≪紫苑物語≫のあらすじ

【第1幕】舞台は平安時代。歌の名家に生まれた国司の宗頼と、権勢を振るう家の娘、うつろ姫の婚礼の儀が執り行
われている。歌の道を捨て弓術に邁進する宗頼を父は責め、宗頼は自分の妻に身持ちの悪いうつろ姫をあてがわれたこ
とに怒る。叔父で弓の達人の弓麻呂は、歌の血が濃い間は、第一の矢(知の矢)、第二の矢(殺の矢)の奥義を悟ること
はできないと告げ、うつろ姫の寝所の男を射殺す。宗頼も次の男を射殺すが、うつろ姫は意に介さない。宗頼の家来、
藤内はこの様子にうつろ姫を利用して国を支配する野望を燃やす。狩りに出た宗頼は怪しい魅力を持つ千草と出逢う。

【第2幕】千草の虜となる宗頼。月の光に照らされ、千草が狐の化身であることがわかる。狐の妖術に触れた宗頼は第
三の魔の矢を悟り、叔父の弓麻呂を射殺す。藤内はうつろ姫と結ばれ、国司を狙う。一方、忘れ草を求めて、宗頼は
弓に化けた千草とともに山へと向かう。山の中では岩山に仏の顔を彫る平太が一人で暮らしている。宗頼が平太の彫っ
た仏の顔を射ると、宗頼諸共岩山が崩れ落ちる。(「The Atre」誌 2018年12月号より)