12.「METライブビューイング」

不覚にもこんなに素晴らしい企画が既に実施に移されていることに半年間も気がつかなかった。連休中に計画していた海外旅行を都合でキャンセルし、 都心の自宅で過ごすことになったため、コンサート等の催物を探していて偶然この「METライブビューイング」のアンコール上映(数ヶ月遅れ)を知った。 急遽、会場の銀座ブロッサムに出かけ、当日券で「エウゲニ・オネーギン」を見ることができた。
「METライブビューイング」とは、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場のオペラ公演を 日米欧へ配信し、最新の映像・音響技術(HD映像と6チャンネル音響)により劇場上映するものである。ライブとは謳っているが、現実には時差及び 字幕制作の関係等で日本では、数週間程度の遅れで昼間に劇場で上映するシステムである。鮮明な大画面スクリーンなので、歌手の表情や細かい所作が客席の 最前列に座っているようによく見えるとともに、サラウンド音響で聴衆の拍手も入るので、臨場感満点である。休憩時間には、今歌ったばかりの歌手への インタービューがあったり、リハーサルの模様が放映されるのも大変興味深い。入場料が通常映画の2〜3倍程度、外国オペラハウスの引越し公演の1/10 程度なのもありがたい。
今シーズンは、METの2006-2007シーズンの29演目の中から、6演目(モーツアルトの「魔笛」、ベッリーニの「清教徒」、タン・ドゥンの「始皇帝」、 チャイコフスキーの「エウゲニ・オネーギン」、ロッシーニの「セヴィリャの理髪師(新演出)」、プッチーニの「三部作(新演出)」)が2006年の 大晦日から2007年の5月初旬にかけて順次中継上演された。
来シーズン(2007.12.31〜5月初旬)には、METとして新演出の「ヘンゼルとグレーテル」、「連隊の娘」、「マクベス」、「ピーター・グライムズ」 及び再演の「ロメオとジュリエット」、「マノン・レスコー」、「トリスタンとイゾルデ」、「ラ・ボエーム」の8作品の上映が決定しているとのこと なので大いに楽しみである。ところで、今回見た「オネーギン」でタチャーナを歌ったルネ・フレミングとオネーギンを歌ったディミトリー・ホロストフスキー の名唱・名演は、感動的であった。(2007.5.6記)

追記T:この企画を提言し、実施に移したMETのピーター・ゲルブ総裁によると(2007.6.13、昭和音大での公開講座)この企画は、 スポーツの生中継にヒントを得たとのことで、その他のPR活動もあり、9/11事件以来低下傾向にあったMETの売上げが、昨年度は7%の上昇に転じたとのこと であった。欧州のオペラ場でも類似のプロジェクトを立ち上げる機運にあるようだ。新国立劇場でも同劇場の公演をライブで国内大都市の劇場等で試験的にでも 中継してみればいかがであろうか。(2007.6.14記)

追記U :今シーズン(2007-2008)は、万障繰り合わせて中継された8作品全てを見た。アンナ・ネトレプコの熱唱と迫真の演技 が光った「ロメオとジュリエット」、お菓子の家がなく、テノールが魔女を歌った新演出の「ヘンゼルとグレーテル」、舞台が20世紀に設定 され、ジープや 銃器も登場した「マクベス」、R.フレミングのインターヴューが特に面白かった「マノン・レスコー」、ドラマ的にも 迫力満点であった「ピーター・グライムス」、 新機軸のマルチ・スクリーン・モードを採用した「トリスタンとイゾルデ」、ゼフレッ リの極め付きの演出による「ボエーム」及びフローレス、ナタリー・ デッセイという夢の共演による「連隊の娘」は、いずれも素晴ら しく、十分に楽しむことができたが、特に最後の「連隊の娘」がフローレスの見事なハイC連発 とデッセイの抜群のコミカルナ演技で 一番楽しかった。METのホームページに発表された、マスネーの「タイース」、プッチーニの「つばめ」等の珍しいオペラ を含む次年度(2008-2009)10作品 の放映が楽しみ である。
なお、8作中の7作は品川(品川プリンスシネマ)或いは六本木(TOHOシネマズ六本木ヒルズ)で昼間の上映を見たが、最後の2作(ボエーム、連隊の娘) を除いて客入りの悪さが気になった。ある意味では実演以上の臨場感があり、内容的には十分価値はあるが、 やはり\3,500は通常の映画の\1,500に比べて 高すぎるのではなかろうか。開業当初、利用客の低迷に悩んだ「東京モノレール」が 大幅値下げをして、かえって収益が急増したように、\1,000程度値下げ すれば、客入りも大幅に改善されるのではなかろうか。 (2008.5.14 記)

