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(21) 2016/2017シーズン公演(最終更新日:2017.8.26)-------- (大部分の画像は、クリックすると大きくなります)

2016.10.10 : 「グリゼリデス」
2016.10.12:「ワルキューレ」
2016.11.21:「ラ・ボエーム」
2016.12.8:「セビリアの理髪師」
2017.2.5:「ベルファゴール」
2017.2.8:「蝶々夫人」
2017.2.25:「コジ・ファン・トゥッテ」
2017.3.18:「ルチア」
2017.5.17:「ジークフリート」
2017.5.27:「ラインの妖精」
2017.6.8:「ジークフリート」
2017.7.1:「ドン・ジョヴァンニ」
2017.8.26:「ミカド」


《過去のシーズン公演》:  1999/2000 * 2000/2001 * 2001/2002 * 2002/2003 * 2003/2004 * 2004/2005 * 2005/2006 * 2006/2007 * 2007/2008 * 2008/2009 * 2009/2010 * 2010/2011 * 2011/2012 * 2012/2013 * 2013/2014* 2014/2015* 2015/2016


2016.10.10:「グリゼリディス」

J.マスネは、 約39曲のオペラを作曲しているが、これまでに筆者が実演に接したことがあるのは、「ウェルテル」、「ドンキショット」、「マノン」、「マノンの肖像」、「タイース」及び「エロディアード」 の6作品のみであり、今回中劇場で公演された、東京オペラプロデュース主催の「グリゼリディス」は、 その存在も知らなかった。 しかし、音楽的には、歌も管弦楽もなかなか魅力的で、楽しませてもらった。 このオペラの台本は、ボッカッチョの「デカメロン」に出てくる貞女グリゼルダの受難譚をベースにしたA.シルヴェストル及びE.ラモンによる神秘劇をマスネの依頼によりさらに オペラ用に翻案したものとのことである。
この日の出演者の中では、バリトンの2人が特に素晴らしかった。侯爵役の与那城 敬は、重厚な美声と端正な 容姿賀活かされ、まさに適役であり、好演であった。悪魔役の菅原 浩史は初めて聴いたが、与那城に負けない立派な声を持ち、やはり好演であった。 グリゼリディスを歌った翠 千賀は、TV番組「カラオケバトル」で「オペラ魔女」 とも呼ばれ活躍しているが、高音がよく伸び、やはり好演であった。アラン役の三村卓也は、高音がやや苦しく、他の脇役陣も一長一短があり、少々不満が残った。
一方、太田 麻衣子演出による舞台では、第2幕の城前の庭のばめんでは背面のスクリーンと変化に富んだ照明がかみ合ってなかなか良かったが、 第1幕及び第3幕の祈祷室の場面は、装置も小さく重厚さに欠けたのは少々残念であった。
管弦楽は、飯坂 純指揮下の東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団。(2016.10.11 記)


2016.10.12:「ワルキューレ」

新国立劇場の2016/2017シーズン開幕公演として新制作の「ワルキューレ」が上演された。 今公演は、昨年の「ラインの黄金」同様、約20年前フィンランド国立歌劇場で上演された故G.フリードリッヒ の演出によるものであるが、新国の「トウキョウリング」やMETのハイテクを駆使した現代演出程の目新しさはないが、 後半はかなり盛り上がった。第1幕の「フンディングの館」の場面は、舞台に奥行きがなく、中央にある トネリコの大木も平面的に見え、少々期待外れであった。第2幕の「荒涼とした岩山」の場面は、 斜めに横切る2枚の巨大な板を中央に配した舞台で演じられたが、回り舞台をうまく活用して、なかなかの迫力であった。 第3幕の「岩山の頂き」の場面は、高速道路の出入り口か空港の滑走路のような平面であり、ブリュンヒルデを閉じ込める炎は、 幾何学的な長方形で多少の不自然さはあったが、視覚的にはなかなか見ごたえがあった。
一方、歌手陣は欧米で活躍中の実力者を揃え、理想に近いものであった。ともに米国出身のジークムント役の ステファン・グールド(T) 及びヴォータン役のグリア・グリムスレイ(BsBr)の2人は、強靭な美声を生かして素晴らしかった。フンデイング役の新国初登場の アルベルト・ペーゼンドルファー(Bs)も存在感十分の好演であった。 やはり新国初登場のジークリンデ役のジョセフィーネ・ウェーバー(S) 及びブリュンヒルデ役のイレーネ・テオリン(S)は、体も大きかったが、声も特大で熱演・好演であった。フリッカ役の巨躯ぞろいな 歌手陣の中で一人華奢なエレナ・ツィトコーワ(Ms) の豊麗な声も今回は特に目立たなかったが、やはり存在感十分の好演であった。 なお、日本人の出場歌手は、残念ながら脇役のワルキューレの8人のみであった。 飯森泰次郎指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団の演奏も立派 !! (2016.10.15 記)


