(18) 2013/2014シーズン公演(最終更新日:2014.8.4)-------- (大部分の画像は、クリックすると大きくなります)

2013.9.05:「ラ・トラヴィアータ」
2013.10.06:「リゴレット」
2014.1.12:「みすゞ」
2014.2.09:「ミレイユ」
2014.2.28:「ナクソス島のアリアドネ」
2014.3.15:「死の都」
2014.3.30:「春琴抄」
2014.5.17:「カヴァレリア・ルスティカーナ」/「道化師」
2014.6.21:「鹿鳴館」
2014.7.09:「蝶々夫人」
2014.8.03:「ラ・ボエーム」/「秘密の結婚」


《過去のシーズン公演》:  1999/2000 * 2000/2001 * 2001/2002 * 2002/2003 * 2003/2004 * 2004/2005 * 2005/2006 * 2006/2007 * 2007/2008 * 2008/2009 * 2009/2010 * 2010/2011 * 2011/2012 * 2012/2013

2013.9.5:「ラ・トラヴィアータ」

ヴィオレッタにイタリア に名ソプラノ、マリエッラ・デヴィーアを迎えて、藤原歌劇団主催による「ラ・トラヴィアータ」 が上演された。また、アルフレードに村上敏明、ジェルモンに堀内康雄という日本を代表するというより世界に通用する 実力者を配したこともあり、「ヴェルディ生誕200年記念公演」にふさわしい名演となった。 デヴィーアは丁度10年前、東京文化会館での「イタリア のトルコ人」の名演に接したことがあるが、当時すでに50代の半ばであったが、その後10年、年齢的な衰えをほとんど 感じさせず、高音の輝き、弱声での抜群の歌唱力は健在で、素晴らしかった。 村上敏明堀内康雄 も絶好調であった。鳥木弥生、久保田真澄、家田紀子等の脇役陣も好演。
岩田達宗の演出は、舞台中央に傾斜した白く光る四角いプラットホームを置き、第1幕では舞踏会の中核として、また、第3幕 では、ヴィオレッタが横たわるベッドとして用いるという斬新な試みがあり、それなりに効果的ではあったが、背景や側面には、飾りのないカラーボード が、立てかけてあるだけという感じの殺風景なもので、照明等での工夫はあったが、やや物足りなかった。一方、時代を反映した出演者の衣装は、 豪華で美しかった。
管弦楽は、園田隆一郎指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2013.9.5 記)

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2013.10.6:「リゴレット」

新国立劇場2013/2014シーズンのオープニング公演として、新制作の「リゴレット」が上演された。 今年の2月のMETライブで観た「リゴレット」は、舞台を1960年代のラスベガスに移した 新演出であったが、違和感も少なく、大変面白かったので、新制作の今公演にも大いに期待して出かけた。
アンドレアス・クリーゲンブルク の演出では、やはり時代を現代に移し、舞台を、多様な人が集まり、現代社会の縮図ともいえるホテルに設定している。 しかも、演出家の言によると“常に何かが起きている場所であることを表現するために” 廻り舞台の上にのった3層の円筒状の建物は、ゆっくりと廻っていることが多かった。 このユニークな解釈による演出は、それなりに説得力があり、第1幕及び第2幕では、うまく機能したが、 ホテルの屋上には、社会から疎外されている人々が生活しているという第3幕の設定には、かなりの無理があり、また、 屋根裏部屋の構造や登場人物の動きにもやや不自然さを感じた。
一方、歌手陣は充実しており、名曲を十分に堪能することができた。リゴレット役の マルコ・ヴラトーニャ(伊)、 ジルダ役のエレナ・ゴルシュノヴァ(露)及び マントヴァ侯爵役のウーキュン・キム(韓) の3人は初めて聴いたが、いずれも立派な声の持ち主であった。スパラフチーレ役の妻屋秀和、マッダレーナ役の 山下牧子も日本を代表する名歌手であり、脇役陣も谷友博、与田朝子、成田博之 等の実力者を配した豪華なキャスティングであり、歌唱については、十分に満足できた。
管弦楽は、ピエトロ・リッツオ指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2013.10.7 記)




