(2)奏楽堂日本歌曲コンクール

今年(2002年)13回目を迎えたこのコンクールは、日本歌曲のみを対象としたコンクールであり、歌唱部門と作曲部門とがある。 声楽家の登竜門の一つとして知ってはいたが、これまで傍聴する機会がなかった。2月から年金生活に入り、時間的に余裕が出来たので、 一次予選から傍聴させてもらった。課題曲が馴染み深い日本語の歌曲のみであるせいか、出場者が非常に多く、若干の欠場者はあったものの老若男女の 「ノド自慢」の参加があり、今回エントリーした人は232名にのぼった。男女別では、このコンクールも女性の参加が圧倒的に多く、 一次予選で聴いた70名中59名が女性であった。参加者が多いだけに優劣の幅も大きく、参加することに意義を感じているとしかいいようのない人も混じっており、 これらを含めて3日間も朝から夜まで聴かなければならない審査員の忍耐が思いやられた。しかし、一般傍聴者にとっては、 めぼしい日本歌曲を一気に聴ける貴重な機会でもあった。なお、ヒゲ面の男性がかぼそいファルセットで歌ったり、 伴奏者なしで「弾き歌い」をする女性がいたりの意外な場面もあった。 今回の一次予選(5月10〜12日)は、課題曲(山田耕筰の作品)及び自由曲それぞれ1曲であったが、山田耕筰の作品は、50曲歌われたが、 ベストファイブは有名な「この道(11名)」、「からたちの花(10名)」や「あかとんぼ(5名)」をさしおいて下記のとおりであった。
1.「鐘がなります」(21名)
2.「かやの木山の」(20名)
3.「母の声」(16名)
4.「病める薔薇」(13名)
5.「曼珠沙華」(12名)

一方、自由曲としては40人近くの作曲家の作品が選ばれたが、ベストファイブは、下記の5人であった。
1.中田喜直(66人)
2.山田耕筰(25人*)    * 2曲とも山田耕筰を歌った人の数
3.團伊玖磨(19人)
4.別宮貞雄(16人)
5.大中 恩(14人)

二次予選(5月18日)には、50名が残り、やはり課題曲及び自由曲各一曲を歌った。課題曲は團伊玖磨の歌曲であったが、ベスト5は、 下記のとおりであった。
1.「ひぐらし」、「船歌」(各6人)
3.「花季」(5人)
4.「旅上」、「藤の花」、「はる」(各4人)

ところで、このコンクールは、上記の「日本音楽コンクール」等と異なり、一次予選、二次予選とも氏名を公表せず、おまけに出場番号が一次と二次で変わってしまうため、 一次で何を歌った人が予選を通過したのか、傍聴者にはほとんど判らない。このため、審査員の気分になって○や△を付け、 審査結果と付き合わせてみる楽しみがないのが残念である。 なお、本選(5月26日)は、チケット(有料)が売切れで入手できなかったため、入賞者記念コンサート(7月13日)に出かけたが、 さすがに1位から3位までの入賞者(神野靖子、斉藤京子、悦田比呂子)は、歌唱力、声ともに素晴らしかった。3人共すでにいくつかのオペラ出演経験を持っているようだが、 個人的な声の好みからいえばには、2位になった斉藤を一番に推したいが、1位の神野の歌唱力及び高音の伸びはさすがであった。(2002.7.14)

追記T(第17回コンクール):久しぶりにこのコンクールに出かけた。相変わらず、出場者は、番号だけで、しかも一次と 二次の出場番号が変ってしまう。この方針の趣旨が理解できないわけではないが、観客としては、せめて 一次の出場番号を本選まで付記してくれるとありがたい。今回は、一次予選(5/12〜14、課題曲:山田耕筰の作品より 任意の1曲、自由曲:1曲)の一部と二次予選(5/20、課題曲:團伊玖磨の作品より任意の1曲、自由曲:1曲)、 本選(5/28、課題曲:指定の20曲より任意の1曲、自由曲:曲数は自由。但し昭和20年以降に作曲または発表された歌曲 を1曲以上含める。)を聴いた。歌唱部門の応募者総数は218名、第一次予選通過者は50名、第二次予選通過者は 11名であった。審査の結果、第一位:土ア譲(T)、第二位:佐藤容子(S)、第三位:野崎由美(S)となり、奨励賞に 栗原末和(S)、Menish純子(S)及び大元和憲(Br)が入り、星川美保子(S)、有本泰子(S)、竹内宏佳(S)、田上知穂(S)、 小池芳子が「入選」となった。第一位の土ア譲は、圧倒的な声の力を持っており、オペラ歌手としての大成を期待したい。 佐藤の美声、野崎の歌唱力も印象的であったが、伸びやかな美声と素晴らしい歌唱力をもつ田上知穂が入賞を逸した のは、以外でもあり、残念であった。(2006.5.28記)

追記U(第18回コンクール):今年は、二次予選と本選だけ聴こうと思っていたが、売切れのため本選チケットの入手ができず、二次予選の一部(24/52名)だけ聴いた。 この内数名は入賞が期待されたが、結果は不明である。下記は、旧奏楽堂のホームページから の転載である。

