<朗 報>

澤蔵司稲荷たくぞうすいなり裏問題 - 小石川3丁目の重層長屋

建築審査会で執行停止決定・取消裁決
          
 23文建審・請第3号事件
「今後の課題 〜取り壊し・除却 〜」
1 崖の上の旗ざお長屋
 文京区建築審査会で、平成24年3月6日、建築確認処分の執行停止決定が出た。本件では、審査会へ審査請求された後も建築主芸社(デベロッパー)が工事 を続けていたので、「工事完成と執行停止決定のどちらが先か」が問題となる事案だった。審査請求されて約3週間後、工事完成直前に執行停止決定が出た*1。 まさに劇的に建築工事が中断された。
 その後、口頭審査・検証を経て、平成24年5月22日付けで建築確認処分の取消の裁決がされた。

2 認定された違法と 検討が残された問題点
5月22日付け裁決書には、@東京都建築安全条例6条2項(崖の高さ分、崖から離して建築する原則)とA一敷地一連物の原則の2点に反することを認定した上で、 「違法であることは明らかであり、請求人らのその余の主張について検討するまでもなく」として、本件処分を取り消す旨記載されてある。
 この裁決書で「検討するまでもなく」とされ、未解決のまま残った問題は多い。たとえば、B長屋と申請されているが「共同住宅」ではないか、また、C「ロフト」と 称する部分は「居室」であり容積率違反ではないか等、他の重層長屋でも問題となる重要な論点までも残されたままだ*2

3 崖の上に残されたものは
 本件の崖は、高さ7m以上もある急斜面であるが、高さを21cm〜1m90cmと低く詐称され建築確認処分がなされていた。現在、がけの端ギリギリに建築物は残っている。 また、柱と柱の問の距離( 横架材おうかざい間の垂直距離)が離れすぎており、また、高さ約 4m の吹き抜け部分が多く存し、窓が多く壁が少ないので、 不安定な建築物である。
 また、木造建築物が密集する地域で、隣地境界線と接近して建てられているので、火災の場合の延焼や地震による倒壊などの危険もある。

4 事後の課題 〜 建築物の取り壊し(除却じょきゃく)の実現 〜  「建築審査会で建築確認処分が取り消された」ということは「建築が白紙に戻された」ということである。特に執行停止決定までして劇的に工事が止められ、 問題点を多く残した本件事案においては、建築審査芸の重い決断を尊重して、建築中の建築物をいったん取り壊し、初めに戻って建築主会社は建築確認申請を出 し直し、すべての問題点を解消した建築物を建て直すべきであろう。
 実際、乗京都中野区や神奈川県横須賀市など、建築確認処分が取り消された後、建築途中の建築物を取り壊した(除却じょきゃく) 例もある*3 逆に、建築主が除却せず、特定行政庁も除却命令を出さない結果、除却義務づけ訴訟に発展した例もある*4
今後、文京区の良識ガ問われるところであろう。
 除却指導・命令をしても建築主が除却しない場合、特定行政庁は除却の代執行をすることができる。実際、京都・大阪・岡山など代執行をした例もある。
 本件事案では、建築主自らが除却するか、文京区が除却指導・命令するか、見守る必要がある。
また、違法建築物の出現を事前に防止する対策として、区の違法工事に対する取締や、銀行の工事代金への融資のあり方等、改めて検討する必要があろう*5

(2012.6.30 ポニョ)



*l 工事か完成すると、建築確認処分の取消求める適格が消滅する。但し、建築確認処分の違法性を国家賠償請求の形で争うことはできる。
*2 東京都世田谷区でロフトの居室転用なとを理由に建築確認の取消がされた事案ガ「日経アーキテクチュア」(平成24年6月18日)に紹介(タイトル「世田谷区が”脱法長屋”防ぐ条例案」)。
*3 17中建審・請第4号事件(中野区の 9 階建マンションの事案)、横浜地方裁判所平成15年(行ウ)第39号事件(横須賀市の崖の事案)など
*4 東京地方裁判所平成22年(行ウ)第613号事案(「たぬきの森」事件)など
*5 国住指第541号「違法行為若しくはその疑惑・・・を把握した場合の初動対応と公表のあり方」


≪添 付 資 料≫

1.公開・執行停止決定書(H24.3.6)

2.公開・裁決書(H24.5.22)

3.陳情書

4.工事停止命令の公告