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(20) 2015/2016シーズン公演(最終更新日:2016.7.4)-------- (大部分の画像は、クリックすると大きくなります)

2015.10.4:「ラインの黄金」
2015.12.6:「ファルスタッフ」
2016.2.21:「フィガロの結婚」
2016.3.05:「イェヌーファ」
2016.4.06:「ウェルテル」
2016.5.23:「ローエングリン」
2016.7.2:「ジャンニ・スキッキ」
2016.7.3:「夕鶴」


《過去のシーズン公演》:  1999/2000 * 2000/2001 * 2001/2002 * 2002/2003 * 2003/2004 * 2004/2005 * 2005/2006 * 2006/2007 * 2007/2008 * 2008/2009 * 2009/2010 * 2010/2011 * 2011/2012 * 2012/2013 * 2013/2014* 2014/2015


2015.10.4:「ラインの黄金」

今シーズンの開幕公演として、新国立劇場で3回目公演となる「ラインの黄金」が選ばれた。前2回は 「トウキョウリング」として奇抜な演出が話題になったキース・ウォーナー演出であったが、今回は20年前に フィンランド国立歌劇場で初演された故ゲッツ・フリードリヒ演出のものである。「リング」の演出では、「METライブ」でも 紹介された数年前のMETの大胆な新演出が記憶に新しいので、今公演でも演出が最大関心事であったが、結果的には 充分に満足できるものではなかった。
第1場「ラインの河底」の場面では、青く光る長尺のバーを上下させてうまく雰囲気を表現していたが、第3場での ネオン管の多用は、地底「ニーベルハイム」にはそぐわない感があった。構築物も抽象的で簡素過ぎ多少物足りなかったが、 第4場の「天上界」の場面は、METでのO.シェンクの名演出を彷彿させるヴァルハル城の投映を含めてなかなか良かった。一方、 ヴォータンやフリッカ等が古風な白い着衣姿であるのに対し、火の神ローゲが赤いマントを纏ってはいるものの三つ揃いの 背広姿だったのには少々違和感を持った。
一方、歌手陣は前回、前々回同様、日本人も多く出演したが、主要な役の大半は外人歌手7人が担った。 前回上演(2009年)でも同役を好演したヴォータン役の ユッカ・ラジライネン及び前回エルダを歌ったフリッカ役のシモーネ・シュレーダー、「オテロ(2009年)」、 「トリスタンとイゾルデ(2011年)」等で好演したローゲ役の ステファン・グールドは、さすがに存在感十分の好演であった。また、新国初登場の4人(ファフナー役の クリスティアン・ヒューブナー、 トーマス・ガゼリ、アンドレアス・コンラッド) の中では、強靭かつ艶やかな美声を持つアルベリヒ役の トーマス・ガゼリが際立って素晴らしかった。やはり7人出演した日本人歌手の中では、前回ファーゾルトを歌い、今回は兄ファフナーを歌った 妻屋秀和やはり断然よかった。フライア役の安藤赴美子、ドンナ―役の黒田博、フロー役の片寄純也はまずまずの好演であった。 、ラインの3人の乙女役(増田のり子、池田香織、清水華澄)も好演であったが、声量豊かな清水の声が一段と良く響いた。 管弦楽は、飯守泰次郎指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2015.10.5)



(2015.11.17〜11.29:「トスカ」)

2015.12.4:「ファルスタッフ」

ヴェルディの「ファルスタッフ」は、新国立劇場では今回で3度目の上演であるが、演出は過去2回(2004/2007)の 公演と同じ、ジョナサン・ミラーが担当している。 17世紀オランダ絵画の描写に基づいたという舞台は、衣装を含めて物語に即したもので、ごく自然であった。 建物壁面ブロックの複雑な移動による素早い場面転換は何度見ても見事であった。
今回のキャストでは、新国初登場の2人(主題役、クイックリー夫人)の声が圧倒的に良かった。 主題役を歌ったジョージア出身のゲオルグ.ガグニーゼ(Br)は、今公演が ロールデビューとのことであるが、持ち前の重厚な美声は圧倒的な迫力であった。クイックリー夫人を歌ったロシア出身の エレーナ・ザレンバ(Ms)は、アズチェーナやウルリカがはまり役と思える 重厚かつ艶やかな美声の持ち主であるが、群を抜いた声量は他の女声陣を圧倒していた。フォード役のやはり新国初登場のマッシモ・カヴァレッティ(伊出身、Br) もさすがスカラで活躍中というだけに立派な声を持ち、好演であった。フォード夫人役の アガ・ミコライ(S)、増田弥生(Ms)、ナンネッタ役の安井陽子(S)もまずまずの好演。脇役ながらただ一人これまでの3公演で同一役(ピストーラ)を歌った 妻屋秀和(Bs)は、やはり存在感十分の好演。
管弦楽は、イヴ・アベル指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2015.12.7 記)


