このコンクールの受賞者には、牧野正人、緑川マリなどオペラの世界で活躍している人もいるので、以前から関心を持っていたが、 予選が無料公開(於:上野公園内の旧奏楽堂)されていることを知り、今年初めて一次予選(2004.6.30)の一部、二次予選(2004.7.2) 及び本選(2004.7.14、有料)に出か けてみた。コンクールの名称の類似性から「日伊声楽コンコルソ」のイタリアオペラのアリアように、フランスオペラのアリアが聴けるかなと思った予想は完全に はずれ、「日仏」は純粋に歌曲だけのコンクールであり、しかも、本選まですべて日本歌曲も義務付けられていることをはじめて知った。このコンクールは、 主催がセルクル・ドゥー・コロンヌでフランス大使館、日仏音楽協会及び(財)台東区芸術・文化財団が後援している。今回が第13回であるが、 隔年開催であるため、歴史はかなり古く、第一回は1980年に開催されている。今年の課題は、1次予選が日本歌曲1曲 (任意)とフォーレの作品1曲(任意)で合計7分以内、2次予選は、日本歌曲1曲(1次予選の曲を除く)、フォーレの作品1曲(1次予選の曲を除く)及び フォーレ以外のフランス歌曲1曲(任意)で合計10分以内、本選は、日本歌曲1曲(予選の曲を除く)とフランス歌曲(曲目曲数自由、予選の曲を除く)で 合計15分以内であった。 参加者数は、通常50人前後とのことであるが、今回は、例外的に少なく31名のみであった。このうち、16名(男性:3名、女性:13名)が2次予選に、 さらに本選には、7名(S:5名、MS:1名、Br:1名)が進んだ。 このコンクールの1次予選では、出場者名が伏せられているので、顔を覚えていない限り、1次で何を歌った人が2次に進んだのか分からず、観客としては面白くないが、 2次予選からは氏名も公表されるので、他のコンクール並みに楽しくなってくる。本選に残った人達の大半は予想通りであったが、素晴らしい声と歌唱力を持ち、 個人的には入賞を確信さえしたバリトン(H.W)が、本選に残れなかったのは意外でもあり、残念であった。結局、やや変則的ではあるが、1位:松井亜希(S)、2位:該当者なし、 3位:松本和子(S)、松原友(Br)、奨励賞: 岩本麻里(S)、野宮淳子(S)、入選: 安藤京衣子(MS)、安部睦美(S)となった。なお、選考時間を利用して 「日伊コンコルソ」の場合同様、過去の受賞者による招待演奏があったが、前回入賞の神谷明美(S)及び薮内俊弥(Br)は、大変素晴らしかった。(2004.7.16記)
追記T(第14回コンクール、2006)
今回は、1次予選(6月28日)の半分(前半)と2次予選(6月30日)と本選
(7月7日)のすべてを聴いた。今年もコンクール出場者は少なく、33名であった。
1次及び2次予選の課題曲は、前回同様、日本歌曲(任意)、
フォーレの作品(任意)各1曲であった。2次予選には15名(女:12名、男:3名)
が進んだ。本選には、ほぼ予想通りの8名(S:5、MS:1、T:2)が進み、審査の結果、第1位には、
朴瑛実(MS)、2位には、藤谷佳奈枝(S)、3位には、高橋さやか(S)及び安富泰一郎(T)
が入り、野宮淳子(S)、中川悠子(S)、武吉史雄(T)及び木澤香俚(S)が「入選」となった。
二次予選及び本選の出来からみて、美声と抜群の歌唱力をもつ朴と安富が、1位を争い、
野宮、木澤あたりが3位を争うものと個人的には予想したが、これはかなり大きく
はずれてしまった。
なお、1次予選で歌われた日本歌曲を作曲者別に分類すると、中田喜直:10曲
(13人)、團伊玖磨:4曲(6人)、山田耕筰:4曲(4人)、別宮貞雄:1曲
(4人)、諸井三郎:1曲(2人)、清水修、大中恩、小林秀雄、山田一雄;各1曲
(各1人)であった。2次予選では、中田喜直:4曲(4人)、團伊玖磨:2曲(4人)、
別宮貞雄:1曲(3人)、湯山昭、平井康三郎、山田耕筰、柴田南雄:各1曲(各1人)
であった。1次、2次を通して最も多く歌われたのは、やや意外であったが別宮貞雄の
「さくら横ちょう(7人)」であり、ついで團伊玖磨の「紫陽花(5人)」であった。
(2006.7.8記)
追記U(第15回コンクール、2008)
今年は、コンクールの日時確認を忘れていたが、1次予選(6月25日)、2次予選(6月27日)が終わったところで、関係者の方から連絡をいただき、
やっと本選(7月4日)だけを聴くことができた。1次予選参加者は、棄権の2名を除いて36名、2次予選には15名が進み、本選には7名
(S:3, Ms:3, Br:1)が残った。今年から本選での日本歌曲が1曲追加され2曲になった。審査の結果、第1位:湯川 亜也子(Ms)、第2位(及び日本歌曲賞)
:金子 美香(Ms)、第3位:クリステン・木実・ウィットマー(S)、入選が門間 信樹(Br)、池端 歩(Ms)、松原 典子(S)、盛田 麻央(S)の4人となった。個人的には、
天与の美声を持つ松原典子の入賞を期待したが、入選どまりとなったのは残念であった。なお、最近同コンクールのHPが開設された。
(2008.7.4 記)