(1)日本音楽コンクール
我が国で最も権威があり、楽壇への登竜門となっているのは、言うまでもなくNHKと毎日新聞社共催の「日本音楽コンクール」(通称:毎日コンクール)である。 入社5〜6年目の頃、勤務先の事務所のすぐ近くの日比谷公会堂で行われた同コンクールのピアノの本選会にピアノが上手に弾ける会社の先輩と出かけ、 コーヒー一杯を賭けて入賞者の予想をしたことがあった。現在もニューヨークを中心に活躍中の野島 稔が一位・大賞を取った年であり、 1,2位については2人の予想が一致したが、審査員の票も2つに別れた3位で勝負が決まり、幸い賭けに勝った事を想い出す。 昨秋、35年振りに、「日本音楽コンクール」のトランペットの二次予選の一部と声楽の本選会に出かけてみた。トランペットは、予選でもあったが技術的な差が顕著であり、 緊張のためか、音が抜けたり、技術的に破綻を来す人がかなり居たが、声楽部門は、十年程前から一年おきに歌曲とオペラに部門が分かれ、今回は歌曲の番であったが、 本選に残った10人(男7人、女3人)は過年度の入賞者も複数入っており、実力伯仲であった。 折角の機会なので、私自身も一応点数を付けながら聴いたが、今回は順位予想が大きく外れてしまい、少々ショックでもあった。私自身は、 歌唱力抜群で声も魅力的な宮本益光に最高点を付けたが、3位までの入賞を逸したのは意外でもあり、まことに残念であった。今年1位の砂川涼子も入選、3位、1位 と3年がかりであったこともあり、男性陣の中では一番の若手なので、捲土重来を期したい。今年は、オペラ部門の年でもあるので時間の許す範囲で予選からじっくり 聴いてみたいと思っている。
なお、審査結果に影響はなかったとは思うが、声楽部門の審査員11名の内女性が8名で女性に大きく偏っていたのは不自然に思えた。トランペットのように演奏家の 大半が男性の場合は別として、男女演奏家の数が拮抗している声楽の場合には、誤解を避けるためにも、審査員の男女比をできるだけ5:5に近づけるべきではなかろうか。 (2001/02)

追記 I(2001年度コンクール):
昨年は、声楽は本選のみであったが、今年(2001年、「オペラ・アリア」の年)は、一次及び二次予選の一部と本選を 聴くことができた。初めて聴く一次予選でまず驚いたのは、女性の多さである。138名の応募者の約85%が女性であった(聴くことが出来た33名は全て女性)。 「ライオン」や「トナカイ」でお馴染みの歌手も数名いたが、残念ながら本選には残れなかった。 予選で消えた人の中にも素晴らしい声を持った人が大勢おり、このコンクールのレベルの高さを再認識した。 昨年は本選に残った10名中7名が男性(しかもバリトンばかり)であったが、今年は本選に残った7名は、男性3名(テナー:2,バリトン:1)、 女性4名(ソプラノ:3,メゾソプラノ:1)であった。実力伯仲であったが、入賞を予想した3〜4人のうち木下美穂子、 山本美樹が1位と3位に入ったのはご同慶の至りである。しかし、大変魅力的な声で今後が楽しみなメゾ・ソプラノの山下牧子*が入賞を逸したのは残念 であった。なお、この人だけが、同じオペラからの2曲を歌ったが、少々工夫に欠けたのではなかろうか。(2001/11)
  *山下は、日生劇場の「カルメン(2002.11.24/オペラ教室一般公演)」では主役に抜擢され、見事な歌を披露した。(2002/11)

