第21回 お結びネット:「講演会」

  

東京の街路樹〜身近な樹木園
2012年2月12日
公益社団法人 日本植物友の会 会員 荒木 成光
1.街路樹と並木
  「並木」は、「高木性の樹木が、列状に道路、堤防、水路などに沿って長く植えられているもの」をいう。  「街路樹」は、「並木」の一種であり、「市街地の道路に沿って植えられたもの」、すなわち「市街並木」を指す。  「街路樹」という「名称」は、1932年(昭和7年)10月の東京市訓令によって「道路樹木」といっていたものが改められた。街路樹には、高木(3m以上)ととも に中木(1〜3m)、低木(1m以下)を含めることが多い。しかし、高速道路沿いの街路樹は、「道路緑化樹」などと呼ばれ、別扱いにする場合が多い。東京都の街路樹 マップ「道路のみどり」では、街路樹を「道路用地内に列状に植栽される高木・中木」と定義している。法律的には、街路灯、ガードレール、道路標識などととも に「道路の付属物」と規定されている。なお、“街路樹”は、英語では“street tree”、中国語では“行道樹”または“道旁樹”と呼ばれている。

2.街路樹・並木の歴史
  世界で最も古い街路樹は、紀元前10世紀にインドのカルカッタからアフガニスタンの国境にかけてヒマラヤや山麓に造られた幹線道路であるグランド・ トランクだといわれている。また、紀元前6世紀のメソポタミアの宮殿内(マツ類、イタリアサイプレス等)や紀元前5世紀のギリシャ時代のスパルタの体育場の並木 (スズカケ)などの記録もある。
西欧において街路樹が本格的に都市に取り入れられるようになったのは、16世紀以降である。フランスでは、ヘンリー二世が1552年に法律によって主要道路に並木の 植栽を命じた記録があり、同時代のドイツでも幹線道路にポプラ類を植えさせたといわれる。
中国においては、街路樹について古くからの記録(「周礼」等)が残っており、紀元前5世紀(周時代)の首府洛陽に通じる街道には、多くの並木(桃李等)が植栽 されていた。秦の始皇帝(前3世紀)は、「将作大匠」という担当官職まで設けて、国道に青マツ、キリ、アズサ等を植えたといわれる。晋の時代(4世紀)には、 長安からの諸街道に、エンジュ、ヤナギを植えたという記録がある。
わが国における並木・街路樹の歴史については、「日本書紀」の記述などから4〜5世紀ころタチバナやクワの並木が存在していた模様であり、「万葉集」(7〜8世紀) には、街路樹としてのタチバナ、ヤナギ等が歌われているが、本格的な街路樹は、奈良時代に官命により五畿七道(東海道、東山道、北陸道、山陰道、南海道、西海道、 山陽道)の街道の両側に果樹を植え、「木陰を旅人の休息の場とし、木の実を食用とした」のが始まりとされている。その後も、天正3年(1575年)織田信長が4人の 道奉行を任命し、東海、東山の両街道にマツ、ヤナギを植えさせたこと、加藤清正が豊後道の路傍にマツを、熊本から阿蘇神社に至る十数里にスギを植えたことなどが 記録に残っている。江戸時代に入って、徳川家康は五街道(東海道、中仙道、奥州道、甲州道、日光街道)とこれに準ずる脇街道にマツ、スギを植栽している。
一方、「街路樹」は、近代に入ってから,人口過密な都市の景観的魅力を向上させる為に発達したものであり,参道並木,街道並木などとは区別されている。近代街路樹 の始まりと言われている横浜(関内:馬車道)には、1867年(慶応3年)に馬車道の各商店が競って柳と松を連植したとのことで、 「近代街路樹発祥の地」という碑が立っている。一方、東京では、明治維新後に始まった近代都市 計画により、1874年(明治7年)に東京の銀座に植えられたマツ、サクラが最初とされている。

3.街路樹の効用

(1)都市景観の美化:左右対称の直線的な美、建物との組合せ
(2)緑陰の提供:大地から吸い上げた水を葉の気孔から放出
   一般に寒冷地では、冬季に歩道(歩行者)、建物の日照を確保するため、落葉樹が好まれる一方、温暖地では通年の庇として、常緑樹が好まれる。
(3)防災機能:水蒸気放出による延焼防止
(4)精神的な安らぎ提供:緑による精神的安らぎ
(5)大気汚染物質の吸着:塵埃の吸着、汚染ガスの吸収・吸着
   福岡市での測定結果によると、単葉の大気汚染ガス吸収量は、常緑樹よりも落葉樹の方が全般的に高いが、交通量が多い道路の場合には、冬にも葉をつけている 常緑樹主体の方が良いと考えられる。( (http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/25239/1/24-p67.pdf)
(6)緩衝作用や遮光:中央分離帯による遮光等

4.樹種の多様化   同一種の樹木を広範囲に植えた場合、下記の例のように病虫害によって一斉に枯れてしまうことがあるので、多様な樹種の街路樹を選定することが望まれる。
(1)1800年代に米国Washington D.C.等において広く植えられていたAmerican elmがDutch elm 病に壊滅的な被害を蒙った。 (http://landscaping.about.com/cs/treesshrubs/a/american_elms.htm)
(2)米国中西部で多く植えられていたAustrian pineがtip blight(ディプロディア) 病によって枯死してしまった。
(3)1970年代及び1980年代に、New Jersey及び Long Islandの海岸に沿って植えられていたクロマツが一斉に枯死した。

5.樹種の変遷と地域性 ( http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0149pdf/ks014910.pdf)
(1)