2016.11.20:「ラ・ボエーム」

人気のあるこのオペラは、新国立劇場でも今回で5回目の上演になる。演出は、今回も過去4回同様粟國淳で、目新しさはなかったが、 いずれも新国初登場という外人歌手3人(ロドルフォ、ミミ、マルチェッロ役)に期待して出かけた。これら主要3役に日本人の名がなかったのは 残念であるが、3人はいずれも好演であった。ロドルフォを歌ったローマ生まれの ジャンルーカ・テッラノーヴァのほれぼれとする超美声が一段と光っていた。ミミを歌った アウレリア・フローリアンは多少力みすぎる感の場面もあったがやはり好演であった。マルチェッロ役の ファビオ・マリア・カピタヌッチも立派な声を持ち、 存在感十分の好演であった。日本人歌手もムゼッタ役の石橋栄実をはじめショナール役の森口賢二、コッリーネ役の松位浩、ベノア役の鹿野由之ほか実力者を揃え、 なかなかの好演であった。
一方、演出は、これまでの感想と変わらず、賑やかなパリの街角(カルチェラタン)の第2幕はよかったが、第2幕及び第4幕はいくら屋根裏部屋とはいえ、奥行き不足で平板すぎた。 管弦楽は、パオロ・アリヴェベーニ指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2016.11.21 記)


2016.12.7 :「セビリアの理髪師」

ヨーゼフ・E・ケップリンガーの演出による「セビリアの理髪師」の公演は今回で3度目であるが、 回り舞台に2つの らせん階段を付加した3層の手の込んだ建物を乗せたカラフルな装置は、再度見てもなかなか見事であり、また、 コミカルな所作の通行人、近所の住人や活発に動く子供たちを大勢登場させ目を楽しませてくれた。
出演歌手は歌はもとより容姿的にも理想的であった。アルマヴィーヴァ伯爵を歌ったロシア出身で新国初登場の マキシム・ミロノフ(T)は、明るく軽やかな美声 をもつ長身のイケメンで、ロッシーニ独特の装飾音を見事にこなした。ロジ−ナを歌ったウクライナ出身の レナ・ベルキナ(Ms)も見事な歌唱を披露したが、 なかなかの美女であり、ミロノフとは名コンビであった。フィガロ役のスロヴァキア出身の ダリボール・イェニス(Br)、バルトロ役の新国初登場の ルチアーノ・ディ・パスクアーレ 及び過去2回も同役をうたったドン・バジリオ役の妻屋秀和(Bs) もまさに適材適所の好演であった。
軽妙な演奏が印象的だった管弦楽は、フランチェスコ・アンジェリコ指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2016.12.8 記)