追記 II(2002年度コンクール):
今年は時間があったので、初めて一次予選(8/26−27)から全てを聴くことが 出来た。今年は、「歌曲」の番であったためか、参加者は比較的少なく、93名(男性:22名、女性:71名)が参加(申込:96名、欠席:3名)した。 一次予選の課題曲は、7分以内で自由曲2曲(異なった作曲家のもの)を歌うことであった。一次予選参加者には、他の国内コンクール(日本声楽コンクール等) の優勝・入賞者、過年度の当コンクール入選者などの実力者も多数含まれており、一次予選から激戦であったが、28名(内一名は、発表後失格)が二次予選に進んだ。 なお、一次予選にエントリーした96名が選んだ自由曲192曲は、大変バラエティーに富んでおり、言語としては、独、仏、伊、日、露、英の各国語がいりみだれた。 作曲者別に見ると、64人の作曲者の歌が取り上げられた。個別の作曲家別では、R.シュトラウスが最も多く(25人)、次いでシューベルト(15人)、 ウォルフ(13人)、R.シューマン(9人)、フォーレ(8人)の順であった。邦人作曲家では、山田耕筰、中田喜直が各4人であった。 二次予選(8/29)は、シードの1名(一昨年、第2位入賞)を加えた28 名(男性:7人、女性:21名)で行われた。二次予選では、 8分以内で自由曲1曲と課題曲(各自が事前に選定した5曲)から一曲(当日抽選)が歌われた。 この結果、10名が本選に進んだが、個人的には、 過去の当コンクール入選者で今回入賞を期待した2人(Br, Ms)が本選に残れなかったのは、意外であり、残念でもあった。 本選(10/23)は、坂本知亜紀(7月のトッパンホールでのデビュー・コンサートは、衝撃的であった。)が欠場し、9名で競われた。本選では、「自由に選曲し、 15分程度のプログラムを構成する(歌曲集の抜粋も可)。ただし、2カ国語以上にわたり、必ず日本歌曲を入れること」という規定に従って、各人が数曲歌ったが、 審査の結果、1位には増田弥生(Ms)、2位には北村さおり(S)、3位には薗田真木子(S)が入った。今回は、9名の内6名がソプラノで、 星を潰しあった感もあった。「入選」にとどまった山田英津子(S)、谷口伸(Br)もなかなか良かった。(2002.10.24)

追記 III(2003年度コンクール):
日本音楽コンクールは、今年から予選会の会場が、これまでのイイノホールから、我家から歩いて10分のトッパンホール (文京区水道)に移され、大変身近になったたため、声楽部門のほかピアノやヴァイオリンの予選会の一部にも出かけてみた。 ところで、声楽部門は、今年は「オペラ・アリア」の番であったこともあり、一次予選(9月6〜7日、自由曲1曲、8分以内)出場者は 例年より多い145名(内3名欠場)に達した。出場者には、過去の本コンクールでの入選者、他コンクールでの入賞・ 入選者や既にオペラの舞台で活躍中の若手歌手も数多く含まれており、なかなかの激戦であったが、26名(男性9名、女性17名) が二次予選(9月10日、自由曲1、選択曲1、合計14分以内)に進んだ。東京オペラシティ・コンサートホールで行われた本選 (10月22日、自由曲2曲)には、例年より少ない5名(男性1名、女性4名)が進んだ。本選で一位を争うものと思われた臼木あい (S)と山下牧子(MS)が、それぞれ一位と三位になり、二位には、中島郁子(MS)が入った。馬場 崇(T)と宮部小牧(S)は、 「入選」となった。 なお、今年から本選では、会場での聴衆の投票による「聴衆賞」が設けられたが、これも臼木あいが獲得した。彼女は、 まだ芸大の大学院生であるが、天与の豊かな美声と素晴らしい歌唱力を持っているので、近い将来、オペラの舞台での活躍が期待される。(2003.10.23)

