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(22) 2017/2018シーズン公演(最終更新日:2018.7.16)-------- (大部分の画像は、クリックすると大きくなります)

2017.10.11:「神々の黄昏」
2017.10.14:「ミスター・シンデレラ」
2017.11.11:「ビバ!ラ・マンマ」
2018.2.18:「松風」
2018.3.3:「ホフマン物語」
2018.3.10:「イル・カンピエッロ」
2018.5.24:「フィデリオ」
2018.6.30:「2つのロメオとジュリエット」
2018.7.15:「トスカ」


《過去のシーズン公演》:  1999/2000 * 2000/2001 * 2001/2002 * 2002/2003 * 2003/2004 * 2004/2005 * 2005/2006 * 2006/2007 * 2007/2008 * 2008/2009 * 2009/2010 * 2010/2011 * 2011/2012 * 2012/2013 * 2013/2014* 2014/2015* 2015/2016 * 2016/2017


2017.10.11:「神々の黄昏」

新国立劇場開場20周年記念の今シーズンの開幕公演としてR.ワグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」の最終作である 「神々の黄昏」が上演された。 今公演は、 故ゲッツ・フリードリヒ演出による「リング」の完結編である。 プロローグ及び第1幕は、工事現場のような鉄骨が林立するまとまりのない舞台で失望したが、第2幕のギービッヒ家の 広間の場面は、一転して荘厳な雰囲気が漂い見事であった。第3幕も第2幕の骨格を残していたが、フィナーレのヴァルハル城の崩落 の場面は、背面の炎の映像と前面の太い柱の倒壊を巧みに組み合わせ、迫力満点であった。
一方、歌手陣は、脇役の日本人歌手を含めて、十分に満足できるものであった。 ジークフリート役は、新国ではおなじみのステファン・グールド(T) が歌ったが、体躯同様の豊かな美声を駆使して好演!ブルンヒルデ役の ペトラ・ラング(S)も豊かな美声の持ち主であり、好演ではあるが、昨年の「ローエングリン」のオルトルートの場合同様、高音部の響きに やや余裕がないように感じた。ハーゲン役のアルベルト・ペーセンドルファー(Bs)は、体調不良とのことであったが、重厚な美声は健在で 存在感十分であった。アルベリヒ役の島村武男(Br)、グンター役のアントン・ケレミチェフ(Br)、 グートルーネ役の安藤赴美子(S)及び3人のノルン(竹本節子、池田香織、橋爪ゆか)も好演。管弦楽は、飯森泰次郎指揮下の読売日本交響楽団。(2017.10.13 記)


2017.10.14:「ミスター・シンデレラ」

日本オペラ協会の 室内オペラシリーズ として伊藤康英作曲、高木 達台本の「ミスター・シンデレラ」が小劇場で上演された。この オペラは、2001年に鹿児島オペラ協会委嘱作品として初演されたものを室内オペラ版に編曲・改訂したもの で、オペラ本来の娯楽性を強調したものである。ストーリーは、時間によって男女が入れ替わる薬を間違って 飲んでしまった男とその妻の不倫未遂騒動を組み合わせたドタバタ劇であるが、「真実の愛とは、幸せとは」という テーマをコミカルに表現したもののようである。予備知識なしで観たこともあり、荒唐無稽な筋を追うのに忙しく、第1幕 では余り笑えなかった。松本重孝の演出では、珍しくはないが劇場の 通路を利用したり、コスト削減のためか冷蔵庫やドアを垂れ幕に描いて分散配置していたのがちょっと面白かった。
一方、音楽的には、管楽器中心の10名編成の室内楽版(原曲は二管編成のオケ)で演奏されたが、軽快なテンポでドラマとの 掛け合いも見事で、音量的にもむしろバランスが良かった。出演歌手 は、伊集院正男役の中井亮一(T)、赤毛の女役の楠野麻衣(S)等初めて聴く人が多かったが、皆熱唱・熱演であった。 しかし、やはり一番印象に残ったのは、垣内教授役を歌った実力者の 森口賢二(Br)であった。管弦楽は、坂本和彦指揮下のG・Dream21アンサンブル。(2017.10.15 記)