(「フィガロの結婚」:2013.10.20〜29、「ホフマン物語」:2013.11.28〜12.10)、「カルメン」:2014.1.19〜2.1、「蝶々夫人」:2014.1.30〜2.8


2013.1.12:「みすゞ」

  東北関東大震災後、スポンサー企業がCMを自粛したため、ACジャパン(旧・公共広告機構)が連日何回も流した詩 (「こだまでしょうか」)で一躍広く知 られることとなった童謡詩人 金子みすゞ の生誕110周年を記念して、石黒 晶が作曲したオペラ「みすゞ」がHi's Opera Company 主催で世界初演(中劇場)された。このオペラでは、女学校卒業から不幸な結婚、死にに至る金子みすゞの一生が描かれている。 このオペラの台本(原案:樋本 英一、潤色:岩田 達宗)は、公演プログラムに全文が載せられているが、 彼女の数百作の詩から選んだ10作ほどの詩 (「雲「お葬ひごつこ」「さびしいとき」「お菓子」「玩具のない子が」「打ち独楽」等) がアリアや幕間狂言にも巧みにとりこまれている。音楽的にも、綿密に作曲された力作である。一方、岩田 達宗の演出は、 舞台中央の明るい円形部でドラマを集中的に進行させ左右の紗幕の中に合唱団を配置したり、2つのコミカルな幕間狂言で ストーリーをつないだり、種々の工夫が見られたが、意図的なものかもしれないが色彩に乏しく、視覚的にはあまり楽しくなかった。 また、大鎌を持った悪魔のような「ことだま」の姿には違和感を持った。 キャスティングは、適材適所で皆熱演・好演であった。みすゞ役の伊藤晴(S)は、「日本音楽コンクール(入選)」等のコンクール は別にして、オペラの舞台では初めて聴いたが、持ち前の張りのある声が活かされ好演であった。正祐役の藤原海考(T)、松本役の 柴山昌宣(Br)、等も熱演・好演であった。しかし、ことだま役は、カウンターテナーの上杉清仁が歌ったが、むしろアルトで聴 いてみたい気がした。
管弦楽は、樋本英一指揮下のフィルハーモニア東京。(2014.1.13 記)


2014.2.9:「ミレイユ」

  東京オペラ・プロデュース主催で、 C.F.グノー作曲の「ミレイユ」が中劇場で日本初演された。 実演に接したのは初めてであったが、なかなかの名曲であることを実感した。特にオーケストラの甘美な響きが印象的であった。 なお、youtubeで全曲を聴くことができる。 都合でBキャストの日を選んだが、作品の良さは十分に感じられた公演であった。ヴァンサン役の 土師雅人(T)、ヴァーリアス役の三塚至(Br)は、持ち前の強靭な美声を活かされ好演であった。 ミレイユ役の江口二美(S)及びタヴァン役の磯地美樹(Ms)もそれぞれはまずまずの好演であったが、 きれいな高音に比して中音域の響きがややくすんでいる江口と魔女役にしては声が優し過ぎる菊地の組み合わせには、少々違和感を持った。 脇役では、出番は少なかったが、クレマンス役の森川泉(S)の声が光っていた。
一方、池田理代子の演出では、その一角がオーケストラ・ピットにせり出した斜に設けた大型のプラットホームと回り舞台を組合せた舞台の骨格が全幕を通して 有効に利用された。また、適宜、背後のスクリーンも活用されたが、スクリーンは緑一色でも舞台上の小道具の樹木は枯れ木だけという殺風景な場面もあった。 しかし、第五幕の教会の場面では、照明の効果が抜群で、簡素ながら荘厳な雰囲気がよく出ていた。
管弦楽は、飯坂純指揮下の東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団。(2014.2.10 記)


