小石川植物園が周辺道路拡張のために削られる問題について

今、小石川植物園御殿坂側の塀の内部で、埋蔵物調査が終わり、塀の改修と歩道拡幅工事が始まろうとしています。
この問題が明るみにでたのは、今年の東日本大震災直後の3月16日、播磨坂にある清掃施設会議室で行われた工事説明会です。 「小石川植物園周囲の2辺(西側と御殿坂)の塀の改修と、植物園の土地1200平米を削って歩道をつくる」という一方的な説明 で、パワーポイントにより素晴らしい塀と遊歩道の予想図が示されました。説明会の主催は工事を行う予定のトデックと文京区 道路課のメンバーのみで、土地の所有者である東大からは誰も参加していませんでした。区は、予算が平成23年度からおりてい るので4月早々に始めるというのです。
説明会に参加した近隣住民27名からは、徳川時代から300年以上変えずに守られてきた地形を、歩道のために、なんで1200平米も 削るのか等々、歩道は必要無いのではないか、反対意見が続出。電柱を地中化すれば歩道を広げる必要無いのでは、という意見 もでました。それに、植物園西側の道は近隣の住民なら誰もが、印刷業の車とフォークリフトは通るが、一般通行人は非常に少 ないこと、印刷業の車の違法駐車が多く、印刷関係の荷物が道路に積んで置いてあっても、一方通行の道は他の車が通る余裕が 充分にあることを知っています。説明会は、疑問、困惑、憤りのなか、「時間ですから」と終わってしまいました。説明会は一 回だけです、というところを強く要望して文京区道路課と工事請負う清香園主催(9月6日、新福寺)と東大主催の塀仕様説明会 (10月18日、本郷キャンパス)が開催されました。いずれの説明会も参加した者から計画見直しが強く要望されました。
この平成21年12月22日に文京区長と東大総長で協定書を水面下で締結した事業の経緯は、植物園を管轄している東京大学に対し 区民(議員)から、塀が危ないので改修して欲しいという声があがったが費用がない。そこで、文京区が国交省から社会資本整備 総合交付金3億4000万円を得て塀を修復する。都の指導により、歩道に緑地帯を設けなければならないので、平均2メートルの遊歩道 を確保するために、東大は無償で文京区に歩道拡幅分の土地(1200平米)を提供するというものです。
それで、私たち(小石川植物園を守る会有志)は、東京都を訪問し区との協議内容の確認と交付金の申請について、また、国交省 も訪問し、ことの経緯と交付金の問題点について意見を交わしました。
加えて、文京区、東京都、東京大学に情報公開請求を行って記録を調べたところ、文京区(道路課)が、「都の指導により」とす るものは偽りであることがわかりました。突然、それも一部の地域住民にしか知らされなかった計画なのに、申請書には、協議会 で充分な話し合いがもたれた結果とする等、虚偽の内容を含む申請書を提出して国交省から交付金を得て、塀の改修に便乗して歩 道広げることになっていました。
東大も都も国も、内容を充分に調べずに、植物園は土地を無償で提供し、3億円以上の税金を使うことになっています。しかし、国 も都も地方自治体が決定したことなので、実施の差止めや計画を改めさせる権限はないというのです。
東大の植物園関係者、設備に関する責任者らに、「計画を見直して欲しい」と要望したところ、「反対しているのは、植物園を守る 会のあなた達だけではないのか」、あるいは「署名」でもあれば、と言われたことから2011年秋「計画見直しを要望する署名」を開 始しました。署名を集めるなか、この問題を初めて知った人は、驚き、憤り、是非にと署名し、更に多くの方が自ら署名活動に協力 してくれています。マスコミも注目し始め、東京新聞は12月8日夕刊一面に大きくこの記事を扱ってくれました。東大の学生が運営し ている東京大学新聞(週刊)は11月15日に植物園関連記事が掲載し、12月10日に道路工事のために行った埋蔵物調査見学会が一般 公開されたことなど、多くの人がこの事業を知る機会が増え、反対する声が更に高まってきました。
2ヶ月弱で集めた707枚3378筆の署名を第一回として12月13日文京区長、東大総長に提出しました。今後も署名活動を続け、工事が 止まるまで続けたいと思っています。

す。

小石川植物園を守る会 池田正子(2011年12月15日記・写真提供)

参考資料:小石川植物園工事予定図

《近況(2014.8.19)》

小石川植物園の周辺(御殿坂)道路沿い塀改修と植物園を削って歩道を拡幅する工事は平成24年度(第一期)と平成25年度(第二期)の工事は終わりました。 その後、塀際とその周辺は鬱蒼とした森と絶滅危惧種を含む林床植物が豊かに生息していた土地でしたが、工事後2年経ってもそこには荒地に生息する植物が繁茂し、あるいは乾燥した地面がそのままです。また大切だからと伐採せず園内の他の場所に移植された約80本の樹木の三分の一が枯れた状態です。 歩道の幅も予定の植栽を変更したにもかかわらず歩道を広げたので人が4-5人並んで歩ける広さです。あそこにあんなに広い歩道が必要だったかどうかは今後歴史が証明してくれるでしょう。 それで平成26年度の工事(正門側の広い通り700メートル)塀沿いに植物園が削られて歩道を拡幅し、塀改修が行われる工事が準備されています。入札は8月21日です。 私達、小石川植物園を守る会はこの工事に関する監査請求を文京区に提出し、工事中止を要望しました。その要望書に文京区道路課から回答がありましたが、今まで4回提出してきた要望書と同じ回答で「予定の変更無し」というものでした。 今までに15000筆以上の「工事見直しを要望する署名」を提出したのですが、文京区からは上記の通り、「工事変更無し」でした。東大にも同じように工事見直しを要望しましたが、東大からは何の回答もありません。 監査請求と最近提出した文京区長宛て要望書、回答を添付いたします。

何とかこの330年続く植物園の歴史を守り、文化を大切にする文京区であって欲しいと願っています。

<添付書類>

 (1)監査請求書(H26.07.11)
 (2)区長宛要望書(H26.07.17)
 (3)道路課回答(H26.07.29)