2017.11.11:「ビバ!ラ・マンマ」

東京オペラ・プロデュースの定期公演として ドニゼッティ作曲のオペラ・ブッファ「ビバ!ラ・マンマ」が中劇場で 上演された。このオペラは、原題の「劇場的都合・不都合」が示すとおりオペラ上演にまつわる舞台裏のゴタゴタを扱ったもの で、現実離れしたストーリーのドタバタ劇ではあったが、ドニゼッティらしい軽妙な音楽もあり、抱腹絶倒とまではいかなくとも 結構楽しめた。
東京オペラ・プロデュースのメンバー主体の出演歌手は、適材適所で皆好演であった。 コリッラ役の翠 千賀は、容姿を含めてわがままなプリマ・ドンナ役は最適。 マンマ・アガタを歌ったハンサムな羽山 晃生は、女装しても見事な熟女ぶりであった。そのほかドイツ人テノール:グリエルモ役の 上原 正敏、コリッラの亭主プローコロ役の 米谷 毅彦、興行主インプレザーリオ役の佐藤 泰弘等も好演。なお、第2幕では、マンマ・アガタ、コリッラ及びルイジアが ドラマのすじを離れ、「ドン・ジョヴァンニ」、「セヴィリアの理髪師」、「ノルマ」などのアリアを歌い、さながらガラ・ コンサートのようであった。このあたりは、youtubeで観る 欧米の公演とも異なり、今公演の独自の演出だと思われる。羽山弘子(セコンダ・ドンナ:ルイジア役)のツェルリーナのアリアは、 部分的に故意に極端に音程を外し、なかなか面白かった。翠 千賀のノルマは、正統的なものであったが、羽山 晃生のロジーナ(「今の歌声」)には、 さすがに違和感を覚えた。一方、馬場 紀雄演出による舞台は、額縁や吊るしものに工夫を凝らし、目を楽しませてくれた。
管弦楽は、飯坂 純指揮下の東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団。(2017.11.12 記)


(2017.11.30〜12.9:「椿姫」)

(2017.11.30〜12.9:「こうもり」)

(2018.1.18〜28:「ばらの騎士」)

  2018.2.18:「松風」
このオペラは、世阿弥による能の名作を基に若手作家のハンナ・デュブゲンが ドイツ語の台本を執筆し、細川俊夫が作曲したものであり、2011年に ベルギーのモネ劇場で世界初演され、その後も毎年のごとく欧米で上演されてきている。 音楽的には、ゆったりとした詠唱と洋楽器を用いながら和楽器の響きをも引き出した独特の管弦楽とが相俟って見事に幽玄の世界を現出している。 (サシャ・ヴァルツ&ゲスツ)しかしサシャ・ヴァルツ演出による今公演の特徴は、オペラとコンテンポラリー・ダンス の完全融合(コレオグラフィック・オペラ)を図り、常に同時進行させていることである。舞台装置はモノトーンのシンプルなものであったが、出演者の衣装も 総じて地味であったが、物語及び音楽にマッチしたユニークな演出であった。一方、もう少しカラフルな演出での上演に接してみたいとも思った。
出演歌手は、ソリストは4人だけであるが、松風を歌ったイルゼ・エーレンス(S)及び 村雨を歌ったシャルロッテ・ヘッレカント(Ms)は、欧州の歌劇場での同役の出演歴があり、 旅の僧を歌ったグリゴリー・シュカルベ(Bs)と共に豊かな美声を活かして好演であった。 管弦楽は、デヴィット・ロバート・コールマン指揮下の東京交響楽団。(2018.2.19 記)


