(5)日本声楽コンクール

今年、第14回を迎えた(財)日本音楽教育文化振興会の主催このコンクールは、声楽部門だけの水準の高い コンクールであり(因みに、今年の「日本音楽コンクール」の本選に残った10名の内4名が、このコンクールの過年度の入賞者であった)、 やはりプロ歌手の登竜門の一つになっている。このコンクールは、自宅近くのバリオホール(来年からは、尚美学園ホール)で行われたので、 やはり一次予選から出掛けた。一次予選(2002.11.29-30、於:バリオホール)の出場登録は、84名(女:68、男:16)であったが、何故か11名もが欠場した。 一次予選の課題は、「自由曲:6分以内」であったが、殆どの出場者は、オペラアリアを歌った。歌われた曲(含、欠場者の予定曲)を作曲者別に見ると、 やはりヴェルディが最も多く(17)、次いでドニゼッティ(12)、モーツアルト(8)、ロッシーニ、ベッリーニ(6)、グノー(5)であった。なお、 このコンクールでは、出場者は、ソプラノ、アルト、テノール、バスの4グループに別れ順次歌われた。
この内の21名(S:12、A:1、T:6、B:2) が二次予選(2002.12.7)に進んだ。テノールは確かに総じてレベルが高かったが、半数以上の6名もが二次に進んだのは、意外であった。このためか、入賞候補とさえ思われたソプラノ2-3人が落ちてしまったのは、残念であった。 二次予選の課題は、「自由曲:12-15分(歌曲のみ、日本歌曲を1曲以上含める)」であった。ここでも個人的な予想は一部はずれ、 入賞さえ予想した中国出身のテノールと美声の二期会の若手ソプラノが落ちてしまい、結局8名(S:4、A:1,T:2、B:1)が本選に進んだ。
本選(2002.12.14)の課題は、「自由曲:12-15分(予選と重複しないアリアを含める)」であった。残念ながら個人的な都合で4人だけしか聞けなかったが、 審査の結果、第一位は該当者が無く、二位には、尻上がりに素晴らしい歌唱を披露した原尚志(Bs)が入り、三位には大川信之(T)が入った。しかし、 やはり入賞候補の一人と思われた川久保博史(T)が、演奏時間不足のため失格となり、また、本選は聞けなかったが、予選で素晴らしい声を披露した 加藤かおり(S)が入選にとどまったのは残念であった。(2002.12.15)

追記I(第15回コンクール):
今回からコンクール会場が、旧バリオホールの取り壊しに伴い、文京区春日町交差点付近の尚美学園建物内の新「バリオホール」 に移された。今年は、一次予選(2003.11.28-29)の一部と、二次予選(2003.12.6)及び本選(2003.12.13)を聞いた。一次予選は、79人(S:60, A:10, T:5, B:4) で競われ、24人(S:18, A:3, T:2, B:1)が二次予選に進んだ。12月13日の本選に残ったのは、7人(S:5, A:1, T:1)であった。今回は、ソプラノに特に素晴らしい人 が多かったように思えたが、二次予選では、個人的に大変気に入ったソプラノ2-3人が落ちてしまい、予想外の1-2名が本選に残った。結局、 1位には昨年度演奏時間不足というハプニングで失格となった川久保博史(T)が入り、2位には在田恭子(A)、3位には岩崎由美恵(S)がほぼ順当に入ったが、 入選にとどまった中津川美穂子(S)の声も印象に残った。いずれもすばらしい声・歌唱力を持っており、オペラの舞台での活躍が期待される。(2004.1.8)

追記U(第16回コンクール)
今回は、1次予選(2004.12.3〜4)及び2次予選(2004.12.11)の2/3程度と、本選 (2004.12.18)を聴いた。1次予選出場者は70名(Soprano:48、Alto:13、Tenor:7、Bass:3)で、25名(S:18、A:3、T:2、B:2) が2次予選に進んだ。さらに、8名(S:8、T:1、B:1)が、本選に進んだ。今年も個人的な予想は、一部はずれ、素晴らしい と思った2人(泉貴子、渡辺新和)が、本選に残れなかった。本選に残ったソプラノ8人は、レベルが揃っており優劣を付け難かったが、 結局、一貫してロシアもので安定した歌唱を披露した服部麻実が1位となり、丹野茅鶴、小林桂尉子が2位、3位に入り、恩田千絵、上田由紀子 、國井陽子は「入選」となった。一方、男声陣は、佐々木優(B)が重厚で豊かな美声を生かしきれず、安富泰一郎(T)も美声と抜群の歌唱力を持ちながら 高音部での僅かなほころびのためか入選にとどまったのは残念であった。(2004,12,19)