追記IV (2004年度コンクール−第73回):
今年は、海外旅行のため予選(1次:8月26-27日、2次:8月29日)を聴くことができず、本選(10月19日)のみ聴いた。今年の声楽部門は、 歌曲の番であったこともあり、1次予選応募者は、94名(内1名が棄権)と少なかった。このうち25名が2次予選に進んだ。2次予選は、 入賞者再応募(シード)の山下牧子を加えた26名で競われたが、本選には9名(S:4, MS:1, Br:4) が進んだ。選考の結果、1位:田口智子(S)、 2位:安 堯燦(Br)、3位:浅井隆仁(Br)、山下牧子(Ms)、津国直樹(Br)、入選が奥村さゆり(S)、老田裕子(S)、大元和憲(B)、 渡邉真弓(S)となった。例年のごとく個人的に勝手に採点しながら聴いたが、豊かな美声と抜群の歌唱力を兼ね備えた韓国出身の 安 堯燦及び山下牧子の入賞は確信したが、あと一人は、ソプラノの田口智子、老田裕子及び渡邉真弓の3人から出るものと思った。 バリトンの浅井隆仁及び津国直樹もなかなか良かった。3位が3人という珍しい結果になったのは、審査員の評価も同点か僅差であった ためと思われる。11月9日の毎日新聞(朝刊)に公表される予定の審査員の講評と採点表を見るのが楽しみである。 なお、昨年から始まった「聴衆賞」は、今年は、5人の入賞者からではなく、入選の渡邉真弓が獲得した。(2004.10.20)

追記V (2005年度コンクール−第74回):
今年も旅行のため予選(1次:8月26-27日、2次:8月29日)を聴くことができず、本選(10月19日)のみ聴いた。 今年の声楽部門は、オペラ・アリアの番であったこともあり、1次予選応募者は、142名(内3名が棄権)と多かったようだ。 このうち25名が2次予選に進み、本選には6名が残った。2次予選で落ちた人達の中には、国内の主要コンクールの優勝者、入賞者 が数名入っており、今年の予選も激戦であったことがしのばれる。本選に進んだ6名(S:3、T:2、Br:1)のうち4名は、 過去の諸コンクールやオペラの舞台で聴いたことのある人達であった。選考の結果、1位:志田雄啓(T)、2位:大山亜紀子(S)、 3位:佐藤康子(S)、入選が初鹿野剛(Br)、谷村由美子(S)、松本薫平(T)となった。また、岩谷賞(聴衆賞)は、 強靭な美声で迫力満点の大山亜紀子が獲得した。個人的な予想とあまり違わない結果ではあったが、入選どまりであった 初鹿野剛の美声、歌唱力も素晴らしかった。(2005.10.20記)

追記Y(2006年度コンクール:第75回):
今年は、久し振りに第1次予選(前半の50名)から聴く事ができた。今年の声楽部門は、歌曲 の番であったためか、応募者は少なく、93名であった。しかしさすがに権威のあるこのコンクール 出場者は質が高く、なかなかの激戦であり、1次予選敗退者の中には、他の国内コンクール 優勝者や内外のコンクール入賞者、新国立劇場(小劇場)で主役を歌った人などかなり名の通った人達 も含まれていた。8月27、28日の予選の結果、26名が30日の2次予選に進んだ。個人的に高得点を つけたソプラノの1人を除いて、ほぼ予想どうりであった。結局、本選には9名(S:6, MS:1, Br:2) が進んだが、この2次予選でも国内コンクール入賞歴もある強靭な美声を持つバリトンKが、落ちて しまったのは残念であった。10月20日の本選の結果、第1位に望月友美(MS)、第2位に松本和子(S)及び メニッシュ純子(S)が入賞し、吉村華織(S)、大沼徹(Br)、佐藤容子(S)、阿部早希子(S)、 林満理子(S)、仲本博貴(Br)の6人が入選となった。美声の大沼徹及び林満理子にも入賞を期待したが、 残念であった。岩谷賞(聴衆賞)は、声は細いが抜群の歌唱力をもつ阿部早希子が選ばれた。なお、 このたび課題曲の詳細や歴代の入賞者一覧等のわかる 当コンクールのオフィシャルサイトがオープンした。(2006.10.21記)