(2016.1.24〜1.30:「魔笛」)

2016.2.21:「フィガロの結婚」

新国立劇場オペラ研修所の本年度の終了公演として「フィガロの結婚」が選ばれた。この日のキャストの中心となった16期生には 実力のある歌手がそろっており、今公演もきわめて水準の高いものであった。特に、これまでの公演でも好演したスザンナ役の種谷典子(S)及び伯爵役の小林啓倫(Br)は 天与の美声とともに優れた歌唱力をもち、将来の大成が期待されるが、今公演でも見事な歌唱を披露した。また、何年か前にも同様のケースがあったが、バスながら バリトン役のフィガロを歌った松中哲平は、豊かな声量を持ち、やはりなかなかの好演であった。ケルビーノを歌った17期生の高橋柴乃(Ms)も美声の持ち主であり、 昨年の「こうもり」のオルロフスキー役の場合同様、今回も好演であった。ともに16期生の伯爵夫人役の飯塚茉梨子、バジリオ役の岸浪愛学をはじめ賛助出演の研修所OB や脇役の18期生の熱演もあり、総体的には大歌劇団の一般公演に準じる立派な公演であり、大いに楽しめた。
一夫、粟國 淳による演出は、舞台を頻繁に左右にスライドさせ、舞台転換を図ったのが新機軸であったが、ケルビーノやスザンナが閉じこもった小部屋の内部やドアの外 の状況が同時に見えたりして、なかなか面白かった。
管弦楽は、河原忠之指揮(及びチェンバロ演奏)下の新国立アカデミーアンサンブル。合唱は、東京音楽大学。(2016.2.22 記)


2016.3.5:「イェヌーファ」

チェコの作曲家 レオシュ・ヤナーチェクの代表作である「イェヌーファ」が新国立劇場では初めて上演(原語:チェコ語)された。 ヤナーチェクのオペラは、これまでに3作品(「イェヌーファ(独語版)」、「マクロプロス家の件」、「利口な女狐の物語」)しかみていないが、 プライソヴァーの戯曲に基づき、作曲者自身が台本を書いたこのオペラは、19世紀末の農村を舞台に、愛憎のもつれや嬰児殺しといった深刻な問題 を取り上げた複雑なものであるが、歌唱と管弦楽が見事に融合しており、彼の代表作といわれる所以を実感できた。 クリスト・ロイ演出の舞台は、3幕を通して白一色の横長の部屋に机と椅子一対が置かれただけのきわめてシンプルなものながら、背面の白壁が自在 にスライドするとともに適宜ドアが現れたりする機能的なものであった。第2幕では、壁が全開すると背景に幻想的な湖が現れルという、ユニークな もので、なかなか見ごたえがあった。 一方、出演歌手は、中核にベルリン・ドイツ・オペラ公演にも出演していた3人を含め、実力のある歌手を揃えただけに、総体的には、 立派なものであったが、個別には若干不満も残った。題名役を歌ったミヒャエル・カウネ(S)は、 ドイツの宮廷歌手の称号を授与されている歌手ではあるが、高音部の声にやや透明感が乏しく、個人的には好きになれない。義母コステルニチカ役 のジェニファー・ラーモア(Ms)は、豊かな美声の持ち主であり、総体的には 素晴らしかったが、やはり高音部に響には多少の不満が残った。ブリヤ家の女主人役のハンナ・シュヴァルツ(Ms)は好演。男声陣では、ともに新國に初登場したラツァ役の ヴィル・ハルトマン(T)及びシュテルヴァ役のジャンルカ・ザンピエーリ(T)は、 豊かな美声を活かしなかなかの好演であった。脇役では、村長役の志村文彦(BsBr)がいつもの重厚な美声で存在感を示した。 管弦楽は、トマーシュ・ハヌス指揮下の東京交響楽団。(2016.3.6 記)


2016.4.6:「ウェルテル」

マスネの「ウェルテル」 は、新国立劇場では、2002年以来2度目の公演であるが、再演ではなく新制作である。前回公演では、J.サッバティーニ、A.C.アントナッチ、N.D.カロリス、 中嶋彰子等が好演したが、今公演では、歌手よりもむしろ見事な舞台装置が強く印象に残った。 出演歌手では、ウェルテルを歌った新国初登場のディミトリー・コルチャック(T) が艶やかで強靭な美声を披露して好演であった。やはり新国初登場でシャルロッテを歌ったエレーナ・マクシモワ(Ms) は、声量は豊かであるが、声が硬質でこの役にはあまりそぐわない感じがした。むしろカヴァーの山下牧子で聴いてみたいとも思った。 昨シーズンの「ドン・ジョヴァンニ」を好演したアルベール役のアドリアン・エレート(Br)もまずまずの好演。 ソフィー役の砂川涼子(S)は、十数年前「日本音楽コンクール」等で優勝したころと比較して、声の透明感が多少落ちたような気がする。 脇役陣では、大法官役の久保田真澄(Bs)、シュミット役の村上公太(T)及びジョアン役の森口賢二(Br)が健闘! 一方、ニコラ・ジョエルの演出では、写実的な舞台装置が素晴らしかった。特に、レンガ造りの家と階段のある第一幕の”大法官の家のテラスと庭” 及び窓から光が射し込む第三幕の”アルベール家の居間”の場面は、大変見事であった。 管弦楽は、エマニュエル・プラッソン指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2016.4.7 記)


