕、2幕をわけ、1役2人という異例のキャスティングとなった。 しかし、演奏自体の水準は十分に高く満足できた。 まず、ジークリンデを歌った小林厚子は3年前代役出演した「トスカ」の時同様、豊麗な美声が活かされひときわ好演であった。 ジークムント役の第一幕をうたった、村上敏明 は意外なキャスティングではあったが、持ち前の強靭な声と優れた歌唱力を発揮して 見事に歌い切った。20年ほど前にMETで聴いたドミンゴ並とまでは言えないが、なかなかの好演。第二幕を歌った 秋谷直之を聴くのは、16年前の「ジーク フリートの冒険」以来であったが、相変わらず若々しい声でやはり好演。 ブリュンヒルデ役の池田香織は、1月の「サムソンとデリラ」で聴いたばかりであるが、声量もあり、貴重な存在である。 フリッカを歌った欧米で大活躍中の藤村美穂子 は、2002年の「トーキョーリング」でも同役を歌っており、まさにはまり役。完璧な歌唱であった。ヴォータン役の ミヒャエル・クプファー=ラデッキーは、重厚なというよりは美声のと言いたくなる暖かみのある声の持ち主であるが、 神として父親としての苦悩を見事に表現した歌唱力、演技力とも素晴らしかった。久し振りに聞きいたフンデイング役の 長谷川章顯も存在感十分であった。また、8人のノルンの内5人が前回にも出演しており、良く声が出ていた。
一方、故G.フリードリッヒ による演出は、前回感じた通りであるが、第一幕は家屋を傾け、陰鬱な雰囲気を強調していたが トネリコの大木も平板で目立たず、やや期待はずれ。第二幕「荒涼とした岩山」の場面は、舞台を斜めに横切る 2枚の巨大な板と回り舞台をうまく活用して、なかなかの迫力であった。第3幕の「岩山の頂き」の場面は、 多数のライトに照らされた空港の滑走路のような現代的な平面で少々違和感を持った。また、ブリュンヒルデを閉じ込める炎は、 幾何学的な長方形で不自然さはあったが、視覚的にはなかなか見ごたえがあった。
管弦楽は、大野和士指揮下の東京交響楽団。(2021.3.21 記)


2021.4.6 「夜鳴きうぐいす/イオランタ」

ストラヴィンスキー作曲の「夜鳴きうぐいす」と チャイコフスキー作曲の「イオランタ」という短編ロシアオペラが2本立て 上演された。「イオランタ」は、ピアノ伴奏ながら10年ほど前に武蔵野市民文化会館で、また2年前には 新国立劇場オペラ研修所公演で実演に接したことがあるが、「夜鳴きうぐいす」は今回初めて実演に接した。 今公演もコロナがらみで、邦人歌手中心で上演されたが、十分に高水準の演奏であった。

「夜鳴きうぐいす」
ストラヴィンスキーのオペラでは、30年以上前の来日ベルリン・ドイツオペラで観た「放蕩児の遍歴(The Rake's Progress) が印象に残っているが、彼の最初のオペラである「夜鳴きうぐいす」は、独特のリズムの片鱗がみられた管弦楽部は 別にして、声楽部は特に印象に残るものではなかったが、今公演ではヤニス・コッコスによる演出・美術・衣装が素晴らしかった。 特に第二幕の稲妻や太陽を模したつるし飾りを配したメルヘンチックな中国の宮殿の場面は、大いに目を 楽しませてくれた。また、出演者の衣装も大変凝ったもので、色彩も鮮やかであった。なお、短編ながら本来3幕ものの オペラでるが、今公演では、続けて上演された。
一方、歌手陣は、可憐な声とスリムな容姿を持つ題名役の三宅理恵(S)が 適役であり、好演。脇役陣の実力派:針生美智子、志村文彦、山下牧子も存在感十分の好演。


「イオランタ」

今公演の演出は、2年前のオペラ研修所公演と同じヤニス・コッコスであったが、巨木に囲まれた白い小城は、南フランス 山間の雰囲気をかなり良く出してはいたが、緑が全くなく、少々殺風景にも感じた。せめて舞台中央のイトスギ様の木は、 茶色ではなく緑にしてほしかった。また、階段外側の高すぎる白壁も気になった。
一方、歌手陣では、やはり題名役の大隅智佳子(S)とルネ役の妻屋秀和(Bs)が素晴らしかった。 大隅は、期待通り持ち前の伸びのある豊麗な声を駆使して、METライブでのネトレプコ(2015年)に匹敵する好演であった。 妻屋は、今回もいつも通り重厚な美声を響かせ、王としての威厳と父親としての苦悩を見事に表現した。 ヴォデモン役の内山信吾(T)は、美声ではあるが、力みすぎか、高音が少々苦しそうにみえた。脇役陣ではアルト役マルタを歌った 山下牧子(Ms)、エブン=ハキア(医者)役のヴィタリ・ユシュマノフが光っていた。
管弦楽は、高関健指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2021.4.7 記)


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