全国樹種別高木本数(国土交通省、都道府県、市町村、地方道路公社の管理する道路)
(2)全国の樹種別高木本数上位10種の構成比(国土交通省、都道府県、市町村、地方道路公社の管理する道路) 

             樹種名    本数 構成比(%)   イチョウ     618,516 9.1            サクラ類     520,491   7.6            ケヤキ     475,574    7.0  ハナミズキ    342,885     5.1 トウカエデ     330,054     4.9 クスノキ     286,166     4.2   プラタナス類   205,010    3.0   ナナカマド    196,214     2.9   サザンカ類    176,188    2.6   モミジバフウ   149,401     2.2   その他 3,485,251 51.4  合 計    6,785,750 100

6.東京の街路樹

(1)植樹本数の変遷

(2)街路樹倍増計画
1996年5月に東京都内の環状7号線等幹線道路周辺に住む住民が提訴した東京大気汚染訴訟は。2002年10月、東京地方裁判所は原告の喘息患者の一部に被害を認め、国、東京都、日本道路公団に損害賠償責任を認めた。原告被告双方は判決を不服として東京高等裁判所に控訴したが、2007年に救済制度の創設などの「和解条項」の下に和解が成立した。 <<和解条項>> 一審被告東京都の対策
 <沿道の道路環境対策>
   ・ 一審被告東京都は、既存道路の植樹の充実及び道路拡幅に合わせた植樹帯の整備に努める。
東京都では、上記の和解条項に関連して街路樹倍増計画(10年間で48万本→100万本)がH20年度から実施に移され、高木間への中木植栽等が始められた。
(3)マイツリー(わたしの木)計画 (http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/kouen/my_tree/) H20年度から街路樹の植栽推進のための募金(高木:5万円、中木:1万円)を目的として、「緑の東京募金」のメニューの一つとしてはじめられた。
この事業参加者(寄付者)には、都で植栽した街路樹に、氏名やメッセージを書き込んだ「樹名プレート」の取付けという特典がある。