2017.2.5:「ベルファゴール」

東京オペラ・プロデュースの第99回定期公演として、O.レスピーギの「ベルファゴール」が中劇場で上演された。 レスピーギといえば管弦楽曲の「ローマ三部作」や歌曲の「霧」が有名であるが、オペラも未完のものも含めると 9曲残しており、新国立劇場でも4年前に「ラ・フィアンマ」が上演されている。 「怠惰」「好色」を司る悪魔 ベルフェゴールを題材としたオペラ「ベルファゴール」は日本初演(世界でも69年ぶりとのこと)の珍しい作品である。 音楽的には、抒情喜劇といわれている割には喜劇性は少なく、緻密でむしろ重厚な管弦楽にゆったりした歌唱が乗り、ドラマ的なやり取りが続くため、やや平板な感じもする。 初演時、評価が分かれ、近年再演がほとんどないことも理解できる。しかし、大作曲家の埋もれたオペラ作品の実演に接する機会が得られたことはオペラファンとして大変ありがたい。 東京オペラ・プロデュースの企画にいつも感謝している。この作品は、youtubeで全曲を聴くことができる。
出演歌手は、中核の4人が素晴らしかった。題名役の北川辰彦(BsBr)は、迫力満点の美声を駆使して、熱唱・熱演であった。カンディダを歌った大隅智佳子(S)の のびのびとした豊麗な美声は、やはり天下一品である。バルド役の内山信吾(T)及びミロクレート役の佐藤泰弘(Bs)も持ち味を生かして好演。 一方、馬場紀雄による演出は、全幕を通して現れた舞台中央階段下の円形の明るい幾何学模様が印象的で、悪魔登場にふさわしい雰囲気を醸し出していた。 管弦楽は、時任康文指揮下の東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団。(2017.2.6 記)


(2017.1.19〜1.31:「カルメン」)

2017.2.8:「蝶々夫人」

「蝶々夫人」は、新国立劇場では1998年以来これまでに8シーズンも上演されているが、何故かいずれの公演も栗山民也の演出である。栗山演出では、 登場人物の動きや感情表現は自然で同感できるが、無機的で殺風景な舞台は、視覚的な楽しさが感じられなかった。特に蝶々夫人の住まいは、襖とも障子 ともつかない奇妙な間仕切りを持ったがらんとした日本家屋で、まるでさびれた空手道場のようであった。屋根がないのはともかく、せめてそれらしい 障子、襖、畳くらいは取り付けてほしかった。
今公演では、ピンカートン以外の出場歌手はすべて日本人が務めたが、なかなか高水準の演奏であった。 タイトルロールの安藤赴美子は、 主役としては初めてきいたが、声も良く通り立派な蝶々さんであった。ピンカートンを歌った新国初登場の長身のイケメン リッカルド・マッシは、甘い美声の持ち主であり、適役、好演であった。 シャープレスを歌った甲斐栄次郎は、2004年の新国公演「鳴神」での好演が 記憶に残っているが、その後ウィーン国立歌劇場で10年間の活躍ヲ経て、重厚で魅力的な美声に一段と磨きがかかったようである。スズキ役の 山下牧子は、過去の新国の「蝶々夫人」では端役のケートを何度か歌ってい るが、今回やっと大役のスズキでの出演となった。彼女の鈴木を聴くのは2度目であるが、声はもとより演技を含めて理想的なスズキであった。 ゴロー役の松浦 健、ボンゾ役の島村武男、ヤマドリ役の吉川健一も好演。ケート役の佐藤路子は美人! 管弦楽は、フィリップ・オーギャン指揮下の東京交響楽団。(2017.2.9 記)