2018.3.3:「ホフマン物語」

オッフェンバックの「ホフマン物語」は、5年前の東京二期会の創立60周年記念公演はべつとして、新国立劇場主催公演としては、 フィリップ・アロー演出のものが2003年の公演以来、再演が繰り返されている(2005年、2013年)。 “色彩の魔術師”の異名を持つアルロー (演出、美術、照明)の舞台は、15年振りに観たが、やはり新鮮で蛍光塗料や赤と黒を基調とした鮮やか衣装 で、目を楽しませてもらった。また、 第二幕のオランピアは、通常は2足歩行のオランピアが、この演出では台車付きの巨大なスカート をはいたユニークな機械人形としたのが面白い。
一方、出演歌手は、3人の外国人歌手のほか、これまで通り主要なキャストにも日本人歌手 雅大勢起用されている。題名役のディミトリー・コルチャック(T)は 2年前のウェルテル同様強靭な美声を駆使し、期待通りの好演であった。リンドルフ、コッペリウス等4役を歌った新国初登場の トマス・コニエチュニー(BsBr、ポーランド出身)の強靭かつ重厚な 美声は圧巻であった。ニクラウス/ミューズを歌ったレネ・ベルキナ(Ms)は、超美声というわけではないが、立派な歌唱であった。オランピア役の 安井陽子は5年前の">二期会公演でも好演した オランピアは二期会公演でも好演した安井陽子(S)が歌ったが、今回も同様に好演。アントニアを歌った砂川涼子(S)は、 好演ではあったが、国内の主要コンクールで連勝していた頃の比べて声の透明度が若干落ちたようにも感じた。ジュリエタを歌った横山恵子(S)は強靭な 美声が健在。ルーテル/クレスペルを歌った大久保光哉(Br)をはじめとする脇役男性陣も充実していた。 管弦楽は、セバスティアン・ルラン指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2018.3.4 記)


2018.3.10:「イル・カンピエッロ」

今年度の新国立劇場オペラ研修所修了公演としてヴォルフ・フェラーリ の「イル・カンピエッロ」が中劇場で上演された。V.フェラーリが作曲した15作のオペラの内新国立劇場では、これまでに藤原歌劇団公演の 「イル・カンピエッロ」のほか 「スザンナの秘密」及び「シンデレラ」の3作が上演されているが、「イル・カンピエッロ(小さな広場)」は、 音楽的及びストーリー的に比較的面白いためか内外で何度か上演されている。主要な登場人物が10人と多く、このような研修所公演に適しているとも言えそうである。 ストーリーは、結構込み入っているが、元騎士と町娘との間に生まれたガスパリーナが、紆余曲折の末、落ちぶれてはいるが騎士アストルフィとめでたく結ばれるという 罪のないものであるが、この間テノールが扮する2人の母親とその娘達、恋人などが入り乱れて、歌い、喚き、取っ組み合いをするドタバタ喜劇である。 このオペラは、20世紀(1936年)に初演された作品ではあるが、音楽的には甘く美しい旋律に溢れ、19世紀初頭の作品かと思ってしまいそうである。終幕で歌われるアリア 「さようなら愛しのヴェネチア」の旋律が全編を通して現れる、きわめて耳当たり良いオペラである。 粟國淳の演出による舞台のコミカルで大げさな所作も面白かった。 当時(設定:18世紀中頃)のイタリアの標準語であったトスカーナ語とヴェネチア方言との違いが理解できれば、さらに面白かった者と思う。なお、登場人物の大半が住んで いる長屋の造りも簡素ながら機能的に良くできてはいたが、木造であったため、医師やレンガ造りのヴェネチアの下町の雰囲気が十分に出せなかったのは少々残念であった。
出演歌手は、18〜20期生が6人、賛助出演が4人であった。賛助出演の4人(渡辺 大、 伊藤 達人、 市川浩平、清水那由太) は、さすがに歌も演技も堂に入っており、好演であった。研修生もみな熱演であったが、歌ではガスパリーナを歌った 西尾友香理(S)が天与の美声が活かして特に素晴らしかった。ルシエータ役の平野柚香(S)及びニェーゼ役の斉藤真歩(S)も素直な歌唱で好演であった。 オルソラ役の一條翠葉(Ms)、2人のバリトン(アストルフィ役の町野知弘及びアンゾレート役の伊良波良真)もそれぞれ立派な声を披露した。
管弦楽は、真郁指揮下の新国立アカデミーアンサンブル。合唱は、4音大(国立、昭和、桐朋、武蔵野)有志(2018.3.11 記)