2014.2.28:「ナクソス島のアリアドネ」

R.シュトラウス生誕150年記念ということもあり、今年度の新国立劇場 オペラ研修所公演では、 R.シュトラウス作曲の 「ナクソス島のアリアドネ」が中劇場で上演された。今公演のキャストは、オペラ研修所第14〜16期生が中心であったが、 個人的には、やはり賛助出演の天羽明恵(S)のツェルビネッタが眼目であった。 最前列で聴いたが、彼女の声と技巧が十分に活かされた素晴らしい歌唱であった。音楽教師役でやはり賛助出演(研修所OB)の駒田敏章(Br)も重厚な声で存在感十分 の好演であった。研修生では、アリアドネ役の林よう子(S)が豊かな美声を活かして好演であった。3人のニンフ(水の精役の種谷典子、木の精役の藤井麻美、 やまびこ役の原璃菜子)声のバランスも良かった。作曲家役の今野沙知恵(S)は、美声で歌も巧かったが、ズボン役としては多少の声量不足を感じた。その他の 研修生も、執事長としても出演したヨアス・バールチョ(Bs)の指導もあったものと思われるが、ドイツ語の発音も良く、皆熱演・好演であり、相対的には、 なかなか水準の高い演奏であった。
一方、三浦安浩の演出は、人の動きや感情表現は、正統的なもので同感できるが、装置的には、特にナクソス島の場面では、 もう少し自然の風景(洞窟等)が欲しかった。フィナーレで、舞台中央に客席の椅子がせり上がり、このオペラが劇中劇であることを再認識させた演出は面白かった。。 管弦楽は、高橋直史指揮下のポロニア・チェンバーオーケストラ。 なお、このオペラは、youtubeでも全曲を聴くことができる。(2014.3.1 記)


2014.3.15:「死の都」

今年度の新国立劇場のオペラ公演は、再演、再々演が特に多かったので、いくつかパスしたが、やっと待望の 「死の都」を観ることが出来た。 E.W.コルンコルドのこの作品は、ビデオは持っており、リサイタルでアリア(”マリエッタの唄”) を聴いたこともあるが、実演には今回はじめて接した。歌手、演出とも素晴らしく、実演ならではの醍醐味を味わうことができた。 NHKが収録していたようなので、放映が楽しみである。 今公演の演出は、昨秋の フィンランド国立歌劇場公演と同じく、カスパー・ホルテン(再演演出:アンナ・ケロ)による斬新なものである。 まず第一幕の幕が上がると写真等亡妻の遺品が飾られた十数段の棚が左右に聳え、奥は階段上の巨大なブラインドのある部屋が現れ、 部屋の中央には大きなダブルベッドが置かれたいる。第二幕ではブラインドが挙げられ、斜め上方から見たブルージュの街が現れ、 さらに第三幕では、色鮮やかな「聖血行列」の場面も現れる。 また、観客の主人公への感情移入を助けるために、亡妻マリーを黙役として第一幕から舞台に登場させた新機軸の演出には、最初は戸惑ったが、 それなりの効果は認められた。なお、左の写真のように世界遺産の美しい中世の都市としてベルギー観光の目玉となっている現状からは、 想像もできないが、ブルージュは過去にはこのオペラの舞台となった 衰退した時代もあったらしい。
一方、今公演のキャストでは、主役パウルを歌ったトルステン・ケール(T) が大変素晴らしかった。2010年の「カルメン(ホセ)」の好演も印象に残っているが、持前の張りのある超美声を生かし、この大役を見事に歌いきった。 一方、マリエッタ/マリーを歌った ミーガン・ミラー(S)は、昨年の「タンホイザー(エリーザベト)」の時同様、良く伸びる豊かな高音部 に比して中低音部の響きが今一つに感じた。フランク/フリッツ役のアントン・ケレミチェフ(Br)も好演。 また、重要な脇役である召使ブリギッタを歌った豊かな美声を持つ山下牧子(Ms)もいつものごとく、存在感十分で好演であった。 管弦楽は、ヤロスラフ・キズリンク指揮下の東京交響楽団。(2014.3.16 記)