2017.2.25 :「コジ・ファン・トゥッテ」

恒例の新国立劇場オペラ研修所の修了公演として、同研修所17〜19期生による「コジ・ファン・トゥッテ」が中劇場 で上演された。 粟國淳による演出は、第一幕では舞台装置及び登場人物を対称的に配置する正統的な演出であったが、なかなか良かった。 特に、第一、第二幕をとおして、額縁に入れた"Cosi fan tutte"の文字と楽譜をあしらった紗幕をうまく活用して場面転換 をはかった手法は斬新であり、なかなか効果的であった。
Bキャスタトのこの日の出演歌手は、18期生と19期生のみであったが、体調不良の伊良波良真に代わり前日に続き ドン・アルフォンソを歌った抜群の声量と美声を持つ氷見健一郎の存在感が、圧倒的であった。妻屋秀和のような世界的なバス歌手 への成長が期待される。フィオルディリージを歌った西尾友香理は、豊麗な美声を持ち好演であったが、音域が広くソプラノには苛酷な2つの 大アリアでは、低音域の響きがやや弱かった。ドラベッラ役の十合翔子もまずまずの好演。デスピーナ役の吉田美咲子及びグリエルモ役の高橋正尚 は、声も良く好演。フェルランド役の荏原孝弥は声の響きが少々物足りなかった。 管弦楽は、校外活動を拡大している高関健指揮下の藝大フィルハーモニア管弦楽団。(2017.2.26 記)


2017.3.17:「ルチア」

新国立劇場主催公演本年度第6作として ドニゼッティ作曲のベルカント・オペラ「ルチア」が上演された。「ルチア」は、新国立劇場ではH2年以来15年ぶりの公演であるが、今公演は モンテカルロ歌劇場との共同制作である。同歌劇場総監督のジャン=ルイ・グリンダによる演出は、映像を巧みに活用し、迫力満点のリアルな情景を 現出した。特に海に突き出した巨岩の上に設定した第一幕の冒頭シーン及び第三幕のラストシーンは、映像による荒波も迫力満点であった。 一方、歌手陣は、脇役に至るまで内外の実力者を集め、理想に近い演奏であった。まず、ルチアを歌った オルガ・ペレチャッコ(S)は、「ベルカントの新女王」 などと評され、欧米で活躍中の新進歌手とのことであったが、声、歌唱力、容姿とも評判通りの好演であった。エドガルド役の イスマエル・ジョルディ(T)、 エンリーコ役のアルトゥール・ルチンスキー(Br)、及びライモンド役の妻屋秀和(Bs)はいずれも立派な声と歌唱力を持ち、好演であった。小林由佳ほかの 脇役陣にも実力者を配し、総体的に理想に近いキャストであった。 管弦楽は、ジャンパオロ・ビザンティ指揮下の東京フィルハーモニー管弦楽団。なお、「狂乱の場」のオブリガート楽器として通常のフルートではなく、 原曲通りグラスハーモニカ(実際には、今回の演奏者サシャ・レッケルトが開発した音量の大きいヴェロフォン) が用いられた。(2017.3.191記)


(2017.4.9〜4.22:「オテロ」)
(2017.4.20〜4.29:「フィガロの結婚」)

2017.5.17:「ジークフリート(ハイライトコンサート)」

6月の大劇場本公演に先立ち、同公演でカヴァーを務める予定の邦人歌手陣によるハイライトコンサートが 中劇場で開催された。コンサートとはいうものの衣装を着け、振付もあり、超簡素ながら舞台装置もあり、 正にオペラハイライトであった。しかし、ほぼ半分の短縮版であるため、下記のような主要場面のみが演奏された。

・第1幕第3場より(ジークフリート、ミーメ)<息子と養父、ノートゥング再生>
・第2幕第1場(アルベリヒ、さすらい人、ファフナー)<因縁の仇同士の邂逅>
・第2幕第2、3場より(ジークフリート、ファフナー、森の小鳥)<異界の登場人物>
・第3幕第1場(さすらい人、エルダ)<主神と叡智の女神、神々の対話>
・第3幕第3場より(ジークフリート、ブリュンヒルデ)<愛を獲得する二人>