≪参 考≫

(1)世界の四大街路樹:プラタナス、マロニエ、ボダイジュ、ニレ
(2)世界の三大花木 :カエンボク、ジャカランダ、ホウオウボク
(3)ニューヨーク市の街路樹

  @  London planetree/Platanus × acerifolia(モミジバスズカケ): 15.3%  
  A Norway maple/Acer platanoides(ノールウェーカエデ):14.1%  
  B Callery pear/Pyrus calleryana(マメナシ):10.9%  
  C Honeylocust/Gleditsia triacanthos(アメリカサイカチ):8.9%  
  D Pin oak/Quercus palustri(ピンオーク、アメリカガシワ):7.5%
  E Littleleaf linden/Tilia cordata (コバノシナノキ、フユボダイジュ):4.7%
  F Green ash/Fraxinus pennsylvanica (ペンシルバニアトネリコ):3.5%
  G Red maple/Acer rubrum(アメリカハナノキ):3.5%
  H Silver maple/Acer saccharinum(ギンヨウカエデ):3.2%
  I Ginkgo, maidenhair tree/Ginkgo biloba(イチョウ):2.8%
@ イチョウ(Ginkgo, maidenhair tree/Ginkgo biloba港区神宮外苑(青山通りから絵画館方向)にて。
イチョウ科イチョウ属の落葉高木。イチョウは「東京都の木」であり、植樹本数も第一位である。 この神宮外苑のイチョ ウ並木は、苗木の段階から樹形の良いものを選定し、その後も適切な剪定を施して現在のような 見事な樹形に仕上げたとのことである。 本数は、150本足らずであるが、歩道の両サイド、合 計4列の巨木(樹齢約105年)の並木は、都内一番の景観となっている。なお、イチョウは、東京の他大阪、神奈川でも県木に指定されている。 (学名の由来:http://www.xs4all.nl/~kwanten/name.htm)、映像:http://www.youtube.com/watch?v=MkZvVIgThP0)
A ハナミズキ(Flowering dogwood/Cornus florida 千代田区九段北(靖国神社裏、白百合学園付近)にて。
ミズキ科ヤマボウシ属の落葉小高木。アメリカヤマボウシが正式な和名。 英名は、樹皮から犬の皮膚病の薬 が採れることから付けられたと言われる。花、紅葉、 及び実(赤) が楽しめることから人気があり、最近急速に本数が増えている模様。しかし、成長が遅く、また、 樹形はあまりきれいだとはいえない。植樹本数は、1992年の6位から順位を4つ上げ2位になった。
B サクラ類(Cherry tree) ソメイヨシノ(Prunus yedoensis)  文京区小石川四丁目(播磨坂桜並木)にて。
バラ科サクラ属の落葉高木。 130本ほどしかないが文京区自慢の桜並木で、中央分離帯を含めて3列あるためなかなか見事である。4月上旬の”桜まつり”期間中には、歩行者 天国の日もあり、 屋台やブラスバンドが出たりしてすこぶるにぎやかである。サクラ類は国内で200種以上あるが、街路樹として用いられる のはソメイヨシノ及び 八重のサトザクラ が圧倒的に多い。サトザクラ( Prunus lannesiana)は、ソメイ ヨシノより1〜2週間 遅れて咲くが、色も濃いものが多く葉の緑との対比が美しい。街路樹としては、ソメイヨシノが 圧倒的に多いが、 赤坂見附付近には、サトザクラが多く植えられている。このほか、数は少ないが、シダレザクラ(渋谷区広尾-明治通り等)、 オオシマザクラ(江戸川区清新町等) も植えられている。珍しいものでは、匂い桜の代表的品種であるスルガダイニオイ( 駿河台匂)の街路樹 (千代田区駿河台三丁目-駿河台道灌道)もある。
C トウカエデ(Trident maple/Acer buergerianum) 新宿区市谷本村町付近(外堀通り、市谷駅-四谷駅間)にて。
カエデ科カエデ属の落葉高木。トウカエデ(唐楓)の名が示すように、中国東南部原産に木であり、日本には18世紀はじめに入って来たらしい。 カエデも種類の多い樹木であるが、街路樹としては トウカエデが 圧倒的に多い。植樹数も都内では、第4位となっている。樹勢が盛んな点が買われたもの と思われるが、幹は汚く、 都内では余りきれいに紅葉しない。
D プラタナス類(Plane tree, Sycamore) モミジバスズカケ(London plane/Platanus acerifolia) 新宿区弁天町付近(外苑東通り)にて。
スズカケ科スズカケ属の落葉高木。 通常、プラタナスと呼ばれているが、街路樹に用いられているのは大部分が、 「スズカケノキ(P.orientalis)」と「アメリカスズカケノキ( P. occidentalis」」 との交雑種である「モミジバスズカケ」である。 なお、プラタナスは、剪定に強いこともあり、 様々な樹形が見かけられる。 日本では、数mの主幹と若干の側枝を残して坊主に近く 強い剪定をする場合が多い。昔スイスのレマン湖畔で観たプラタナスは、 上部がジャングルジムのように見事に剪定されていた。また、ローマでは、地上2-3m位の所から、 若木の際に矯正したりして3本にして伸ばしているようである。
E  ケヤキ(Zelkova/Zelkova serrata) 渋谷区原宿駅付近(表参道)にて。
ニレ科ケヤキ属の落葉高木。ケヤキは、末広がりの美しい樹形が特徴的であり、東京 以外でも 街路樹や大学構内の並木などとして広く採用されている。 この表参道の並木は、冬季の電燭が見事であったが、1999年にいったん中止となったが、数年前にLEDによる電飾が復活した。 府中馬場大門のケヤキ並木(国指定天然記念物)や小平駅前 から霊園にかけてのケヤキ並木は、さらに巨木で迫力がある。 東京ドーム横のライトアップしたケヤキも大木ではないが、幻想的で美しい。 ケヤキは、埼玉、福島、宮城の県木になっている。 なお、「東京の木」の選定の際 に、イチョウに 破れ惜しくも2位になったとのことである(3位は、ソメイヨシノ)。
F  クスノキ(Camphor tree/Cinnamomum camphora) 千代田区霞ヶ関桜田通り(警視庁前)にて。
 クスノキ科クスノキ属の常緑高木。クスノキは、冬も明るさを失わない常緑樹 で形も良 いため、かなり多く植えられている。七色に輝く4月 の新緑の季節が最もが素晴らし い。英名は、葉や小枝から樟脳が抽出されることに由来。この桜田通りの並木は、公道に面した警 視庁の植木 というべきかもしれないが、巨木を九州から移植 したもので大変立派である。街路樹 ではないが、 東大安田講堂前や文京区の旧「楠亭」など都内にもクスノキの巨木は 多くある。秋に、直径7-8mm程度の青緑色で球形の果実が紫黒色に熟す。 鳥が食べて種子散布に与るが、人間の食用には適さない。なお、クスノキは、 兵庫、佐賀、鹿児島、及び熊本の県木となっている。
G マテバシイ(Japanese stone oak/Pasania edulis又はLithocarpus edulis) 文京区本郷六丁目言問通りにて。
ブナ科マテバシイ属の常緑高木。枝別れが多く、密生するので昔から防風・防火用に用いられてきたが、 公害にも強く、 街路樹としても広く用いられている。実はタンニンをあまり含まないため、アク抜きを必要とせず、そのまま炒って食用になる。粉状に粉砕してクッキーの 生地に混ぜて「縄文時代のクッキー」として味わうこともできる。なお、「マテバシイ」の名の由来は、葉型が「マテガイ(馬刀貝)」 に似ているからとの説がある。
H ヤマモモ(Wax myrtle/Myrica rubra) 千代田区神田駿河台(JRお茶の水駅/聖橋口付近)にて。
ヤマモモ科ヤマモモ属の常緑高木。田舎で暮らした少年時代、山歩きをして 「ヤマグワ」とともに食べた「ヤマモモ」の暗赤色の実の甘酸っぱい独特の味が懐かしく思い出される。 葉が良く繁り、 樹形や幹も美しく、街路樹に適した樹である。なお、ヤマモモは、徳島の県木になっている。