追記V :今シーズン(2008-2009)は、10作が上映されたが、第一線の歌手とお金をかけた舞台をS席で見ることができるこの企画 の魅力には勝てず、「映画」としては高いとは思いながらも、結局全放映を見てしまった。回数券(5枚綴り、¥15,000)で入場したので若干安く見ることが できたが、シーズンの「通し券」を設け、さらに割引してもらえればありがたい。なお、今シーズンは、松竹系ながら昨年度と異なり、都内では、東銀座の 「東劇」及び「新宿ピカデリー」で上映された。

 @ R.シュトラウス「サロメ」:(MET上演:2008.10.11、上映:2008.11.1)
主題役のK.マッティラ(S)は歌や演技は素晴らしかったが、48歳とかでさすがに十代の少女には見えなかった。ヨカナーンを歌ったJ.ウーシタロ(BsBr)も迫力満点 であったが、ヘロディアスを歌ったハンガリー出身のI.コムロジ(Ildiko Komlosi、Ms)もすごかった。一方、舞台は、抽象化し過ぎやや殺風景であった。

 A アダムス「ドクター・アトミック」:(MET上演:2008.11.08、上映:2008.12.4)
「マンハッタン計画」で原爆開発の最高責任者であったオッペンマイアー博士の実話に基づく心の苦悩を描いた新作オペラであり、台本も歌手も素晴らし かった。しかし、週日の午前中とはいえ映画館(新宿ピカデリー)の観客が十数人しか入ってなかったのは残念であった。

 B ベルリオーズ「ファウストの劫罰」:(MET上演:2008.11.22、上映:2008.12.16)
高度の技術を活用して舞台と映像を融合し、幻想的な世界を現出させたRobert Lepageの演出が印象的であった。歌手も(ファウスト:Marcello Giordani、 マルグリート:Susan Graham、メフィストフェレス:John Relyea)なかなか良かった。

 C マスネ「タイス」:(MET上演:2008.12.20、上映:2009.1.14)
5年ほど前に芸大の学内公演でこのオペラのハイライトを観たことがあったが、今回初めて、全曲を聴くことができた。ヴァイオリン独奏曲としてポピュラーな 「タイースの瞑想曲」の背景も良くわかった。METでも30年ぶりの上演とのこと。あたり役のルネ・フレミングがタイースを好演した。

 D プッチーニ「つばめ」:(MET上演:2009.1.10、上映:2009.2.4)
このオペラは、新国立劇場で上演(2006年3月)された「プッチーニのパリ」で、単独によく歌われるアリア「ドレッタの夢」を含む第1幕のみを観たこと があっただけだったので、ゲオルギュー/アラーニャの熱演による今回のMETライブは、個人的には大変貴重な機会であった。

 E グルック「オルフェオとエウリディーチェ」:(上演:2009.1.10、上映:2009.2.4)
2007年MET上演時に話題になったという斬新な演出も面白かったが、やはりオルフェオを歌ったステファニー・ブライス(Ms)の圧倒的な声が素晴ら しかった。