  追記Z(2007年コンクール、第76回)
今年は、第1次予選(8月25-26日)の5割強(72名)、2次予選(8月30日)及び本選(10月24日)の全てを聴くことができた。今年はオペラ・アリアの年であったため、1次予選 応募者が多く、137名(内5名が棄権)であった。 1次予選通過者は26名であったが、1-2の例外を除いてほぼ予想通りであった。しかし、2次予選通過者7名(S:4, MS:2, T:1)については、個人的な予想と期待がかなり大きく 外れ、入賞圏とさえと思ったソプラノ2人が2次予選で落ちてしまった。なお、このコンクールの声楽部門では、本選では予選の点数加算を行わないことが明文化されている ため、選曲を含めた本選のウエイトがいっそう高くなる。三宅理恵(S)が病気で欠場したため、6人で競われた本選は、審査の結果、第1位:廣田美穂(S)、第2位:藤谷佳奈枝(S)、 第3位:小泉詠子(MS)、入選:土崎譲(T)、小野和歌子(MS)、佐藤奈加子(S)となった。廣田は、今年の「日伊声楽コンコルソ」にも優勝しているが、豊かで低音部もよく響く美声 の持主であり、オペラの舞台での活躍を期待したい。 まだ芸大大学院生の藤谷も豊かで甘く大変魅力的な声をしており、将来が楽しみである。また、男性で唯一人本選に出場した土崎は、予選の出来も素晴らしかったので、 入賞候補の1人と思えたが、本選で些細ながら素人にもわかる声の破綻があったためか、入選どまりとなった。一方、岩谷賞(聴衆賞)は、選曲もうまく、 盛り上がり、聴衆の喝采を浴びた藤谷佳奈枝が獲得した。(2007.10.25 記)

追記[(2008年コンクール、第77回)
今年は、第1次予選(9月2-3日)の80%弱(73名)、2次予選(9月7日)及び本選(10月24日)の全てを聴いた。今年は、「歌曲」の年であったため応募者 数は少なく、97名(内3名が棄権)であった。1次予選通過者は26名であったが、例年のことながら、"弾き歌い"した男性1人を除いて応募者の水準は高く、 他コンクールの入賞、入選者やすでにオペラの舞台で活躍している人の落選も散見された。特に豊かな美声バリトンの何人かが予想と期待に反して2次に進め なかった。なお、2次に進んだ3人のバリトンは、全て本選にまで進んだ。本選には、合計10名(S:7, Br:3)が進んだが、ソプラノのM、アルトのTなど 筆者の期待した2-3人の美声の歌手が予選落ちしてしまったのは残念であった。第2次予選が終わった段階では、バリトンの1-2名、ソプラノの市原あたりが、 入賞圏かなと個人的には思ったが、予選の点数が加算されず、全て自由曲の本選では、予選とは若干印象が異なる人も居た。結局、第1位:岩下晶子(S)、 第2位:市原愛(S)、第3位:馬原裕子(MS)、入選(出場順): 朴瑛実(S)、松原友(Br)、友清崇(Br)、原田圭(Br)、相田麻純(S)、山崎法子(S)、松井亜希(S)となった。 なお、岩谷賞(聴衆賞)は、松原友が獲得した。(2008.10.24 記)