I エンジュ類 エンジュ (Japanese pagoda tree or Chinese scholar tree/Sophora japonica ) 港区芝公園付近(日比谷通り)にて。
マメ科クララ属の落葉高木。学名、普通名とも「日本の」という名がついているが、中国原産の木である。古来より街路樹や庭木 として植えられている。 7〜8月に蝶形の白い花が多数咲く。蜂などの重要な蜜源植物ともなっている。また、マメ科であるため、肉質で数珠状にくびれた 果実が垂れ て付く。花期が異なる他は、ニセアカシアに良く似ている。なお、漢方で は、つぼみは止血薬に、 果実は痔の薬に用いられる。また、つぼみ(黄色)や樹皮(栗色)は 染料としても用 いることが出来る。
J コブシ(Kobus magnolia/Magnolia kobus 江戸川区一之江にて。
 モクレン科モクレン属の落葉高木。サクラより若干早く、葉に先だって「ハクモクレン」とほぼ同時期 に大型(5から10cm)の白い花を咲かせるので、 良く目立つ。和名の由来には諸説が あるが、果実が拳の形に 似ているところから付けられたとする説が有力。実がピリ辛いので「辛夷」と表記されることもある。 植樹本数 は意外に多く、都心部でも銀座みゆき通りなどにも植えられている。 1992年の17位から順位を6つ上げ11位になった。
K ユリノキ(Tulip tree/Liriodendron tulipifera) モクレン科モクレン属の落葉高木。葉の形からハンテンボク(半纏木)とも呼ばれる。15年ほど経って咲き始める花は可憐であるが、 樹冠近くに咲き、また黄緑色であるため 目立ちにくい。巨木になり、樹形、葉、幹もきれいなためかなり多く植えられているが、 今後更に順位を上げて行くのではなかろうか。英名の「チュ-リップ」は、勿論その花 の形に由来しているが、和名の「ユリ」 より適切に思える。北米産の木であるが、新宿御苑 や小石川植物園には明治10年頃初めて日本で植えられたユリノキの巨木がある。 上向きに咲く花の底には、甘い蜜かなり多量に分泌されるため、養蜂の目的で植樹されることもあるようだ。 ユリノキは、また、イチョウ、メタセコイア等とともに「生きている化石」とも言われる。
L モミジバフウ(Sweetgum/Liquidambar styraciflua) 板橋区高島平三丁目(赤塚公園付近)にて。
葉の形や見事な紅葉からカエデ科の木と間違えられることもあるが、モミジバフウは マンサク科の木である。葉が、対生(対称に 付く)であるカエデと異なり、互生(互い違いに付く)であることで 見分けられる。 英名及び学名は、樹皮から香りの良い樹脂が採れることに由来している。「フウ」の仲間 のうち通常植えられているのは、この「モミジバフウ」である。 樹形、幹及び葉ともきれいであり、今後植樹本数の増加が予想される。なお、渋谷区世田谷通り及び新宿区大久保 通りの中国原産の「フウ(タイワンフウ):Liquidambar formosana」の並木は、本数も多く、かなり良い景観となっている。
M サルスベリ (Crape myrtle/Lagerstroemia indica) 板橋区高島平四丁目付近にて。
ミソハギ科サルスベリ属の落葉高木。原産地は、中国南部。キョウチクトウ(夾竹桃)とともに夏を代表する花である。 樹皮がはがれた後の幹が ツルツルで文字通り猿も滑りそうというところから、和名が付けられている。 7〜9月に花が次々に咲くので「百日紅(ヒャクジツコウ)」とも呼ばれる。材質が硬いため、 線路の枕木などに利用される。 高島平の並木は1km 以上にわたり、しかも紅白の花が入り交って植えられておりなかなか見事である。1992年から順位を5つ上げ14位になった。
N ツバキ類(Common camellia/Camerllia japonica  左:伊豆大島(波浮港付近)、右:港区海岸一丁目(竹芝桟橋付近)
 ツバキ科ツバキ属の常緑高木。ツバキといえばまず伊豆大島が思い浮かぶ。現実に、大島の波浮港付近の 道路には集中して植えられている。また、大島には樹齢200〜400年の大木がアーチを形成している「椿トンネル」などもある。区部でも世田谷や杉並等に散在して植えられており、 植樹総数ではむしろ区部のほうが多いようであり、都内の植樹順位も現在15位となっている。なお、大島には数百種のツバキを集めた広大な「大島公園」があり、一見の価値はある。
O シラカシ(Shirakashi oak/Quercus myrsinaefolia) 港区新橋六丁目(日本赤十字本社付近)にて。
 ブナ科コナラ属の常緑高木。福島県以南の本州、四国、九州に広く分布している。関東では、カシといえば普通シラカシを指す程 である。 江戸時代から「屋敷林(生垣)」として用いられてきた。ゴルフ場などにも多数植えられている。葉の色が明るく、樹形も良いので、 クスノキ同様常緑の街路樹として も好まれている。シラカシの名の由来は、葉の裏側がウラジロガシのように白いためではなく、 材がアカガシに比べ赤くない事によると言われている。
P トチノキ(Horse chestnut/Aeaculus turbinata 千代田区霞ヶ関(桜田通り)にて。
 トチノキ科トチノキ属の落葉高木。俗に、トチノキ属の仏名のマロニエとしても知られている(マロニエの学名:セイヨウトチノキ/Aesculus hippocastanum)。 掌状の複葉を持つ。 花は大型で美しく、白色でやや紅色を帯び、蜜を多く分泌するので花時には蜜蜂が群集することがある。街路樹としては、セイヨウトチノキとアカバナアメリカトチノキ (Aesculus .pavia)との雑種であるベニバナトチノキ(Aesculus carnea)もかなり広く用いられている。花は見事であるが、 夏季の旱魃やウドンコ病等によって葉枯れし、落葉しやすい欠点 もある。果実は、食用になる。この桜田通りの並木は、木も大きく都内一の景観であろう。 なお、トチノキは、栃木の県木になっている。
Q アオギリ (Phoenix-tree又はChinese parasoltree/Firmiana platanifolia又はFirmiana simplex) 港区 北青山(外苑西通り地下鉄外苑前付近)にて。
「アオギリ」は、暖地に自生する中国南部原産の落葉高木で、樹皮が緑色で葉の形がキリ(桐)に似ている ことからアオギリ(青桐) と名付けられたようである。しかし、和名からの連想と異なり、「アオギリ」は、 材がタンスや下駄に用いられる「キリ(こまのはぐさ科、キリ属)」とは全く別種 で、(アオギリ科、 アオギリ属 )の落葉高木であるが、「キリ」と名のつく街路樹の中では圧倒的に多い。 都内でも5,000本以上が植えられている。秋には、直径1cm程の種子がむき出しで ぶら下がるが、 この種子は タンパク質や脂肪を多く含み、食用となる。またコーヒーの代用にもなるようだ。因 みに、種子がチョコレート の原料となるカカオ(Theobroma cacao)やコーラの原料となる コラノキ (cola nitida)も同じアオギリ科に属する。 「桐一葉落ちて天下の秋を知る」の桐もアオギリらしいとのことである。
R ビロウ(Chinese fan palm/ Livistona chinensis ヤシ科の常緑高木。ビロウの名はビンロウ(檳榔)と混同されたものと思われるが、ビンロウとは別種である。葉は掌状に広がる。ワシントンヤシにも似るが、葉先が細かく裂けて垂れ下がる のが特徴である。東アジアの亜熱帯(中国南部、台湾、南西諸島、九州と四国南部)の海岸付近に自生し、北限は福岡県宗像市の沖ノ島。都内の植樹数は5,000本を超えるが、 23区内はゼロで、全数が伊豆諸島にある。 なお、小笠原には固有種のオガサワラビロウがある。
S アキニレ(Chinese elm/Ulmus parvifolia) 板橋区西台(城山通り)にて。
同じニレ科ニレ属のハルニレが北海道などの寒地に多く見られるのに対し、アキニレは本州中部以西の暖地に育つ樹であり、葉は小 型で鋸歯がある。文字通り、 初秋に花と実を付けるのでアキニレと名付けられた。落葉高木と分類され ているが、元来、ハルニレのような大木になる樹ではなく、街路樹としての歴史も浅いせいか都内では 見事な並木と いえるものはなさそうである。

