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(22) 2019/2020シーズン公演(最終更新日:2020.2.15)-------- (大部分の画像は、クリックすると大きくなります)

2019.9.6:「ランスへの旅」
2019.9.15:「エトワール」
2019.10.3:「エウゲニ・オネーギン」
2019.11.13:「ドン・パスクワーレ」
2019.12.7:「椿姫」
2020.1.28:「ラ・ボエーム」
2020.2.14:「セビリアの理髪師」


《過去のシーズン公演》:  1999/2000 * 2000/2001 * 2001/2002 * 2002/2003 * 2003/2004 * 2004/2005 * 2005/2006 * 2006/2007 * 2007/2008 * 2008/2009 * 2009/2010 * 2010/2011 * 2011/2012 * 2012/2013 * 2013/2014* 2014/2015* 2015/2016 * 2016/2017* 2017/2018* 2018/2019


2019.9.6:「ランスへの旅」

藤原歌劇団公演(共催:新国立劇場・東京二期会)として、オペラパレスでロッシーニ作曲(1825年)の一幕オペラ「ランスへの旅」が 上演された。このオペラは、ロッシーニ独特の軽妙なメロディーに乗った歌唱が続く名作ではあるが、めったに演奏されない。 その理由として、15名を超えるソリストを集めるのが大変などと言われているが、曲のほとんどを彼自身が3年後の1828年に作曲した 「オリ―伯爵」に転用していることとも関連がありそうに思える。 今公演の17名のソリストは、藤原歌劇団団員が15名、二期会会員が2名であったが、総体的に高水準の演奏で、作品の良さが 充分に伝わった。コリンナ役の光岡暁恵は、 2003年の日伊声楽コンコルソ(3位)や2008年の静岡オペラコンクール(優勝)での好演が記憶にあったが、今回久し振りに 聴いた伸びやかな美声は一層素晴らしかった。メリベーア侯爵夫人役の富岡明子、 フォルヴィル伯爵夫人役の横前奈緒、騎士ベルフィオーレ役の糸賀修平、リーベンスコフ伯爵役の山本康寛、2006年にも同役を歌ったトロンボクノ男爵役の折江忠道、 ドン・アルヴァーロ役の上江隼人等も持ち味を生かして好演であった。
松本重孝演出による今公演では、長大な一幕もののオペラを分割して二幕オペラとして上演したが、特に不自然ではなく、 休憩も取れてむしろ好都合であった。舞台となる保養地のホテルは、豪華ではないが洒落た感じで悪くはなかったが、サロン奥の 白っぽい壁面にはもう一工夫ほしかった。
管弦楽は、園田隆一郎指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2019.9.7 記)


2019.9.15:「エトワール」

東京オペラ・プロデュースの主催で エマニュエル・シャブリエのオペラ・ブーフ(喜歌劇)「エトワール(星占い)」が中劇場で上演された。 シャブリエといえば軽快な狂詩曲「スペイン」しか思い浮ばないが、Wikipediaによるとオペラも「エトワール」の他にも3曲作曲しているようだ。 このオペラは、2009年に今回と同じ飯坂 純の指揮下に上演されたが、先約のため観ることができなかったので、今公演には 予備知識ゼロで接した。特に印象に残るアリアはなかったが、全曲を通して軽妙かつリズミカルな音楽は、親しみやすく心地良く響いた。 なおこのオペラは、youtubeでも全曲聴くことができる。 このオペラのストーリーは、星占いの結果に振り回される複雑かつ荒唐無稽なものであるが、台詞部分が当代風のギャグ満載の日本語であったので、 理解しやすく楽しめた。
出演歌手の中では、ウーフT世役の 青柳素晴の声量豊かな美声が圧巻。また、行商の若者ラズリ役の醍醐園佳は、声も良く、 容姿も抜群でまさに宝塚の男役スターの観があった。王女役の江口二美、占星術師シロコ役の米谷穀彦ほかも好演。
一方、八木清市演出による舞台は、回り舞台に乗ったサイケデリックな彩色が施し、抽象化した簡易な宮殿が中心であったが、 ドタバタ喜劇には良くマッチしていた。管弦楽は、飯坂 純指揮下の東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団。(2019.9.16 記)