追記V(第17回コンクール、2005)
今年は、第1次予選(2005.11.26-27)の80%近くを聴いただけで、第2次予選 (2005.12.3)及び本選(2005.12.10)を聴くことができなかった。今年は、 参加者が例年より多く、110名(Soprano:79、Alto:12、Tenor:12、Bass:7) であった。 2次予選には、25名(S:17、A:1、T:1、B:3)が残り、本選には、8名(S:6、B:2) が進んだ。2次予選進出者の大半は、個人的な予想とあまり違わなかったが、「フィデリオ」 のアリアを歌ったテノールのM、「夢遊病の娘」のアリアを歌ったソプラノのTなどは、 多少力が入り過ぎた感もあったが、声・歌唱力とも素晴らしく、本選進出確実かとさえ 思ったが、1次予選落ちは予想外でもあり、残念であった。結局、1位が森美代子(S)、 2位は該当者なし、3位に駒田敏章(Bs)、小川伸子(S)、大沼 徹(Bs)の3人が 入り、 メニッシュ 純子(S)、沼生 沙織(S)、醍醐 園佳(S)、桑田 葉子(S)の 4人が「入選」となった。また、東京都知事賞及び奥田良三賞は、森 美代子が受賞した。 (2005.12.14記)

追記W(第18回コンクール、2006)
今年は、1次予選の前半(2006.12.2)、第2次予選(2006.12.9)及び本選(2006.12.16) を聴いた。今回の1次予選参加者は、棄権者6名を除いて、75名(Soprano:59、Alto:7、Tenor:5、Bass:4)であった。 2次予選には、24名(S:18、A:3、T:2、B:1)が進み、さらに本選には8名(S:5、A:2、T:1)が 進んだ。2次予選では、超美声のソプラノM、迫力満点のバリトンGが、本選に進めなかった のは残念であった。また、本選では、平川千志保、渡邊公威、北村典子、在原泉あたりが入賞を 競うのではないかという個人的な予想はかなり大きく外れ、1位(及び都知事賞) :関森温子(S)、2位:渡邊公威(T)、3位:北村典子(A)及び松崎郁未(S)、入選:牛津佐和子(S) 、在原泉(A)、星川美保子(S)、平川千志保(S)となった。奥田良三賞は、牛津が獲得した。なお、 音楽ビヤプラザ「ライオン」でお馴染みの美声の渡邊公威が、国内では初めての大きな「勲章」を手に したのは、ご同慶の至りである。(2006.12.16記)

追記X(第19回コンクール、2007)
今年は、第1次予選(12月1-2日)の約70%(74名)、第2次予選(12月8日)のごく一部(5名)及び本選(12月15日)を聴いた。 今年の参加者は、103名(Soprano:72、Alto:18、Tenor:10、Bass:3、内合計6名欠場)であった。2次予選には、例年より若干多い 27名(S:14、A:6、T:5、B:2)が進み、さらに本選には8名(S:4、A:3、Br:1)が進んだ。例年通り、2次予選進出者は若干の例外を除いて 個人的な予想と大差がなかったが、最初の5人だけ聴いた2次予選では、素晴らしい2人のAltoが本選に残れなかったのは、意外でもあり、残念であった。 本選では、個人的な予想は、大きく外れ、1位(及び都知事賞):高橋 織子(S)、2位:石井 藍(A)、3位:小川 里美(S)となり、抜群の「声」 を持った渡邊 史(S)、木村 善明(Br)、鴫原 奈美(S)が入賞を逸し、入選どまりとなったのは残念であった。このほか、堀 万里絵(A.)及び 岩田 真奈(A) も入選となった。なお、奥田良三賞は、岩田が獲得した。(2007.12.15 記)

追記Y(第20回コンクール、2008)
このコンクールも今年20周年を迎えたが、応募者はほぼ例年並みの99名(内8名が欠席)であった。今年は、都合で第一次予選(12月6-7日)の一部(37名) と本選のみを聴く事ができた。12月13日の第二次予選には、22名(S:12、Ms:4、Br:4、Bs:2)が残った。また、この内8名(S:4、Ms:2、Br:1、Bs:1) が12月23日の本選に進んだ。審査の結果、第1位:真野路津紀(S)、第2位:富岡明子(Ms)、第3位:小林実佐子(S)、入選:盛田麻央(S)、杣友恵子(Ms)、 佐藤美里(S)、三浦正貴(Br)、倉本晋児(Bs)となった。なお、都知事賞及び20周年記念審査員賞は真野路津紀、奥田良三賞は、富岡明子が獲得した。 入賞の3人は、特に豊かな美声と優れた歌唱力を持っており、オペラの舞台等での活躍が期待される。1位の真野と2位の富岡は、1次予選及び本選で 聴くことができたが、個人的には富岡に軍配を上げたかった。(2008.12.23 )

なお、このコンクールが、諸般の事情から今年度で廃止となってしまったのは大変残念である。