出演したカヴァー歌手は、実力者揃いで皆好演であったが、 題名役の今尾滋は、美声のバリトンから立派なヘルデンテノールになった。ブリュンヒルデ役の橋爪ゆかも強靭な 美声を駆使して好演。第三幕の2人の愛の場面は圧巻であった。アルベリヒ役の友清崇も声、歌唱力とも抜群。 ファフナー役の志村文彦も存在感十分。さすらい人役の大塚博章はやや重厚感不足に感じた。エルダ役の石井藍 および森の小鳥役の三宅理恵も適役で好演。
なお、このコンサートでは、管弦楽に変えて、城谷正博の指揮下でエレクトーン(西岡奈津子/小倉里恵)と パーカッション(高野和彦/古谷はるみ)が用いられたが、管弦楽の役目をかなり忠実に果たしていた。(2017.5.18 記)


2017.5.27:「ラインの妖精」

東京オペラ・プロデュースの第100回記念公演として、オペレッタ作曲家として有名な J.オッフェンバック唯一の完成作オペラ「ラインの妖精」が中劇場で上演された。日本初演でもあり、勿論、初めて実演に接したが、 、後年の未完のオペラ「ホフマン物語」に流用されている「舟歌」 や「祖国の歌」など聞かせどころモ多く、管弦楽も流麗で、 なかなか素晴らしい作品だと思ったが、3時間20分という演奏時間の長さが上演を機会を削いでいたのかもしれない。 なお、ロッシーニは彼のことを「シャンゼリゼのモーツアルト」と呼んだという。<BR> この日はAキャストの日であったが、皆好演であった。アルムガートを歌った 梅津碧は、初めて聴いたが、声の響きが固く感じる場面もあったが、 高音の伸びも素晴らしかった。コンラート役の羽山晃生もバリトン転向後も天与の豊かな美声は健在であった。ヘドヴィヒ役の羽山弘子も この大役で実力を十分に発揮した。ゴットフリート役の北川辰彦は、 持前の重厚な声が生かされ、存在感一番であった。フランツ役の星洋二も美声を披露。
一方、八木清市による演出では、第1幕、第2幕では抽象化した簡素な舞台は悪くはなかったが、背景のスクリーン(風景)が多少暗過ぎに感じた。しかし、第3幕、第4幕 の森の場面では、幽玄な雰囲気が漂い見事であった。 飯坂純指揮下の東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団は熱演であったが、不安定なホルンの響きが少々気になった。(2017.5.28 記)


2017.6.7:「ジークフリート」

今シーズンの最終作として、「ジークフリート」が上演された。 ゲッツ・フリードリヒによる新制作の公演であったが、新機軸の演出もあり、なかなか面白かった。 名刀ノートングを鍛える場面では、キースナー演出による前公演(いわゆる「トウキョウリング」)での ままごとのようなチャチな装置ではなく、ハンマーを振り下ろせば火花が飛び、刀も赤熱すれば赤く冷却すれば銀色に 変化するリアルな演出であった。ファフナーの化身である怪物も大きな2本の手を持ったユーモラスな風船式のもので、なかなか見応えがあった。 また、通常、1人で歌い演じる森の小鳥を4人登場させたのもユニークな発想であった。
一方、出演歌手ことに男性陣は、理想に近かった。今シーズンの「ワルキューレ」で好演したジークフリート役の ステファン・グールド 及びさすらい人役のグリア・グリムスレイは、強靭な美声を生かし今公演も好演。 グールドは体躯も英雄的。ミーメ役のアンドレアス・コンラッド、 アルベリヒ役のトーマス・ガゼリ 及びファフナー役のクリスティアン・ヒューブナーも好演。 このオペラでは女性陣の出番は少ないが、エルダ役のクリスタ・マイヤー 及びブリュンヒルデ役のリカルダ・メルベートもほぼ期待通りの 好演であった。なおメルベートの凛とした舞台姿は良かった。 通常1人で歌う森の小鳥役を4人(鵜木絵里、九嶋香奈枝、安井陽子、吉原圭子)に分けて歌う演出には初めて接したが、衣装や登場の仕方も ユニークで面白かった。しかし、邦人歌手がこの役の4人だけだったのは、少々寂しかった。 管弦楽は、飯森泰次郎指揮下の東京交響楽団。先月エレクトーン伴奏による「ジークフリート」を聴いたが、やはりフルオーケストラによる 演奏は素晴らしく、豊かな響きを堪能した。(2017.6.8 記)


