2010年5月20日
                  銅御殿マンション問題・環境保全措置命令訴訟 提訴のお知らせ
              〜文化財保護法に基づく重要文化財保存のための措置を求める初の訴訟〜
                                                                             銅御殿行政訴訟弁護団

1 銅御殿・環境保全措置命令訴訟の概要

 (1) 原告 銅御殿の周辺地域住民9名
 (2) 被告 国(行政庁:文化庁)
 (3) 請求の趣旨の概要
     @文化庁長官が、野村不動産が建設中の「(仮称)文京茗荷谷マンション」の建設について、文化財保護
       法43条1項本文の許可手続を行う義務があることを確認する(公法上の確認訴訟)
     A文化庁長官は、同マンションの建設について、野村不動産に対し、銅御殿に現状を超えるピーク風力計
       数をもたらす構造物を建設してはならないとの命令をせよ(義務付け訴訟)

2 銅御殿隣接地におけるマンション建設問題の概要

 (1) 銅御殿について
     銅(あかがね)御殿(重要文化財旧磯野家住宅)は、文京区小石川に所在する木造3階建ての和風建築で
   あり、1912年竣工。屋根と外壁が銅板葺き・銅板張りのためこの名で呼ばれる。関東大震災や戦災をくぐ
   り抜けた銅御殿は、希少価値のある材料、伝統的な木造建築の意匠・技法・構成、明治の大工の創意を融合
   させた近代和風木造建築の傑作の一つ。銅御殿を中心とする湯立坂は文化財と緑に覆われた都市景観を形成
   している。2005年(平成17年)に国の重要文化財に指定。財団法人大谷美術館が所有。
 (2) 野村不動産によるマンション建設と銅御殿への影響
     野村不動産は、地域住民及び大谷美術館の反対を押し切り、銅御殿の東側隣接地に鹿島建設を施工者とし
   て、地上12階・地下2階のマンションを建設中。
    同マンション建設により、場所によっては現状の1.7倍以上のビル風が銅御殿の土庇に吹き付けるとの調
  査結果があり、土庇の破損が懸念されるほか、地下水位低下による地盤沈下等による銅御殿への影響が予測
  される。また、既に掘削工事の振動により銅御殿の書院の壁・チリに大きな亀裂が生じている。

3 原告らの主張

 (1) 請求の趣旨@(公法上の確認訴訟)について
     重要文化財の保存に影響を及ぼす行為については、文化庁長官の許可を取らなければならないにも関わら
   ず(文化財保護法43条1項本文)、文化庁が同マンションの銅御殿への影響は軽微であるとの違法な通知を
   野村不動産に発したため、文化庁が許可手続を行うべき義務を有することの確認を求めている。
 (2) 請求の趣旨A(義務付け訴訟)について
     文化庁長官は、文化財の保存のために必要な場合、一定の行為を制限・禁止する権限を有する(同法45
   条1項)。文化庁長官は、同マンションによる銅御殿への風の影響を回避するために、野村不動産に対して
   命令すべき法的義務を有しており、本件訴訟では、当該命令の発令を求めている。
     なお、本件訴訟は、判例データベースによれば、文化財保護法による重要文化財保存のための許可手続及
   び環境保全措置命令を求める初めてのものである。