追記\(2009年コンクール、第78回)
今年は、第1次予選(8月23-24日)及び2次予選(8月29日)の約半数と本選(10月23日)を聴いた。本年度はオペラ・アリア の年であったこともあり、第1次予選応募者数は159名(内3名が棄権)にも達した。例年の事ながら応募者の質も高く、他の主要声楽コンクールの上位入賞者 数名も1次予選で落とされてしまった。2次予選には、入賞者再応募の1名を加えた27名が出場し、審査の結果、7名(S:4、Br:2、Bs:1)が本選に進んだ。 筆者好みの超美声のソプラノ(1次予選で「椿姫」のアリアを歌ったY、2次予選でコロラトゥーラの難曲を続けて歌ったM等)が予選落ちしてしまった のは残念であった。本選に残った7人の内、予選で聴けたのは、斉木と桝の2人のみであったが、他の5人の内3人は、以前コンクールやオペラの舞台 で聴いたことのある優れた歌手であった。個人的には、桝貴志、斉木健詞、佐藤康子の3人が上位入賞を競うものと思ったが、審査の結果は、第1位:佐藤康子(S)、 第2位:首藤玲奈(S)、第3位:斉木健詞(Bs)、入選(演奏順): 桝貴志(Br)、谷原めぐみ(S)、岡昭宏(Br)、中江早希(S)となった。なお、岩谷賞(聴衆賞)は、 佐藤康子が獲得した。オペラの舞台ですでに活躍中であり、注目していた佐藤康子、斉木健詞の2人には、いっそうの発展を期待したい。美声の桝貴志及び中江早希 も素晴らしかった。首藤玲奈は強靭な高音の響きは良かったが、中低音部の声の透明感が今一に感じた。(2009.10.24 記)

追記](2010年コンクール、第79回)
今年は、第1次予選(9月13-14日)の半数と、2次予選(9月20日)及び本選(10月27日)を全て聴いた。本年度は「歌曲」の年としては例年 並みの94人(内3人が棄権)が応募した。この内31名が2次予選に進んだ。1次予選では、美声のバリトンS及びソプラノOが、また2次予選 では、総合的に筆者が1番気に入ったソプラノSが落ちてしまったのは残念であった。本選には、11名(S:7、Ms:2、T:1、Br:1)が進んだが、 審査の結果、第1位(及び聴衆賞):朴瑛実(S)、第2位:澤江衣里(S)、第3位:湯浅桃子(S)、入選:高島敦子(S)、吉村華織(S)、古橋郷平(T)、 高橋ちはる(MS)、栗原未和(S)、森寿美(Br)、平福知夏(S)、山田愛子(Ms)となった。入賞は、美声で歌唱力抜群の高島、森、朴及び迫力満点の 古橋あたりか競うのかと予想したが、朴以外は外れてしまった。長身で強靭な美声を持つ古橋には、オペラの舞台での活躍を期待したい。(2010.10.27 記)

追記XI(2011年コンクール、第80回)
今年は、オペラアリアの年であり、応募者も150名を越えた。第1次予選(9月12-13日)の約45%(69名)、2次予選(9月21日)の全て を聴いたが、本選(10月24日)は突然の入院のため、残念ながら聴けなかった。1次予選は、過去の東京音楽コンクール及びイタリア声楽コンコルソ 優勝者(大賞受賞者)3名が落ちてしまう激戦であったが、26名(S:8、Ms:5、T:8、Br:1、Bs:4)が2次予選に進んだ。今年は、本選出場者が例年 より少なく、5名(Ms:1、T:3、Bs:1)のみであったのは残念であるが、ジョン・ハオ以外はほぼ予想通りであった。テノールのS、メゾソプラノのA、 Kも本選に出場できる実力者と思われた。今年は、テノールの当り年であったが、今朝の毎日新聞によると2人のテノールが入賞した。すなわち、 第1位(及び聴衆賞):西村悟(T)、第2位:富岡明子(Ms)、第3位:安保克則(T)、入選:古橋郷平(T)、 ジョンハオとなった。(2011.10.25 記)