2017.7.1:「ドン・ジョヴァンニ(G.ガッツァニーガ)」

. 新国オペラ研修所の今年度の試演会の演目としてG.ガッツァニーガ 作曲の「ドン・ジョヴァンニ」が選ばれた。この作品は、モーツァルトの同作より8ヶ月早く初演されており、ストーリーも似ている。 ということは、後者の台本作家であるダ・ポンテが、今風に言えば、パクったともいえそうである。 「カタログの歌」一つをとってみても音楽的にはモーツァルトの名作には比肩すべくもないが、全体的には結構面白い作品ではある。新国立劇場でも2003年に 「小劇場オペラ」として上演されている。なお、今公演は、試演会でもあるため、管弦楽の代わりに河原忠之指揮下の2台のピアノ (石野真穂、高田絢子)と1台のチェンバロ(岩渕慶子)が使用された。
今公演の出演者(第18期生〜20期生)は、みな熱演・好演であった。中でも主題役を歌った水野優(T)及び 騎士長を歌った氷見健一郎(Bs)が特に良かった。水野は、豊かな美声の持ち主なので、今後の活躍が期待される。 氷見は、今回も立派な声を響かせ、好演。エルヴィーラ役の宮地江奈(S)、ドンナ・アンナ役の斉藤真歩(S)、 ヒメーナ役の平野柚香(S)、パスクワリエッロ(モーツアルト版のレポレッロ)役の高橋正尚(Br)も美声を生かし、 それぞれ好演。
久恒秀典演出による舞台は、予算的な制約もあってか、衣装は別にして、きわめて簡素なものであったが、“カタログ”を極端に長い巻物にして 舞台いっぱいのに拡げ、笑いを誘ったりの工夫もあった。(2017.7.2 記)


2017.8.26:「ミカド」

今年度の地域招聘オペラ公演として、今年8月上旬にびわ湖ホールで上演された アーサー・サリヴァン作曲の「ミカド」が取り上げられ,、2日間にわたって中劇場で上演 (日本語上演)された。なお、個人的には、オペラ通いを始めて60年、これまでに観た内外のオペラは、300作品を越えるが、その中で最も笑った作品は、 2001年8月に東京文化会館(小ホール)でみた岩河智子(編作)の「唱歌の学校」と2003年3月に 東京芸術劇場(中ホール)でみたサリヴァン作曲の「ミカド」なので、今公演も大いに期待して出かけた。 中村健一演出による今公演では、時代を現代に設定したのはやや意外であったが、大道具はほとんど置かず、 背面の大スクリーンに清水寺、金閣寺、浅草寺等日本の観光地の鮮明な画像を順次映し出したたのは、物語とは 無関係ではあるが、視覚的にはなかなか見事であったし、カラフルな衣装は良かったが、髪の毛の極端な 染色は少々悪趣味に思えた。また、「忖度」から「このハゲー!」まで流行語も多く取り入れたセリフも多かったが、 何故か十数年前に池袋でみた公演ほどは笑えなかった。
一方、出演歌手は、すべて「びわこホール声楽アンサンブル」のメンバーなので、初めて聴く人ばかりであったが、 予想以上に素晴らしかった。特に中核となる男声の3人が素晴らしかった。ナンキプー役の二塚直紀(T)は、強靭な 美声を活かし、好演であった。ミカド役の松森 浩(Bs)の重厚な声も良く響き、王様の貫禄十分であった。ココ役の 迎 肇聡(Br)は美声に加え、芸達者であった。女声陣では、ヤムヤム役の飯嶋幸子(S)は、素直な美声の持ち主で、また 役通りなかなかの美人で適役であった。カティーシャ役の古川秋穂(Ms)も好演。
管弦楽は、園田隆一郎指揮下の日本センチュリー交響楽団。(2017.8.27 記)


 

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