 F ドニゼティ「ランメルモールのルチア」:(MET上演:2009.2.7、上映:2009.3.4)
アンナ・ネトレプコのルチアは、歌も演技も期待通りの素晴らしさであったが、エドガルド役のピョートル・ベチャワ、エンリーコ役のマリューシュ・ クヴィエチェン等の男声陣も素晴らしく、まさに声の饗宴であった。メアリー・ジマーマンの演出もドラマを盛り上げた。

 G プッチーニ「蝶々夫人」:(MET上演:2009.3.7、上映:2009.4.1)
蝶々夫人を歌ったパトリシア・ラセットは、歌、演技とも素晴らしかったが、故アンソニー・ミンゲラの演出の舞台は、小道具を極力減らし、背景は横長のモノトーン(赤や青)のスクリーンだけというきわめ    てシンプルなものであったが、宙吊の障子をたくみに動かしたり、「坊や」に子役を使わず、3人の黒子を従えた文楽人形(もどき)を登場させたり の新機軸もあり、大変見事な舞台であった。

 H ベッリーニ「夢遊病の娘」:(MET上演:2009.3.21、上映:2009.4.13)
フィナーレの場面を除いて、リハーサル現場を「本舞台」にしてしまったユニーク演出は、発想は面白いが、スイスの田園風景が無くなったのは、 やはり物足りなかった。ネトレプコが、特に素晴らしかった。

 I ロッシーニ「チェネレントラ」:(MET上演:2009.5.9、上映:2009.6.3)
コミカルなチェーザレ・リエーヴィの演出(特に2人の姉の動作)が大変面白かった。歌手では、題名役のガランチャも良かったが、場面によっては滑稽な くらい小柄な王子役のローレンス・ブラウンリー(T)の美声と歌唱力が素晴らしかった。(2009.6.4 記)

追記W: 今シーズン(2009-2010)は、9作品が上映されたが、初めて観るオペラ(G&H)もあり、場合によっては、 実演以上の臨場感があり、演奏水準も高くどれも見逃すことは出来なかった。次年度は、11演目が予定されており、今から楽しみである。

@ プッチーニ「トスカ」:(MET上演:2009.10.10、日本上映:2009.11.7〜13)
METでは25年振りという新製作の「トスカ」は、重厚ではあるが全体にやや暗すぎの感があった。スカルピアを歌ったジョージ・ギャグニッザ(Br) 及びカヴァラドッシを歌ったマルセロ・アルバレス(T)が迫力満点であったこともあり、一番期待した題名役トスカを歌ったカリタ・マッティラ(S)があまり 目立たなかった。

A ヴェルディ「アイーダ」:(MET上演;2009.10.24、日本上映:2009.11.28〜12.4)
METのソニア・フリゼル演出による舞台セットは、さすがMETらしく壮大で、セッフレリの名演出に匹敵出来るものであった。今回も新宿ピカデリーで見たが、 初めての満席を経験した。主役の3人(アイーダ:ヴィオレッタ・ウルマーナ、アムネリス:ドローラ・ザジック、ラダメス:ヨハン・ボータ)は、 皆立派な声を持っていたが、体躯もまた皆超人的であった。なお、リンダ・フレミングの解説、インタービューもいつもながら素晴らしかったし、 ステージ裏の中継も迫力満点あった。

B プッチーニ「トゥーランドット」:(MET上演:2009.11.7、日本上映:2010.1.16〜22)
豪華なセットで知られるフランコ・ゼフィレッリの演出は、さすがに素晴らしい。アップで観るため、ドラマ的にも迫力満点であった。マリア・グレギーナ(S)と マルチェッロ・ジョルダーニ(T)の組み合わせは、声としては理想的であったが、劇場の音量が、実演とはかけ離れて過度に大きく感じた。