追記XU(2012年コンクール、第81回)
今年の応募者数は、「歌曲」の年としても少なく、85名であった。第一次予選は(9月16-17日)1日目の全員(47名)と2日目の午後 の出場者(19名)を聴いた。例年通り、他コンクールの入賞者を含む精鋭がそろっていたが、2次予選には、29名 (S:、Ms:、A:1、T:、Br:、)が進んだ。2次予選(9月27日)では、自由曲と課題曲の順序を間違えたり、指定外の課題曲を歌い始めたりしたため、 演奏が中断されるハプニングがあったが、幸い審査結果には影響しなかったようだ。本選には9名(S:3、Ms:2、A:1、T:2、Br:1)が進んだ。 審査の結果、1位は藤木大地、2位:澤山晶子、3位(及び聴衆賞):松原友、入賞(演奏順):石井藍(A)、吉村華織(S)、仲本博貴(Br)、盛田 麻央(S)、湯川亜也子(Ms)、八木寿子(Ms)となった。個人的には、バリトンとして何回も聴いているが、今回は(多分昨年あたりから)テノール として出場した松原友が一番気に入ったが残念ながら3位どまりであった。2位の澤山晶子は、3人のソプラノの中では一番の美声であり、 最後に歌ったのでいっそう印象が強かった。最も意外だったのは優勝した藤木大地である。確かにこの日の歌唱は、なかなか素晴らしかったが、 個人的にはカウンターテナーという声種が生理的に好きでないことや彼が普通のテノールだった頃の印象が希薄であったことなどから、入賞すら 予想していなかった。むしろ八木、仲本、石井あたりに入賞の期待を持った。(2012.10.24 記)

追記]V(2013年度コンクール、第82回)
今年は、海外旅行(オペラ・ツアー)と重なってしまったため、一次予選(9月17-18日、出場者:111名)を聴くことが出来ず、 2次予選と本選のみを聴いた。2次予選(9月27日)には、24名(S:13, Ms:2, T:6, Bs:1)が出場した。さすが2次予選とも なると実力伯仲であったが、審査の結果、6名(S:2, T:3, Br:1)が本選に進んだ。近年、コンクールでのテノールの活躍が 目立っているが、このコンクールでも3人が本選に進んだ。確かに、3人とも素晴らしい歌唱を披露したが、個人的には、 ソプラノでは「シャモニーのリンダ」のアリアを歌ったZ、「子供と魔法」ノアリアを歌ったM、「つばめ」のアリアを歌った Nの内の1〜2名も本選に残るものと予想したが、見事に外れてしまった。本選(10月28日)では、審査の結果、1位(及び聴衆 賞):竹多倫子(S)、2位:山本康寛(T)、3位:岡明宏(BR)、入選:城宏憲(T)、清水徹太郎(T)、伊藤晴(S)となった。 個人的には、2次予選と本選とでは印象が若干違い、順位の予想が困難であった。3人のテノールは本選でも皆素晴らしかったが、 ハイC連発の「連隊の娘」のアリアを見事に歌った山本のみが入賞した。(2013.10.28 記)

追記]W(2014年コンクール、第83回)
今年は、1次予選(9月1,2日)の後半(2日目)及び2次予選(9月11日)及び本選を聴いた。今年は、歌曲の年ではあったが、 応募者が何故か例年になく少なく、66名だけであった。2次予選は、22名で競われ、7名(S:3、Ms:1、T:2、Br:1)が本選に進んだ。 審査の結果、第1位:駒田敏章(Br)、第2位(及び聴衆賞):藤井玲南(S)、第3位:松原友(T)、入選:山田愛子(Ms)、尾籠光雄(T)、 前川依子(S)、谷原めぐみ(S)となった。駒田は、12年ほど前「芸大オペラ」で聴いた時以来大物バリトンとして期待していたが、 何故かコンクール運に恵まれなかった。今回、歌曲部門とはいえ、大きな勲章を得たが、やはりオペラの舞台での今後の活躍を期待したい。 海外のコンクールでの多くの入賞歴を持つ藤井の歌唱力は、さすがに抜群であった。松原は、2年前のこのコンクールでも3位入賞して いるが、2次予選の方が良かったように思える。なお、本選に限って言えば、個人的には、入賞を逸した山田愛子の豊麗な声が一番気に 入った。(2014.10.27 記)