2019.10.5:「エウゲニ・オネーギン」

新国立劇場2019/2020シーズンの開幕公演としてチャイコフスキーの「エウゲニ・オネーギン」が上演された。出演歌手 のうち中核の4人の外国人歌手は、いずれのロシア出身でしかも新国初登場であった。 オネーギンを歌ったワリシー・ラデュークは、2005年の第4回 静岡国際オペラコンクールで優勝しているが、予選でその素晴らしい美声と歌唱力に初めて接し、 将来の大成を確信していただけに、十数年ぶりに再度接することができてうれしかった。今回の公演では期待通りの素晴らしい歌唱を披露し理想的な オネーギンを演じた。タチアーナを歌ったエフゲニア・ムラーヴェワも気品のある豊麗な 美声を駆使してMET ライブで観たネトレプコに匹敵する好演であった。一方、レンスキー役のパーヴェル・ コルガーディン及びオリガ役の鳥木弥生は、声の響き前記の2人に押され気味であったこともあり、それぞれの役のイメージに若干合わない気がした。 グレーミン公爵役のアレクセイ・ティホミールフは、存在感充分の好演 であった。また、フィリッピエヴナ役の竹本節子は、豊かな美声を活かし、いつものごとく好演であった。
一方、ドミトリー・ベルトマンによる演出は、本人がプログラムで述べているように、100年近く前の スタニスラフスキーの演出を発展させた正統的なものである。舞台中央に8本の石柱を持つ古代風の立派な門構えを3幕を通して活用し、 各場面で豪華な舞台を現出した。しかし第2幕のラーリナ家での舞踏会はコミカルな所作も多く面白かったが、第3幕のグレーミン侯爵邸での舞踏会 の場面では、タチアーナを除いた女性全員を黒衣装とした意図が理解できなかったし、視覚的には楽しくなかった。
管弦楽は、アンドリー・ユルケヴィッチ指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2019.10.4 記)


2019.11.13:「ドン・パスクワーレ」

ドニゼッティ作曲のオペラ・ブッファ 「ドン・パスクワーレ」が新国立劇場では、初めて上演された。 今公演は、歌手、演出ともに理想に近く、ドニゼッティ晩年の傑作を大いに楽しむことができた。
出演歌手は、主役の4人は、理想に近いキャストであった。 主題役を歌ったロベルト・スカンディウッツィ(Bs)は、2001年の「ドン・カルロ」、2007年の「ドンキ・ショット」 での好演が記憶に残っているが、今回も重厚な美声を駆使して見事な歌唱と演技を披露してくれた。 医師マラテスタ役を歌った新国初登場のビアジオ・ピッツーティ(Br) も、豊かな美声を持ち同様に好演であった。甥エルネストを歌ったマキシム・ミロノフ(T) は、2017年の「セビリアの理髪師」で好演したが、今回も前記の2人と比べるとやや細めながら良く透る美声を駆使してやはり好演であった。 ノリーナ役を歌ったアルメニア出身で新国初出演のハスミック・トロシャン(S)は、欧米で活躍する 新進の歌手であるが、「夜の女王」まで歌う技巧の持ち主でありながら、声量も十分あり、しかもなかなかの美女である。 今公演でも彼女の特質が活かされ、適役であり好演であった。
i一方、ステファノ・ヴィツィオーリの演出は、写実的な舞台装置の質感、素早く気のきいた舞台転換、コミカルな所作など どの面からみても見事で、イタリアでは繰り返し上演され決定版ともいわれているとの事もうなずける。
管弦楽は、コッラード・ロヴァーリス指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2019.11.14 記)