<サザンカ類>(Sasanqua camellia/Camellia sasanqua
文京区春日一丁目(春日通り、中央大学工学部付近)にて。
     ツバキ科ツバキ属の常緑小高木。サザンカは常緑樹で、花の少ない初冬に赤や白のきれいな花を数多く付け、花期もながいことが好まれ最近植樹本数が急増しているようである。なお、サザンカ(山茶花)は、江戸前期に出版されたいけばなや園芸の本に記録されているが、観賞用として庭園に植えられるようになったのは、 室町時代頃と推定されているようである。

<オリーブ> (Olive/Olea europaea)
港区芝浦三丁目付近にて
モクセイ科オリーブ属の常緑小高木。オリーブ は、シリアとトルコに野生していたものが紀元前3000年頃に栽培される ようになり、西方へ移出されたという説が有力である。 今日でもオリーブは、地中海 地域の独占的な産物となっており、スペイン、イタリア、 ギリシャの3国で世界の生産量の70%以上を生産している。 日本にオリーブが入ったのは、幕末の1863年が最初であるが、これは 生育せず、1874年の和歌山、1908年の小豆島のものが導入に成功した。 街路樹としてのオリーブは、小豆島は別として、あまり多くはないようである。写真 の田町の街路樹は、小豆島の私営「オリーブ園」から 譲渡されたものだそうだが、 数も50本程度あり、実も良くついている。オリーブの 実はピクルスとして食用にも供されるが、フランス、 スペインでは緑色のものを漬け、アメリカ、イタリアでは紫黒色 になったものを漬けるのが普通のようである。 オリーブは、香川の県木になっている。なお、オリーブについては、香川県農業試験場小豆分場の 「オリーブいろいろ」が詳しい。

<カリン>(Chinese quince/Pseudocydonia sinensis
港区西麻布一丁目(米軍施設前)にて
  バラ科ボケ属の落葉高木で、原産地は中国。庭木や盆栽として広く栽植されているが、 少数ながら街路樹としても用いられている。ピンクの花は可憐であるが、小さく(直径3cm 位)目立たない。 黄色の果実は10〜15cmにもなり、数も多いが、堅くて酸味や渋みが強いため、生食には適せず、煮て砂糖漬けにして食用に供したり、 果実酒用として利用する。また、薄切りにして陰干ししたものは、「咳止め」等として用いられる。          また、この果実は、 芳香を発するため、古来室内において姿と香を楽しまれて来たようである。欧米でも、食用には供しないが、 やはり皿に盛り芳香を楽しんでいる ようである。一方、樹皮は緑がかった褐色で、老木になるとうろこ状にはがれ、まだらになる。カリンの材は、辺材が淡赤色で心材は暗紅褐色をしていて、 非常に堅硬緻密でしかも色調光沢ともに美しいので床柱、家具、杖、彫刻材料などに用いられているようだ。 なお、東武線竹ノ塚駅東口の商店街では、 街路樹としてカリンを植え、「カリン・ロード」と名付けている。

<ナツツバキ> Japanese stewartia/Stewartia pseudo-camellia
千代田区四番町、市ヶ谷駅付近(日本テレビ通り)
  ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。地方によっては、「サルスベリ」 とも呼ばれているようである。また、「シャラノキ」という別名をもっているが、これは「ハクウンボク」 同様インドの聖木 「沙羅双樹(熱帯雨林に分布するフタバガキ科の樹木)」に見立てて寺院などに植えられているためだと思われる。ナツツバキは、 日本原産の樹木で、福島、 新潟県以南の本州、四国、九州、対馬の温帯山地に分布する。6,7月に新しい枝の葉腋に白椿のような 5弁の大きな花を付ける。花のあとには比較的大きな実がつく。 また、成長とともに樹皮が 斑点状に剥げ落ち、つるつるになる。この赤茶色の幹は、茶室の床柱などに用いられる。