2018.5.24:「フィデリオ」

ベートーベン唯一のオペラ「フィデリオ」が新国立劇場では2005年(及び2006年)の 公演以来十数年ぶりに上演された。今公演は、R.ワーグナーの曽孫であるカタリーナ・ワーグナー の演出とのことで、期待して出かけた。しかし、2層構造の舞台装置は、それなりに良くできてはいたが、 構造が複雑で人物の動きが見やすいとは言えなかった。また、序曲の最中に監獄の中庭に音をたてて"芝生"を思わせるマットを敷き始めたの も無意味に思えた。総体的には少々期待外れであった。終演直後のブーイングもかなり激しかった。 一方、内外の歌手陣は、適材適所で十分満足できるものであった。殊に、これ までも新国でオテロやジークフリート役を好演し、今回フロレスタンを歌った ステファン・グールドの強靭な美声が圧倒的であった。やはり新国昨シーズンの「ジークフリート」でブリュンヒルデ役を好演 したレオノーレ役のリカルダ・メルベート 及び新国初登場でドン・ピツァロを歌ったミヒャエル・クプファー=ラデツキー も立派な声の持ち主で好演であった。日本人歌手もみな好演であったが、特に妻屋秀和は、今回も重厚な美声を披露して存在感十分の好演であった。また、マルツェリーナ役の石橋栄実は、これまで新国での2回の「沈黙」のオハル 役や昨年の「ボエーム」でムゼッタ役での好演が印象に残っているが、今回のマルゼリーネ役でも心地よく美声を響かせ、好演であった。新国立劇場合唱団 もいつも通り素晴らしく、フィナーレの「この日に祝福荒れ」は圧巻であった。
管弦楽は、飯森泰次郎指揮下の東京交響楽団。(2018.5.26 記)


2018.6,30:「2つのロメオとジュリエット」

新国立劇場オペラ研修所の試演会で「2つのロメオとジュリエット」と題して同じシェイクスピアの原作に基づくC.グノーの 「ロメオとジュリエット」とV.ベッリーニの「カプレーティ家とモンテッキ家」が小劇場でピアノ伴奏で抜粋上演された。 抜粋版ながら台本作家及び言語の違い(仏・伊)が良く分かり、面白い企画であったが、個人的には主として音楽的な観点から ベッリーニ版に軍配を上げたい。また、グノー版の場合、ピアノの音が目立ち過ぎか感があった。この種の公演で、よりオーケストラに近い エレクトーンを取り入れることはできないものあろうか。
今公演は、オペラ研修所の19〜21期生が中心でOBの2人が賛助出演した。 一部には細かい破綻もあったが、全員熱演であった。中でも「カプレーティ家」でジュリエットを歌った21期生の井口侑奏(S)の軽やかな美声 及び「ロメオ」で神父役、「カプレーティ家」でロレンツオ役を歌った19期生の伊良部良真(Br)の重厚な存在感が特に印象に残った。
指揮:河原忠之。ピアノ:「ロメオとジュリエット」石野真穂・高田絢子。「カプレーティ家とモンテッキ家」:岩渕慶子・原田園美。(2018.7.1 記)

「ロメオとジュリエット」


2018.7.15:「トスカ」

今シーズンの最終作としてG.プッチーニの「トスカ」が上演された。今公演のアントネッロ・マダウ=ディアツによる演出は、これまでに新国で3回( 2000年2009年2012年)観ているが、舞台装置は、正統的で重厚かつ豪華なものであり、 今回も十分に目を楽しませてもらった。第一幕の教会内部での場面転換、及び第三幕のサンタンジェロ城の地下牢と屋上の場面の 切り替えは、新国の高度の舞台機構を活用して見事であった。また、登場人物の衣装も大変手の込んだものであった。
歌手陣も内外の実力者を集め、聴きごたえ十分であった。主役のトスカは、予定されていた キャサリン・ネーグルスタッドが体調不良とかで急遽キャンセルされ、カヴァーの小林厚子が歌ったが、持ち前のリリコ・スピントの豊麗な美声が活かされ、見事な歌唱であった。 代役がアナウンスされた際には、一瞬、会場がどよめいたが、カーテンコールでは大喝采であった。カヴァラドッシを歌った欧米の歌劇場で活躍中という ホルヘ・デ・レオンは初めて聞いたが、豊かな声量と 輝かしい高音を持ち、素晴らしかった。スカルピアを歌った新国初登場のクラウディオ・スグーラ も重厚な声と長身で存在感十分であった。脇役陣は、アンジェロッティ役の久保田真澄、スポレッタ役の今尾滋等も好演であったが、三度目の堂守役を歌った 志村文彦が、主役に負けない立派な声を響かせ、際立っていた。
管弦楽は、ロレンツォ・ヴィオッティ指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2018.7.16 記)


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