第1位:与那城 敬(中田喜直賞)、第2位:小松 由美子(奥田良三賞)、第3位:金子 美香
奨励賞:香川 美智子、奨励賞:鷹野 恵、奨励賞:崔 宗宝
入 選:野宮 淳子、赤羽 佐東子、小畑 佳子、松本 薫

なお、優勝の与那城 敬は、新国立劇場オペラ研修所の卒業生であるが、声、歌唱力、容姿ともに抜群の若手バリトンで以前から大いに期待していただけに、ご同慶の至りである。(2007.6.8記)

追記V(第19回コンクール): 久し振りに一次予選の一部(2008.5.9、30人)と2次予選(2008,5.17、出場者:53名)の約半分を聴いた。本選(2008,5,25)は、 「イタリア声楽コンコルソ」の本選と重なってしまったため、聴けなかった。旧奏楽堂のHPによると、歌唱部門の審査結果は、 下記のとおり:
    第一位:山本 福久、第二位:鷹野 恵、大元 和憲、奨励賞:小林 沙羅、入選:崔 宗宝、 立川 清子、 吉村 華織、 有田 真恵、 松岡 洋一、 後藤 桂、優秀共演者賞 小林 美智 、奥田良三賞 杉山 知勢子

なお、このコンクールの予選では、相変わらず出場者の氏名を明かさず、しかも一次と二次予選で出場番号が変わってしまう。 氏名を明かさない方針は、一応理解できるが、一次予選時の出場番号を二次予選及び本選のプログラムに付記してくれると聴衆にとっては、 大変ありがたい。(2008.5.26 記)

追記W(第20回コンクール):今年は、2次予選(2009.5.9、出場者:53名)の一部しか聴くことができなかった。なお、 今年の2次予選の課題曲は、信時 潔の歌曲であった。本選(2009.5.24)は、期待の村上敏明も出場するので、出かける予定であったが、 チケットが2日間で売切れてしまったとかで、残念ながら聴くことができなかった。
旧奏楽堂のHPによると、歌唱部門の審査結果は、下記のとおり:
第一位:佐藤 寛子、第二位:小畑 佳子、第三位:吉川 健一、奨励賞: 西岡 慎介、 湯川 亜也子、村上 敏明、
入選:澤江 衣里、坂本 貴輝、羽根田 敦子、岸 七美子、優秀共演者賞: 松浦朋子 、奥田良三賞:杉山 知勢子。 (2009.5.26 記)

追記X(第21回コンクール): 旧奏楽堂のHPによると、歌唱部門本選の審査結果は、下記のとおり:
第1位:松尾 みどり、第2位:原 璃菜子、第3位:池田 尚子、奨励賞:崔 宗宝、城守 香、吉村 華織
入選: 西村 文乃、金川 睦美、富塚 研二、林 隆三、 池上 由美
優秀共演者賞: 羽賀 美歩、奥田良三賞:田中 則子

追記Y(2011年、第22回コンクール) : 今年は、何年振りかで200人以上が出場した一次予選のごく一部(15人)と二次予選に進んだ 54名の約40%(22名)を聴いた。二次予選(5月21日)では、No.6(S)の美声、No.16(Ms)の歌唱力 が特に印象に残った。幸い、2人とも本選に進んだが、本選は都合で聴けなかったので、順位等は 不明である。主催者発表 によると、歌唱部門の審査結果は下記の通り。

第1位: 城守 香 、第2位: 梅原 光洋、第3位: 板倉 まなみ
奨励賞: 平福 知夏、 奨励賞: 五十嵐 尚子
入 選: 坂下 忠弘、北島 都也、中村 弘人、武澤 佳絵、飯嶋 幸子
優秀共演者賞: 松田 祐輔、優秀共演者賞: 伊藤 康英、審査員特別賞: 大塚 道子

追記Z(2012年、第23回コンクール):今年は、2次予選の半数と久し振りに本選を聴いた。歌唱部門の応募者総数は、228名で、 この内50名が2次予選(2012.5.19)に進んだ。今年の2次予選の課題曲は、團伊玖磨作品であったが、やはり「紫陽花」を歌った 人が10人で最も多く、次いで「はる(5人)」、「藤の花(4人)」、「朝明(4人)」、「ひぐらし(4人)」の順であった。 さらに本選(2012.5.27)には、この内の11名(S:7、Ms:1、Br:3)が進んだ。年齢制限のないこのコンクールらしく、11名のうち 65歳以上の高齢者が3名含まれていた。 審査の結果:第一位は、歌唱力抜群で他コンクール入賞歴もある谷原めぐみ(S)、第二位は、やはり歌唱力抜群で多少暗いが、 豊かな美声の持ち主で優勝かとも思った薮内俊弥(Br)、第三位:藤原未佳子(S)、奨励賞:森孝裕(Br)及び山本有希子(S)、入選:大嶺光洋(Br)、大塚道子(Ms)、 五十嵐尚子(S)、平福未佳子(S)、武澤佳絵(S)、上田敦子(S)となった。70歳以上が対象になる審査員特別賞は大嶺光洋の与えられた。 なお、今回は、優秀共演者賞の該当者はいなかった。(2012.5.27 記)