<ナンキンハゼ> (Chinese tallow tree/Sapium sebiferum
江東区有明 国際展示場付近にて
ナンキンハゼは、トウダイグサ科シラキ属の落葉高木であり、原産地は中国である。江戸時代に長崎から全国に伝わったと言われており、 また、街路樹に採用したのも長崎が 初めて(戦後)とのことである。秋の紅葉が大変見事であり、樹形、葉形も美しい。 現在は長崎市の「市の木」に指定されている。また、英名が示すとおり、白っぽい種皮 には蝋分が多く含まれている。

<ハクウンボク> (Fragrant snowbell/Styrax obassia
杉並区永福三丁目、井の頭線「永福町駅」近くの井の頭通りにて
   和名のハクウンボク(白雲木)は、 雲がたなびく様に白い総状の花を付ける事から命名された。 オオバジシャ(エゴノキの別名はチシャ) とも呼ばれるが、学名のobassiaは、これがなまったものと言われている (Styrax は storax:安息香を産出する樹木の古代ギリシャ名)。 エゴノキ科エゴノキ属の落葉小高木であり、 東京では5月の連休前後に花を付ける。元来、ハクウンボクは、釈迦がその木の下で没したことで有名な 沙羅双樹(インドに多く 生育するフタバガキ科の亜熱帯性の木で、日本では植物園等の温室でしか 見られない。学名:Shores robusta)に見立てて寺院に植えられていることが多い木であり、 街路樹としては珍しい。材は淡い黄白色、緻密でろくろ細工に使われ、杓子、こけしなどを作る。 天童市では将棋の駒の材料に利用しているとのことである。

<ハクモクレン> (Yulan magnolia/Magnolia denudata)
港区南麻布四丁目にて
中国原産のモクレン科モクレン属の落葉高木。略してハクレンとも呼ばれる。同属のコブシ同様、 3月にソメイヨシノより少し早く咲く。 花は文字通り白色で、花径は 12〜15cm、花弁は倒卵形で多くは6枚であるが、花弁に似た顎が3枚あるので一見すると9枚前後に見える。 葉は、長さ8〜15cm、幅4〜8cm、広卵形。園芸樹として 単独に植えられる場合が多い。街路樹としても高崎市、 浜松市を始めとして多くの都市で採用されている。東京ではコブシに比べるとハクモクレンの街路樹は、現状では格段に 少ないが、 花が美しいので今後増加することが期待される。
一方、紫色の花が美しく庭木として広く利用されている落葉低木のモクレン(別名:シモクレン)とハクモクレンとの雑種で あるマグノリア・ソウランギアナ (Magnolia soulangiana)、別名サラサモクレンは、ハクモクレンに似たピンクの大型の花が美しく、 高木でもあるのでこの写真(千代田区西神田三丁目、 西神田ランプ入口付近)のように街路樹にも利用されている。

<ヒトツバタゴ> (Snow flower/Chionanthus retusus
小金井市貫井北町にて
    小金井市は、 市のホームページ でもPRしているようにヒトツバタゴやハンカチの木などの珍しい木も街路樹として使用している。数年前銀座みゆき通りのコブシがそっくりヒトツバタゴに植え替えられた。 ヒトツバタゴは、モクセイ科、ヒトツバタゴ属の落葉高木(葉は対生)で、 俗に「ナンジャモンジャ」と呼ばれている。通常は、植物園等でしか見られない珍しい木で、 英名及び学名の通り満開時にはまさに木に雪が積もったように見える。江戸時代の尾張(愛知県) の本草学者 水谷豊文が発見した際にトネリコ(方言では、タゴノキ) の仲間と判断し、単葉のタゴ 、 即ちヒトツバタゴと名付けたとのことである。このためか名古屋では、現在でも街路樹としてかなり多く 用いられているようだ。また、 中国では、若葉を摘んで茶の代用にするとも言われている。なお、広辞苑の説明を借りると、「なんじゃもんじゃ」は、「関東地方で、その地方には見られない 種類の大木 を指していう称。千葉県香取郡神崎(コウサキ)町神崎神社境内のもの(くすのき)、 東京都明治神宮外苑のもの(ひとつばたご)が名高く、その他筑波山のもの(あぶらちゃん)、 山梨県鶯宿峠のもの(りょうめんひのき)などが知名。あんにゃもんにゃ。」

<ヒマラヤスギ> (Himalayan ceder/Cedrus deodara
府中市日吉 東京競馬場内にて
ヒマラヤ北西部を原産地にもつマツ科ヒマラヤスギ属の常緑高木であり、ヒマラヤシーダーとも呼ばれる。 (シーダーと呼ばれる仲間は、元来”神聖な木”とみなされている ようである。)枝が水平に張り、 先端がやや下垂したバランスのよい端正な樹形をもっている。わが国には、明治12年(1879)頃渡来したようだが、 幹や葉も美しいので、 公園や社寺の境内などに植えられることが多い。しかし、 堂々とした樹形に似合わず、根が浅く風に弱いためか、街路樹として用いられることは割合少ない。 20〜30年前、 強風によって日比谷公園内のヒマラヤスギの多くが、選択的に倒れてしまったのを目撃したこともある。また、大気汚染にも弱い。 府中の東京競馬場裏の 構内道路(中央高速沿い)の並木(写真右) は数も多く、大変見事である。