2014.3.30:「春琴抄」

日本オペラ協会創立55周年記念公演/都民芸術フェスティバル参加公演として中劇場で三木稔作曲の「春琴抄」が上演された。 このオペラは、台本も音楽も完成度の高い力作であり、1975年の初演以来、今回が9度目の上演というのも頷ける。 しかし、原作者谷崎潤一郎の作品では、 「細雪」しか読んだことがないが、「春琴抄」も谷崎独特の耽美的で端麗な文章のようなので、台本を担当したまえだ純の苦心が 忍ばれる。一方、音楽的には、三木稔作曲の10作ほどのオペラの内で実演に接したことがある「じょうるり」、「源氏物語」、「愛怨」の3作 と比較しても、二十絃琴や三絃を巧みに取り込ん第一作のこのオペラの管弦楽の響きが最も斬新に感じた。 キャストも春琴役の佐藤美枝子、 佐助役の中鉢聡はもとより大間知覚等の脇役陣も充実しており、 皆熱演・好演であった。中鉢は、昨年の「天守物語」に続いてバリトン役に挑戦したが、力強い美声が活かされ特に良かった。 一方、荒井間佐登の演出は、能舞台を思わせるシンプルな舞台ながら、屏風や大きな梅の吊花等が効果的で、カラフルな衣装 と相まって、なかなか秀逸で視覚的にも楽しめた。管弦楽は、樋本英一指揮下のフィルハーモニア東京。二十絃箏:木村玲子、 三絃:友渕のりえ。(2014.3.31 記)


2014.5.17:「カヴァレリア・ルスティカーナ」/「道化師」

この演目が新国立劇場で上演されるのは、確か3度目だと思うが、今回はジルベール・デフロによる新演出とのことだったので、 期待して出かけた。

「カヴァレリア・ルスティカーナ」

幕が上がると、復活祭の出し物の一つであるキリスト像をつけた巨大な十字架上が舞台中央の広場に横たわっており、驚かされた。 舞台は、さびれた古代ローマの野外円形劇場跡に設定されており、建物らしいものは、一切見えなかった。通常、教会の中から聞こえてくる 聖歌も屋外の広場で歌われた。このユニークな設定は、素朴な田舎の復活祭の雰囲気をよくあらわしているようで、新鮮に感じた。
歌手では、サントゥッツアを歌った新国初登場のベネズエラ出身のルクレシア・ガルシア(S)が上から下まで艶のある豊麗な美声を持ち、 ひときわ素晴らしかった。トゥリッドゥを歌ったおなじみのヴァルテル・フラッカーロ(T)、ルチア役の森山京子(Ms)、アルフィオ役の 成田博之(Br)、ローラ役の谷口睦美(Ms)もみな熱演・好演であった。


「道化師」

舞台は、「カヴァレリア」と同じ古代円形劇場跡地のさびれた広場に設定されたが、そこに上の絵のように旅芸人一座の車がおかれていた。 劇中劇の始まる夜中には、イルミネーションが点灯され、村人も集まり、結構賑やかになった。 歌手は、主役のカニオ、ネッダも悪くはなかったが、むしろ脇役の2人のバリトンの好演が目立った。カニオを歌ったグスターヴォ・ポルタ (T)は、声はよく出ていたが、前回(2004年)公演時のジュゼッペ・ジャコミーニと比べると迫力不足を感じた。ネッダを歌ったラケーレ・ スターニシ(S)は、多くのコンクール優勝歴があるとのことであるが、声の透明感不足を感じる場面もあり、少々期待外れであった。トニオ役の ヴィットリオ・ヴィッテリ(Br)及びシルヴィオ役の与那城 敬(Br)は、持前の豊かな美声を活かし、存在感を示した。また、前回と同役 (ぺっぺ)の吉田浩之(T)も好演。管弦楽は、レナート・バルンボ指揮下の東フィル。(2014.5.19 記)