2016.5.23:「ローエングリン」

「ローエングリン」は新国では3度目の上演であるが、今公演はマテアス・フォン・シュテーク演出による4年前の公演の再演である。 前面格子ガラスの背景を骨格とした舞台は抽象的かつ無機質のもので、ロマンチックな物語にはそぐわないとの感は今回も同様であった。 特に、素材のウレタンマットを積み重ねただけの第1幕の舞台は、殺風景過ぎた。白鳥の騎士の登場の場面もアイディア倒れであった。 しかし、真っ白な巨大な造花が数輪置かれた第3幕2場の新婚の寝室の場面は、視覚的にも見ごたえがあった。 一方、出演歌手は、前回も主題役を歌ったクラウス・フロリアン・フォークトは、 若々しい美声を生かして今回も好演であった。エルザを歌ったマヌエラ・ウール は、声に硬さを感じたが、容姿もよく、フォークトと似合いのカップルであった。新国初登場のハインリヒ国王役の アンドレアス・バウアー及び新国でもおなじみのテルラムント役のユルゲン・リンは、重厚な声で存在感十分であったが、実力、キャリア共勝るとも劣らない実力者の妻屋秀和及び 小森輝彦がそれぞれこの2役の“カヴァー”にまわっているのは少々腑に落ちない。ぼちぼち主役級のカタカナ名を1〜2名減らしても良い時期ではなかろうか。 オルトルート役のペトラ・ラングも熱演ではあるが、高音部の響きはいまいち。 また、前回同様伝令やくで出演した萩原潤は、今回も美声を活かし好演。 管弦楽は、飯森泰次郎指揮下の東京フィルハーモニー管弦楽団。(2016.5.25 記)


2016.7.2:「ジャンニ・スキッキ」

新国立劇場 オペラ研修所の第オペラ試演会で、17期〜19期の研修生をメインキャストとして 試演会が行われた。試演会であるため、舞台装置は簡素化され、管弦楽はなく、ピアノ(大藤玲子、篠原明子) と打楽器(金子泰士)のみの伴奏であったが、歌の水準は高かった。ジャンニ・スキッキを歌った19期の伊良波良真(Br)は、初めて 聴いたが、声も演技もなかなか立派で今後の成長に期待したい。シモーネ役の氷見健一郎は、 某声楽コンクールでも聴いたことがあるが、重厚な美声を持ち存在感十分であった。ラウレッタ役の 城村紗智(S)、ツィータ役の高橋柴乃(Ms)、ネッラ役の宮地江奈(S)、チェスカ役の砂田愛梨(S)の 女声陣も美声を生かしてみな好演。賛助出演した研修所OBの岸浪愛学、山田大智、松中哲平、村松恒矢ももちろん好演。
一方、粟國淳の演出は、室内に段差を作り、ブオーゾの死体のが横たわるベッドを高所に置くなどの工夫も見られたが、 予算的制約のためか簡素化されたもので、視覚的に楽しいものではなかった。(2016.7.4 記)


2016.7.3:「夕鶴」

今回の公演は、殺風景な舞台が印象に残っている前回(2011年)及び前々回(2000年)公演の再々演であるため、多少のためらいがあったが、 澤畑恵美のつうを聴きたくなりチケットを購入した。 「空」を強調し、地上部は簡素化した栗山民也の演出の意図は理解できなくはないが、ふすまや障子はもとより、天井もない2人の住まいは簡素を通り越して 殺風景な洗濯物干し場のようであった。庭にある1本の木も冬とはいえ街路灯と見紛うように直立した姿なのもいただけない。
一方、4人の出演歌手は、まさに適材適所で理想に近いものであった。つうを歌った
澤畑恵美(S)は、「日本音楽コンクール」 で優勝(第58回、1989)後30年近く経っており、十年程前に聴いた時より多少声が硬くなっているようにも思えたが、豊かな美声は健在で好演であった。 前回も与ひょうを歌った小原啓楼(T)は若々しさと強さを兼ね備えた美声を生かして今回も大変素晴らしかった。やはり前回も同役で出演している運ず役の谷友博(BR)と 惣ど役の峰茂樹(Bs)も存在感十分の好演であった。団員は入れ替わっているものと思われるが、世田谷ジュニア合唱団の児童合唱もなかなか良かった。 管弦楽は、大友直人指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2016.7.4 記)


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