<ホルトノキ> (Elaeocarpus sylvestris
港区台場(フジテレビ本社、お台場海浜公園付近にて)
ホルトノキ科ホルトノキ属の常緑高木。国内では、房総半島以西の暖地に生える。 オリーブに似た実をつけることから学名(Elaeocarpus sylvetris) がつけられており、 和名のホルトノキ(別名:モガシ)も、 江戸時代薬用として珍重されていたオリーブ油(別名:「ポルトガル油」,訛って「ホルト油」)に由来しているようである。 実際には形が似ているだけでこの実から油は採れないが、江戸時代の大学者平賀源内が誤認してしまったことに起因しているようだ。 葉形や葉の付き方がヤマモモやヤマモガシ に似ているが、秋から翌春にかけて、写真(右)のように順次紅葉したのち落葉するので見分けやすい。 お台場海浜公園沿いの道路にはかなり広範囲に植えられている。

<メタセコイア>(Metasequoia/Metasequia glyptostroboides)
江東区有明、国際展示場付近にて
  スギ科の落葉高木。生長がきわめてはやく、円錐形の樹形が見事であるが、落葉樹であり、また、 剪定すれば樹形が損なわれてしまうので、街路樹よりは公園樹に適している。 築地の朝日新聞社前にも あるが、樹形はイマイチである。西新宿「新宿アイランドタワー」裏(西側)通りにも植えられている。

<モモ (ハナモモ)> (Peach/Prunus persica
文京区湯島三丁目(春日通り)にて
中国原産のバラ科サクラ属(モモ亜属)の落葉小高木。モモの原産地は、種小名にペルシカ (persica)とあるようにペルシャ(イラン)と考えられていたが、20世紀に 入って黄河上流の高原地帯で原生地が発見された とのことである。モモは、通常果実を食用とするために栽培されるが、花も美しく観賞用にも古くから栽培されている。 モモの観賞用の品種は総称して「ハナモモ」と呼ばれ、八重咲のものが多く、色もピンク、白、紅白の咲き分けなどがあり、 形も枝垂れ、箒桃(枝が上を向く)等がある。 3月のヒナ祭りには切花としての利用が多い。

<ワシントンヤシ> ( Desert fan palm / Washingtonia filifera
江戸川区 京葉線葛西臨海公園駅前にて
ヤシ科の常緑高木。 ヤシ(椰子)は、南洋のシンボル的な植物であるが、−15℃までの耐寒性のある同じヤシ科の シュロ(シュロ:Trachycarpus fortunei / トウジュロ:Trachycarpus wagnerianus) は別として、種類によっては可成りの耐寒性(−5℃程度まで)を持っており、 東京でも充分に生育が可能である。植樹本数の順位では、 やはりヤシ科のビロウが第19位にランクされているが、これらのほとんど全数が伊豆の離島のものであり、 都心近くでは、主として夜間の冷え込みの少ない海岸付近に、 数は少ないがビロウに似たワシントンヤシが 植えられている。ワシントンヤシ(別名:オキナヤシ)は、葉先(裂片)がビロウのように折れて 垂れ下がらず、ピンと 張っていることで容易に区別される。 また、自生のままでは葉が枯れてもすぐに落ちないで幹に垂れ下り次々に何枚も重なる。 ペチコートのように見えるので ペチコートヤシとも呼ばれる。 このペチコートの中にネズミ等が住み着くのを避けるため、米国などでは、 法令で除去を義務づけているところもあるとのことである。 江東区有明 国際展示場付近の並木もなかなか見事である。なお、通常ワシントンヤシと呼ばれているが、 四国や九州の暖地で多く植えられているのは、成長が速く高木となる ワシントンヤシモドキ(Washington palm / Washingtonia robusta )のようである。

<ナツミカン> (Natsudaidai orange, Japanese summer orange /Citrus natsudaidai)
葛飾区白鳥二丁目(四つ木斎場付近)にて
ミカン科ミカン属の常緑小高木。日本を含むアジアの温暖な地方が原産地であり、寒さに弱い。 晩秋には実が大きくなり色づくが、そのままとらずに初夏までおくと樹上で熟し、 酸味が抜けて食べやすくなるため、 初夏の食べ物として「夏みかん」の名で売り出されるようになったらしい。 江戸時代中期に現在の山口県長門市に漂着した果実の種子が 夏みかんの起源といわれており、 原木は天然記念物に指定されている。明治時代に山口県萩市で普及したのち全国に広まった。 五月頃白色5弁、花径3cm位の芳香のある花が 咲く。山口県では「県の花」に指定されている。 街路樹に果樹が用いられるのは珍しいが、白鳥町では、都会育ちの子供達にも良い思い出を作り、 「ふるさと」意識を持って 貰おうと言うことで、町内にナツミカンを中心にカキ、ブドウ、ザクロ、 等の果樹を植え、町会で管理をしている。

 <マツ(クロマツ)> (Black pine/Pinus thunbergiana)
府中市「府中芸術劇場」付近にて
マツ科マツ属の常緑高木。古くは、織田信長が東海道、東山道にサクラ、マツ、ヤナギの街路樹を植えたとの記録があり、また、明治7年(1874)に銀座に初めて街路樹が植 えられた際にも、マツとサクラが選ばれたように、マツは並木として歴史のある木である(技報堂出版「街路樹」より)。しかし、環境変化に弱いためか、現在都内の街路樹 としては、きわめて数が少なく、ベスト20には勿論入らない。街路樹以外では、皇居前広場や小平霊園などで見事なマツが見られる。

