文京区情報公開条例第11条に基づく救済申出(文情審第8号)
                                     に関連する意見書

                                                平成22年1月29日提出
                                                 救済申出人 ■■■■■

【意見1】区の情報保有について
  都市計画部地域整備課の担当者(以下「担当者」)によると、当方が請求した春日・
後楽園駅前地区市街地再開発の事業採算に関する資料について、再開発準備組合(以
下「準備組合」)は保有しているが、民間事業者による開発なので事業認可までは区が
保有管理する必要はないとのことであった。
  しかし、準備組合の提案を受け、区の都市計画としての妥当性を判断する段階で、
当該資料の明示を受け、それをもとに区の担当部署にて検討し、妥当と判断したうえ
で、都市計画説明会や都市計画審議会を開き「事業が成り立つためには141mとい
う高さが採算上どうしても必要」と説明し、その結果審議会が出した答申を受けて、
区長が都市計画決定したという経緯からすると、区が明示を受けた時点からは区の行
政情報として保有するべきものであったと考える。
  当該情報を利用して文京区として区民に説明しておきながら、説明の根拠の公開を
求められたら、区の情報ではないから保有管理していないので非公開というのでは、
あまりにも無責任である。

  担当者に、「資料の明示を受け、検討した段階では文書として存在していたと思うが、
その後廃棄したのか」と2度ほど質問したところ、回答はなかった。また、正式な文
書でなくメモ程度だとしても求める情報として充分なので、示してほしいと要望した
ところ、メモ程度の情報があるかどうかも明言しなかった。しかし、廃棄したという
明言もなかったので、存在する可能性はあると推測している。また、廃棄したとして
も、再度準備組合に資料の提示を求め改めて保有することはできると考える。


【意見2】財政援助団体の情報公開について
  情報公開条例(以下「条例」)第25条第3項に「区長は、財政援助団体の情報提供
について必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」と定めるように、区長は、現に
保有する行政情報の公開以外に、財政援助団体の情報提供を促す努力義務が課せられ
ている。準備組合はすでに区からコンサル費用などの財政援助を受けており、今後は
交付金等の形で巨額の税金の補助を受ける立場にあるので、ここに定める財政援助団
体にあたると考える。
  21年11月9日面談時、担当者に、以前に準備組合から明示を受けた資料を再度
取り寄せて示してもらうよう頼んだが、担当者は「準備組合に区民が公開を求めてい
る旨伝えるが、提出しないと思う」と言い、実際に同月20日の担当課長からの回答
書(21文都地第226号 コピー添付)では開示されなかった。
  回答書によると、「都市計画は(中略)事業採算を審査する手続きではないことから、
ご質問の資料についての提出を現段階では求めていません。」とあり、区民が公開を求
めていることすら伝えていないようにも読み取れる。区は条例第25条にもとづき、
一体どのような措置を講じたのか、何も講じなかったのではないかと疑問に思う。

  同回答書によると、「事業の成立性や事業採算等は、(事業)組合設立のときに併せ
て行う予定としている事業認可手続き時に関係資料の提出を求め、その詳細を審査す
る」ということだが、多額の税が投入され区が都市計画決定する法定再開発事業であ
る以上、区が請求しさえすれば、どの時点においても区民が求める資料の提出を拒む
ことはできないと考える。
なお、当方は事業認可の段階で提示されるであろう事業計画の詳細を求めているも
のではなく、区が都市計画説明会や審議会で141mの高さを低くすると事業が成り
立たないと区民に対して説明したことの根拠を知りたいのであり、区民がこの高さに
よる様々な環境面の悪影響をどうしても我慢しなければならないのか、説明の真偽や
妥当性を判断したいのである。担当部署にて妥当性を検討した際に用いた概要を示す
資料で充分なので、区民の要望に添って情報をできるだけ公開するよう切に願う。

  当該資料を公開することにより、条例第7条第3号に規定されるように「準備組合
構成員の個人の権利や法人等の競争上の地位や利益を著しく害する」ものでもなく、
むしろ同号の但し書きのように、「人の生活や環境の保護のため、公にすることが必要」
とされる情報だと考える。


【意見3】情報公開に関する区の姿勢について

  区民の有志が、2008年8月より一貫して、「155mあるいは141mという周
囲から突出する高さの再開発を見直してほしい」との申し入れを文京区にしてきたが、
区は「高さをこれ以下にすると採算面で事業が成り立たない」と主張し続け、それに
対して「事業が成り立たない根拠として収支の見積もりなど採算の概要を示してほし
い」と申し入れると、区は「現在は計画が未定なので示せない」と返答し、「詳細でな
く概要でもよいので示してほしい」と言うと、「現段階は採算性を論じるときではなく、
高さや容積などの大枠を決めるときだ」と返答し、「それなら採算を根拠にこれ以上低
くできないとは言えないはずだから、文京区のまちづくりとして相応しい高さを論じ
てほしい」と言うと、「できれば低くしたいが、この高さが採算上限度である」と区が
返答するという、どうどうめぐりで都市計画決定まで来た。
  今は採算を論じるときではなく、高さを論じるときだと言うのなら、高さの決定理
由に採算性を持ち出すべきではないが、それでも採算性で高さが決まると言い張るの
なら、その根拠を示すのは社会常識上当然ではないだろうか。

このように区民の疑問や要望に対して、論理をすり替えたり、はぐらかしたりして、
向き合わない態度は、区民主権、区民参画、協働協治という自治基本条例の理念に反
するとともに、情報公開条例の理念にも反する。あくまで原則公開を忘れず、条例第
21条第1項にもあるように、「情報公表施策及び情報提供施策の拡充を図り、区政に
関する正確で分かりやすい情報を区民が迅速かつ容易に得られるよう、情報公開の総
合的な推進に努め」ていただきたい。

  今回の巨大再開発のような区民の生活に多大の影響を与える計画を遂行するに際し
て、区民が不安や不信を抱き情報を求めるのは当然のことであり、区としても行政情
報を最大限公開することはもとより、条例第21条第2項に定めるような努力をして、
できるだけ広い範囲で情報収集をし、区民の要望に答えようとする姿勢がほしいとこ
ろである。保有していないのをいいことに、むしろ便利に利用し、区民の情報請求を
拒絶する態度は大変残念なことであり、このような状況では区民との信頼関係を築く
ことも公正で開かれた区政を実現することも不可能ではないかと危惧する。


【意見4】情報公開に関する審議会等の姿勢について

 平成21年度第1回都市計画審議会で、本再開発計画の審議中、委員が追加資料と
して本請求と同様の事業採算性の概要を示す書類の提示を求めたが、審議会会長が現
段階では採算に関する審議は不要と、資料提示を拒否した。審議会後、傍聴者有志で
審議の進め方に関して審議会会長と区長宛てに要望書を出し、委員が求めたとおり追
加資料を審議会に提示するよう求めたが、区長から拒否の回答があり、会長からは返
答がなかった。
 本件の救済申出とは関係がないが、非公開の論理はほぼ同じであり、上述のように
区民に向き合う姿勢として問題があると感じる。文京区に蔓延する秘密主義、非公開
の体質を払拭し、ぜひ今後は区長のみならず、行政審議会等の長の姿勢も改めていた
だきたいと思う。

  

【付記】救済申出人は口頭意見陳述を希望します。  


                                                                  以上