2014.6.21:「鹿鳴館」

池辺晋一郎作曲のこのオペラは、 丁度4年前にこのオペラパレス初演された。今回の再演では、初演時と出演者もあまり変わってはいないが、今後再度見る機会があるかどうか わからなかったので、出かけることにした。しかし、前回は与那城/腰越組でみたので、今回は、黒田/大倉組のAキャストの日を選んだ。 鵜山 仁の演出に関しては、前回同様の感想を持った。斬新で効果的なものは勿論あったが、暗すぎる舞台背景や衣装は、 視覚的には楽しめなかった。特に、鹿鳴館の舞踏会の場面は、華麗とは程遠い奇妙なダンスの連続であり、演出家の意図をはかり兼ねた。また、 舞台上部の字幕も前回通りで暗く、やっと読める程度であった。日本語上演ではあるが、演劇的要素の強いオペラなので補助的に字幕の必要性は 高いので、やはり見やすい“普通の明るさ”にしてほしかった。 一方、キャストは、今回も大変良かった。主役級では、大徳寺顕子役の高橋薫子、影山伯爵役の黒田博、 清原永之輔役の星野淳が豊かな美声を駆使して好演し、ドラマを盛り上げた。影山伯爵夫人役の大倉由紀枝も容姿を含めて適役であったが、 前記の3人の声の力にやや押され気味であった。脇役陣も大徳寺伯爵夫人役の手嶋真佐子、女中頭草乃役の山下牧子、清原久雄役の鈴木准等の 実力者ぞろいであったが、みな好演であった。 管弦楽は、飯森範親指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2014.6.22 記)


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2014.7.9:「蝶々夫人」

今年も新国立劇場で9時半から30分行列して一般枠の当日券を入手し、高校生のためのオペラ鑑賞教室「蝶々夫人」 を観た。恒例のこの公演は、オペラファンの底辺を拡げるためのきわめて有力な企画であるが、新国立劇場主催公演としてオール 日本人歌手によるオペラを観ることができる唯一の貴重な機会でもあるので、せめて1日位は、一般枠のみの日を追加し、 前売りをしてくれるとありがたい。
今年の公演も、
ダブルキャストであったが、蝶々夫人及びピンカートン に重点を置いて、Aキャストの日を選んだ。蝶々夫人を歌った横山恵子は、この役では初めて聞いたが、持ち前の豊麗な 美声が活かされ、出色の出来であった。村上敏明のピンカートンをきくのは2度目であったが、やはり堂に入った好演であった。 シャープレス役の成田博之、スズキ役の大林智子も好演。一方、栗山民也演出による舞台は、以前にも見たことがあるが、 背面のスクリーンに星条旗を映したり、クライマックスシーンでの照明の設定等みるべきものもあったが、無機的な階段や壁面、 奇妙な間仕切り、木や花もまったく見られない殺風景過ぎる舞台は、やはり楽しくはなかった。 特に、初めてこのオペラを見る高校生には、少々気の毒な気がした。管弦楽は、三澤洋史指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2014.7.10 記)



2014.8.3:「秘密の結婚/ラ・ボエーム」

新国立劇場 オペラ研修所の恒例の試演会としてプッチーニの 「ラ・ボエーム(抜粋版)」及び チマローザの「秘密の結婚(短縮版)」が第15〜17期の研修生を中心に小劇場で上演された。 「ラ・ボエーム」は、第3幕と第4幕の抜粋であったが、オペラとしてみると三つの有名なアリアのある第1幕、第2幕抜きでは、 やはり様にならない。特に「冷たい手を」の「ハイC」を聴かないとテノールの評価はできない。ロドルフォ役の水野秀樹、ミミ役 の原璃菜子等も熱演であったが、やはり最近の声楽コンクールの入賞・入選の常連である賛助出演の岡昭宏のマルチェッロが一際 光っていた。
一方、「秘密の結婚」は、短縮版とは言うものの、どの部分がカットされたのかわからないほど全曲に近く、ピアノ伴奏ながら 小劇場で2回だけの公演というのが勿体ないほどの極めて上質、かつ楽しめる公演であった。粟国淳による演出は、喜歌劇らしい コミカルな表情や所作もなかなか凝っており大変面白かった。歌手は、少ない研修生の中から選んだと思えないほど、容姿を含めて、適材適所の感があった。 ジェロニモ役の松中哲平、エリゼッタ役の飯塚茉莉子、フィダルマ役の藤井麻美、バリオーノ役の小堀勇介もそれぞれ熱演・好演で あったが、持ち前の美声が活かされたカロリーナ役の種谷典子及びロビンソン伯爵役の小林啓倫が特に良かった。 なお、今公演の指揮者は、名ピアノ伴奏者であり、今春、オペラ研修所音楽主任講師に就任した河原忠之。(2014.8.4 記)

ラ・ボエーム 秘密の結婚 


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