<トキワマンサク>(Chinese fringe flower/Loropetalum chinense
千代田区丸の内1丁目、パレスホテル前(内堀通り)にて。
マンサク科,トキワマンサク属の常緑小高木である トキワマンサクの花の色は、基本種はごく薄い黄色であるが、 街路樹としては、紅色の変種であるベニバナトキワマンサク(中国原産で葉も赤みを帯びる)がよく栽培されている。

<タブノキ>(Japanese Machilus/Machilus thunbergii
北区十条台1丁目北養護学校前にて。
クスノキ科、タブノキ属の常緑高木。タブノキは、海外ではアボカドと同じクスノキ科、ワニナシ属(Persea)に分類されている場合が多い。イヌクスとも称される。神社や公園 で大木になっているタブノキを見かけることが多い。春先、大きな混芽(花芽と葉芽を含んだ芽)が力強く開く様子が特徴的である。 「北特別支援学校前」付近(バス停: 北養護学校前)から滝野川4丁目交差点に至る大木の街路樹は大変見事である。

<コロラドビャクシン> ( Mountain Red Cedar, Rocky Mountain Juniper/Juniperus scopulorum )
四谷 迎賓館付近(外堀通り)にて
ヒノキ科、ビャクシン族の常緑中高木。多くの園芸品種の中では、直立して成長し、樹形が見事なスカイロケット (Juniperus scopulorum'Sky Rocket’)」やブルーヘブン (Juniperus scopulorum'Blue Heaven')が、数年前から東京の街路樹でも見られる ようになった。

         <カラタネオガタマ>(Banana Shrub/Michelia figo
千代田区神保町(靖国通り)にて。
モクレン科オガタマノキ属の常緑小高木。中国原産で江戸時代に渡来。樹高は3〜5m。花期は5〜6月頃で、バナナのような強い甘い香りがある。

6.関連図書

 (1)「街路樹」、山本紀久著、義報道出版
 (2)「街路樹・みんなでつくるまちの顔」、亀野辰三・八田準一共著、公職研
 (3)「東京・樹木探検」(上巻・都心編/下巻・都周縁編)、東京樹木探検隊著、河出書房新社
  (4)「Trees for Urban and Suburban Landscapes」, Edward F. Gilman, Delmar Publishers
 (5)「TOKYO道路のみどり(毎年改訂)」、東京都建設局公演緑地部計画課編、東京都政策報道室
 (6)「植物の学名を読み解く(リンネの「二名法」)」、田中 學著、朝日新聞出版
 (7)「Field Guide to the Street Trees of New York City」、Leslie Day、The John Hopkins University Press
  (8)「Trees of Vancouver」、Gerald B.Straley、University of British Columbia Press
  (9)「THE STREET TREES OF EGYPT」、M.Nabil el-Hadidi/Loutfy Boulos、THE AMERICAN UNIVERSITY CAIRO PRESS
 (10)「葉で見分ける樹木」、林 将之著、小学館

7.関連ウェッブサイト

  (1) 国土技術政策総合研究所資料 わが国の街路樹---http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0506pdf/ks0506.pdf     
 (2) 東京の街路樹(荒木成光)---http://www.s-araki.com/index2.htm
 (3) (社)日本植物友の会---http://www.shokubutsutomonokai.or.jp/
 (4) 東京の街路樹(都建設局)---http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/kouen/gairojyu/hyoushi/index.html
 (5) 街路樹(ウィキペディア)---http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%97%E8%B7%AF%E6%A8%B9
 (6) よこはまの街路樹-----http://www.city.yokohama.lg.jp/doro/shisetsu/tree/
 (7) 京都の街路樹-----http://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000079882.html
 (8) 豊橋市の街路樹---http://www.city.toyohashi.aichi.jp/kouen/gairoju/index.html
 (9) 宮崎市の街路樹---http://www.geocities.jp/matsuura_syouiti/sub20.html 
 (10) なごやの街路樹---http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/15-4-3-0-0-0-0-0-0-0.html
 (11) せんだい 街路樹・公園MAP---http://www.city.sendai.jp/kensetsu/100forest/100mori_kids/contents/top_01.html 
 (12) 馬場大門けやき並木---http://fuchu-navi.com/keyaki/01.html
(13) かのんの樹木図鑑---http://kanon1001.web.fc2.com/
(14) GOOの樹木図鑑----http://www005.upp.so-net.ne.jp/goostake/
(15) Pla nts Database---http://plants.usda.gov/java/
(16) Botanical Name Index---http://trees.stanford.edu/speciesindex.htm 
(17) Common Name Index----http://botanical.com/botanical/mgmh/comindx.html
(18) 植物園へようこそ!---http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/BotanicalGarden-F.html
(19) 切手植物園--------http://www.plantstamps.net/
(20) 草木名の話-------http://www.ctb.ne.jp/~imeirou/sub8.html
(21) 緑の東京10年プロジェクト---http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/nature/plan/10year_project.html
(22) マイツリー(わたしの木)---http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/kouen/my_tree/index.html
(23) Top Ten Street Trees of New York City---http://treenotes.blogspot.jp/2007/08/top-ten-street-trees-of-new-york-city.html 
(24) howjsay.com : A free online Talking Dictionary of English Pronunciation--- http://www.howjsay.com/
(25) GKZ植物事典----http://www.t-webcity.com/~plantdan/index.html 
(26) ゑれきてる-----http://elekitel.jp/elekitel/index.htm
(27) WIKI樹木図鑑---http://www.s-araki.com/WIKI-JUMOKU
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