2019.12.7:「椿姫」

4年振りに「椿姫」を観た。今公演の演出は、前回(1917年)及び前々回(1015年)と同じ ヴァンサン・ブサール による ものであったが。全幕を通して舞台上に置かれたピアノを中心にドラマを進めるなどの 新機軸もあったが、ヴィオレッタやフローラの家の豪華な客間の照明が寒色で暗く、衣装が映えな かったのは、残念であった。第2幕の郊外の田舎家も暗く、それらしい雰囲気はなかった。
なお、過去20年間の公演でも記憶にないが、7日の公演では照明設備に問題があったらしく、 開演が20分近く遅れるというトラブルがあった。
一方、歌手陣は、脇役を含めて理想に近く、ヴェルディ の傑作オペラを満喫できた。 ヴィオレッタを歌ったギリシャ美人の ミルト・パパタナシュは、豊麗な声を持つ一方、弱声のコントロールも見事、ヴェルディが求めた 理想のプリマ・ドンナ像そのものであった。アルフレッドを歌った米国出身の ドミニク・チェネスも 伸びのある明るい声で、適役であり、好演であった。ダブルキャストだった初回(2002年)を除いて、過去5回の 公演では外国人歌手が歌ってきたジェルモン役は、今回、須藤慎吾が歌ったが、彼のイタリアでの本格デビュー がこの役というだけに、父親役としては、声が強靭で若々しすぎるというぜいたくな思いもなくはなかったが、 見事な歌唱であった。今後も主要キャストへの実力派邦人歌手の起用を増やしてもらいたい。
管弦楽は、新国初登場のイヴァン・レプシッチ指揮下の東京フィルハーモニー交響楽団。(2019.12,8 記)


2020.1.28:「ラ・ボエーム」

プッチーニの名作「ラ・ボエーム」は、人気オペラだけに新国立劇場でも過去に5回(2003, 2004, 2008, 2012, 2016) の公演があったが、演出はいずれも粟國淳が担当している。総体的には、素晴らしい演出で、特に第2幕の カルチェ・ラタンの賑わいは印象的であるが、個人的には、第1幕及び第4幕のパリのアパートの屋根裏部屋は、 薄汚いのよいとして、傾斜した天窓を除いて パリの雰囲気というより、なにか昔の日本の百姓家の土間 のように見えてしまい楽しめなかった。また、3階から見たせいか、奥行きの無いのも気になった。
一方、出演歌手の主役の4人はいずれも新国立劇場初登場であった。 ロドルフォを歌ったマッテオ・リッピ(T) 及びマルチェッロ役のマリオ・カッシ(Br)は ともに声量豊かな美声の持ち主で、なかなかの好演であった。 女声陣ではムゼッタを歌った辻井亜季穂(S) の伸び伸びとした美声が大変素晴らしかった。ドイツを中心に活躍中とのことであるが、日本国内での活躍にも期待 が持たれる。一方、ミミを歌ったニーノ・マチャイゼ も欧米で大活躍とのことであるが、中低音部の声がやや透明感にかけるためか、個人的にはあまり好きになれない。 コッリーネ役の松位浩(Bs)ほかの邦人歌手もそれぞれ好演。
管弦楽は、パオロ・カリニャーニ指揮下の東京交響楽団。(2020.1.29 記)


2020.2.14:「セビリアの理髪師」

過去4回の公演と同じ演出であったが、欧州で、 しかも今回のロジーナ役が好評という 脇園 彩(Ms)が聴きたくて、出かけたが、新国初登場の男声陣も素晴らしく、大いに楽しめた。 脇園は、魅力的な声、見事なアジリタ、堂に入った演技を披露し、期待に応える好演であった。 男声陣(アルマヴィーヴァ伯爵:ルネ・バルベラ(T)、 フィガロ:フローリアン・センペイ(Br)、 バルトロ:パオロ・ボルドーニャ(Br)、 ドン・バジリオ:マルコ・スポッティ(Bs))は、 みな新国初登場で名前も知らなかったが、いずれも欧米で実績のある歌手のようで、歌・演技とも抜群の好演であった。 脇役ではベルタ役の加納悦子(Ms)も負けずに好演。
一方、フランコ政権下の1960年代に時代を設定したヨーゼフ・E・ケップリンガーの演出は、今回で5度目であるが、 回り舞台いっぱいに2つの らせん階段を付加した3層の手の込んだ建物を乗せたカラフルで機能的な建屋は何度見ても 飽きずに楽しめた。また、ちびっこギャング的な活発な子供たち、通行人(妊婦、尼僧、土木作業員等)のさりげないコミカルな所作も面白かった。
管弦楽は、アントネッロ・アッレマンディ指揮下の東京交響楽団。(2020.2.15 記)


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