追記]X(2015年コンクール、第84回)
今年(オペラ・アリア)は、1次予選(8月26,27日、出場者:129名)の一部(49人)、2次予選(8月31日)の午後の部(15人)及び 本選(10月23日)を聴いた。2次予選には、25名が進み、さらに6名(S:2、T:2、Br:1、Bs:1)が本選に進んだ。審査の結果、第1位 (及び聴衆賞):城宏憲(T)、第2位:工藤和真(T)、第3位:岡田昌子(S)、入選:糸数 知(S)、小林大祐(Br)、清水那由太(Bs)となった。 城は実績もあり、強靭な声を持っており、予想通りともいえるが、工藤の美声も大変魅力的である。岡田は広い声域の美声を持ち、 容姿も良いのでプリマドンナとしての大成を期待したい。糸数、小林、清水も大変立派な声を持っており、オペラの舞台での今後の活躍 に期待したい。(審査員の採点結果及び講評)(2015.10.23 記)

追記]Y(2016年コンクール、第85回)
今年は、1次予選及び2次予選の一部しか聴けなかった。審査の結果は、下記の通り。

第1位:村元 彩夏
第2位:寺田 功治
第3位:今野 沙知恵
入 選:中嶋 俊晴、宮下 大器、森 寿美

追記]Z(2017年コンクール、第86回)
今年は、1次予選(9月19日,20日)は、都合できけなかったが、2次予選(9月25日)及び本選(10月24日)を聴いた。今年は、オペラ・アリアの年であったので、 応募者は昨年の約2倍の138名であった。1次予選には、棄権の6人を除く132名が出場した。2次予選は25名で競われた結果、6名(S:4、T:1、Br:1)が本選に進ん だが、実力者がひしめき、他の大コンクール(静岡国際オペラコンクール、東京音楽コンクール等)の優勝者や入賞者数名も落ちてしまった。個人的には、ファンクラブ に入って応援している鈴木玲奈が出場したので、聴衆としても例年以上に熱が入ったが、期待に応え彼女が見事優勝を勝ち取った。35年ほど前、恩師がノーベル賞をとった 時同様大変うれしかった。2位の横山和美、3位の小林大祐及び入選の迫田美帆の美声も印象に残った。(2017.10.25 記)
審査の結果は下記の通り(審査員の採点結果及び講評)。

第1位:鈴木玲奈(S)
第2位(及び聴衆賞):横山和美(S)
第3位:小林大祐(Br)
入 選:迫田美帆(S)、今井文音(S)、市川浩平(T)

追記][:(2018年コンクール、第87回)
今年は、歌曲の年であったが、都合で本選しか聴けなかった。本選会のプログラムによると9月2〜3日の第1次予選の出場者は81人で このうちの21人が9月7日の第2次予選に進み、さらにこのうちの7名が10月25日の本選に進んだ。 7人の本選出場者(S:2、Ms:2、CT:1、T:1、Br:1)は、すでに内外の各種コンクールで優勝或いは上位入賞している人が多く、 優劣がつけ難い接戦であった。個人的には、砂田愛梨、森野美咲、黒田祐貴の3人の入賞を予想したが審査の結果は、下記の通りであり、砂田が入賞 を逸したのは残念であった。日本歌曲の歌詞がやや聞き取りにくかったせいかなどと考えてしまった(審査員の採点結果及び講評)。

第1位:森野美咲(S)
第2位(及び聴衆賞):黒田祐貴(Br)
第3位:小野綾香(Ms)
入 選:砂田愛梨(S)、宮下大器(T)、中嶋俊晴(CT)、松浦恵(Ms)

追記]\(2019年コンクール、第88回) 今年は、予選の約半数及び本選を聴いた。オペラ・アリアの年であったので、第1次予選(9月12〜13日)には116人が応募し、この 24人が2次予選(9月19日)に進んだ。さらにこのうちの6人(S、Ms、Br、Bs:各1人、T:2人)が本選(10月25日)に進んだ。この6人の 内の3人は、本選で初めて聴いた。6人はいずれも素晴らしい美声と見事な歌唱力を披露したが、小林啓倫と小川栞奈が優勝を競うかという個人的 な予想に反して審査の結果は、下記の通りになった。今後のオペラの舞台での活躍に期待したい(審査員の採点結果及び講評)。

