とある小さな漁村。美しい白い砂浜は、踏めば歌う鳴砂の浜。しかし村は貧しく、沖で難破する船の積み荷が流れ着いたものを浜人たちは
「産土(うぶすな)の神のくだされもの」と呼び、暮らしの糧としなければならなかった。二百十日の日を前に、村では風を呼ぶ風祭りの
中で嵐を占う”虎舞”が行われる。盲目の娘イサゴは、海へ出たままか帰ってこないミナジに思いを募らせ、大好きな鳴砂のかすかなささ
やきを聞きながら待ち続けていた。イサゴの妹ナギサやミナジの養父母ジサクとトマはイサゴの届かぬ想いに心を痛めつつ見守っている。
そこへ、二百十日の大嵐で難破した大きな船とともにミナジが帰ってくる。山伏がお祓いをしていると突然、船が3回青く光り、青い光に包
まれた女が現れる。この妖しく神秘的な女は「エテル」と名乗る。
ミナジや男たちはエテルに惹かれ、いぶかしむ女たちは拒否反応を示し、エテルを村から追い出そうとする。
嘆き悲しみ常軌を逸するイサゴに村の女たちの同情があつまり、いっそうエテルと青い灯への反感がつのる。
気が付くと、村は敵対する男と女で真っ二つに割れていた。心を通わせるミナジとエテルに憎しみを抱き、半狂乱となったイサゴは夜叉の如
く長刀を振り回し、青い灯を叩き落とす。エテルは悲鳴とともに姿を消し、ミナジはエテルを追って船から転落する。争いの果てに、命知ら
ずの勇者ミナジを失い、難破船の廃材が散らばる浜は荒れ、もう鳴砂は歌わない。(公演チラシより)