文の京で“空中権”乱開発が始まりました

サクラ並木(播磨坂)坂上のトヨタ“レクサス・マンション”

私たちが“空中権”なるものを耳にしたのは東京駅、丸の内側駅舎保存のニュースの中でした。あのレンガ駅舎を建設当時の姿に戻して保存、 使用を続けるといった話題の中で登場した言葉です。
文化財としての駅舎保存・復元・再建のための工事費をねん出する方法として、駅舎敷地に建てることができる建物のカサ=建築容積から、 実際に建つ赤レンガの建物の容積を引いた“あまり”の容積を近隣のオフィス建築事業に譲渡する話です。4〜5階建駅舎の上にはそれに倍 する建築可能容積が余ってしまいます。この“あまり”を丸の内オフィス街の建築計画に利用し、超高層建築として有効利用し、街区機能 の充実をはかりながら、文化財の駅舎を保存・復元し、歴史的景観の維持を実現するといった、歓迎する声の多かった話題でした。
最近では、三井日本橋タワーが隣接の三井本館の空中権を利用して39階建屋として完成し、重要文化財の三井本館を残したのがこの方法と されています。ここは空中権を使用しなければ15階建が限度であったといわれています。そして東京駅の空中権は、周辺の4つの超高層ビル (39階)に充当されつつあります。

このような空中権の移動による建築計画が突然文京区にも登場しました。空中権の移動の話は地域に一切なく、突如として一般市街地に超高層 マンションが、空中権を得て出現しようとしています。文化財の保護のためではありません。空中権を“売った”のは小石川レクサス(国際 トヨペット)、隣地の高層マンション用地もこの国際トヨペットの所有地でした。レクサスから空中権を付けた土地の売却を受けた東急不動産 がマンション建設の主役とされています。
2005年、建高5階の小石川レクサス(国際トヨペット)が春日通りに建設されました。そして、2年後、同じくレクサスの所有地だった隣地に 100mビル“レクサス・マンション計画が発表されました。普通、春日通り沿いの建築は15階建です。そこに低層建築の小石川レクサスの余っ た容積を載せて100ビル計画が発表されました。空中権の移動、建築も 連坦制を使った合法建築と文京区も東京都も説明しています。 しかし、地域の人々は法律に基づく『春日通りは15階建』を物差しとして、“お互いさま”の市民常識で生活してきた人が大部分です。そこに、 眺望権だけを売り物にして、より利益が上がる高層マンションが建てられようとしているのです。それも地元企業が地域との共栄を捨て、 スイッチを押して始めたのは文の京の悲劇です。
私たちの周辺地域にも高層建築物はあります。しかし、これらの建物は 総合設計制度により、ある一定の敷地を公開区域、緑の空間として提供し、 地域生活への視点があります。しかし、このレクサス・マンションの超高層建築は公開空地を必要としない連坦制の建築方法です。いわゆる緑の 公開空地はありません。緑地も空地もなく小石川レクサスに隣接して高層マンションが建てられます。高層建築に伴う風は低層建築物との狭い隙間 に吹き込み、複雑、倍化したビル風・風害として地域にもたらされてしまいます。

こんな空中権の売買とレクサス・マンションの建設を認めてしまうと、区内どこにでも高層マンションが計画できることとなり安心して住むことも、 住居を選ぶこともできません。
@公開空地設置を義務づける総合設計制度は有名無実になり、
Aお寺、学校用地など容積率の“あまり”のある大規模用地が多い文京区は空中権のやり取りで高層マンションの乱立さえ危惧され、文の京の景観と、 住宅環境は極めて不安定なものとなり、都市計画制度そのものが崩壊するものと考えます。

これは、ただサクラ並木周辺地域の問題ではなく、広く都市にすむ人々に迫りくる問題として区内、都内で広く討議すべき問題です。
建築計画の中止、再検討を 建築主、旧土地所有者、行政に求める必要があります。そして、文京区には一日も早い高層建築可能地域と、不許可 地域の線引きを実現し、安心して住める環境を実現してほしいものです。 追記、白山通りに完成した東京トヨペットの社屋は低層建築です。空中権の行方は・・・・(T&T 記)


“レクサス・マンション”は、違法建築とわかり、建設工事が中断されました。この件については、 東京新聞でも報道されました。