第1位:小堀勇介(T)
第2位(及び聴衆賞):小川栞奈(S)
第3位:吉田一貴(T)
入 選:小林啓倫(Br)、益田早織(Ms)、奥秋大樹(Bs)

追記]](2020年コンクール、第89回)
今年のコンクールは、コロナ関連で第一次及び第二次予選が非公開となり、10月26日に開催された本選会もチケットを入手し損ねてしまった。 毎日新聞による審査結果は、下記のとおりであるが、新国立劇場オペラ研修所生の頃から際立っており、大いに期待していた小林啓倫(Br)が優勝 したのは、大変うれしかった。今後の一層の活躍をl期待したい。

第1位:小林啓倫(Br)
第2位(及び岩谷賞):谷垣千沙(S)
第3位:井上大聞(Br)
入 選:秋本悠希(Ms)、前川そふぃあ(Ms)、照屋篤紀(T)

追記XXT(2021年コンクール、第90回)
今年の声楽部門は(オペラ・アリア)のとしであり、2年振りに予選が一般公開されたが、一次予選は個人的な都合で、2次予選は当日券の発売がないことを当日に知り、結局、本選だけしか聴けなかった。本選会のプログラムによると第1次予選には、122名が 参加し、内24名が第2次予選に進み(1名棄権)、本選には6名(S:3、Ms:1、T:1、Bs:1)が進んだ。
実力者揃いの6名であったが、個人的には、長大な2曲のアリアを見事に歌い切った和田悠花と最も魅力的な声を持つ足立歌音が優勝を 競うものと思ったが、予想は大きく外れてしまった。一発勝負の声楽本選会では、選曲にも大きく左右されるが、 声種の異なる歌手の優劣比較はなかなか困難に感じた(審査員の採点結果及び講評)。

第1位:船越亜弥(S)
第2位:和田悠花(S)
第3位:石田滉(MS)
入選:奥秋大樹(Bs)、前川健生(T)、足立歌音(S)
岩谷賞(聴衆賞):足立歌音(S)

追記XXU(2022年コンクール、第91回)
今年は、個人的な都合で2次予選しかきけなかった。2次予選の課題曲(歌曲)は、 日、独、仏、伊、露、英米から各々6名、合計36名の作曲家の作品が指定された。審査の結果、 出場者21名のうち7名が本選に進んだ。種谷典子、小池優介、程 音聡 の3人は予想通りであったが、 中程で歌った素晴らしい2人のソプラノが予選落ちとなったのは残念であった。統計的にみると終盤 に歌った人の予選通過率が高いが、今年もこの傾向が強かった(審査員の採点結果及び講評)。

第1位:松原みなみ(S)
第2位:小池優介(Br)、種谷典子(S)、深瀬 廉(Br)
第3位:該当なし
入選:程 音聡(Br)、一條翠葉(Ms)、益田早織(S)
岩谷賞(聴衆賞):小池優介(Br)

追記XXV(2023年コンクール、第92回)
今年も2次予選だけ聞いたが、出場23名の半数近くは、本選に進んでほしいと思ったほどの実力者であったが、審査の結果、 5名が本選に進んだ。美声の益田早織(S)や迫力満点の井出壮志朗)Br)などの実力者が本選に進めなかったのは残念であった。 近年、本選出場者は5〜6名のことが多いが、7〜8名まで増やしても良いのではなかろうか((審査員の採点結果及び講評))。

第1位:山下裕賀(Ms)
第2位:徐 大愚(BsBr)
第3位:砂田愛梨(S)
入選:市川敏雅(Br)、奥秋大樹(Bs)
岩谷賞(聴衆賞):山下裕賀(Ms)