C オッフェンバック「ホフマン物語」:(MET上演;2009.12.19、日本上映:2010.1.23〜1.29)
カフカにインスピレーションを受けたというバートレット・シャーの新演出も面白かったが、やはり歌手陣が充実していた。 ホフマン役のジョセフ・カレーハ、 アントニア/ステラ役のアンナ・ネトレプコもよかったが。子供のように小柄で童顔の キャスリーン・キムも素晴らしかった。

D R.シュトラウス「ばらの騎士」:(MET上演:2010.1.9、日本上映:2010.1.30〜2.5)
やはりルネ・フレミング(元帥夫人)とスーザン・グラハム(オクタヴィアン)の名コンビが歌、演技とも素晴らしかった。また、METならではの豪華な 舞台装置にも眼を奪われた。

E ビゼー「カルメン」:(MET上演;2010.1.16、日本上映:2010.2.6〜12)
カルメンは昨シーズンの「チェネレントラ」でも好演したガランチャ、ドン・ホセは極め付きのアラーニャ、ミカエラはイタリアが誇るフリットリという 豪華な歌手陣で理想的な布陣であった。リッチャード・エア演出による妖艶なカルメン、ホセとの真迫の愛憎演技が素晴らしかった。また、5時間前に代演 を告げられたというテディー・タフ・ローズのエスカミーリョも良かった。

F ヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」:(MET上演:2010.2.6、日本上映:2010.2.27〜3.5)
プラシド・ドミンゴが、デビュー時のバリトンに戻ってタイトル・ロールを歌うということで、大いに話題となったが、威厳のあるジェノヴァ総督とやさしい アメーリアの父親役を見事に歌い、演じた。ガブリエーレを歌ったマルチェッロ・ジョルダーニも良かったが、アメーリア役のエイドリアン・ピエチョンカ(S)は、 まずまず、フェイスコ役のジェイムス・モリス(Bs)は多少の衰えを感じた。

G トマ「ハムレット」:(MET上演:2010.3.27、日本上映:2010.4.10〜16)
「狂乱の場」のアリアは、単独で聴く機会があったが、METでも113年ぶりという上演機会の少ないオペラなので大いに関心を持って観た。物語は、 シェイクスピアの原作とは、かなり異なっているようだが、ハムレット役のサイモン・キーンリーサイドをはじめ適材適所の歌手を集め、歌もドラマ も素晴らしかった。なお、ナタリー・デセイの代役として急遽オフィーリアを歌ったマルリース・ペテルセンは、声もむしろデセイより良くなかなかの好演であった。

H ロッシーニ「アルミーダ」:(MET上演:2010.5.1、日本上映:2010.5.22〜28)
今年度のMETライブの掉尾を飾って、METでも初演というロッシーニの魔女物語「アルミーダ」が上映された。女声は題名役のアルミーダだけである一方、 男声には主役級のテノールを5〜6人(6役)も要する変則的なキャスティングのオペラであるが、余人をもって変え難い ルネ・フレミングの名唱・熱演は感動的であった。 歌わない「愛」と「復讐」のキャラクターを随所に登場させたメアリー・ジマーマンの演出も面白かった。また、第二幕の長いバレエ・シーンも印象的であった。

追記X :今シーズン(2010-2011)は、過去最多の12演目が、上映された。うかつにも期待していた第1演目を見落としてしまったが、残りの11演目は、十分に楽しむことができた。

@ ワグナー「ラインの黄金」: (MET上演:2010.10.9、日本上映:2010.11.6〜12)

A ムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」:(MET上演:2010.10.23、日本上映:2010.11.13〜19)
45年程前に、NHKが呼んだ「スラブ・オペラ団」の公演で初めてこのオペラの真髄に触れた記憶があるが、今回のMET公演は、歌手が一層素晴らしく、 映画ながら大きな感動を覚えた。特に、ボリス役のルネ・パーペ(Bs)、ピーメン役のミハイル・ペトレンコ(Bs)が素晴らしかった。

B ドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」:(MET上演:2010.11.13、日本上映:2010.12.4〜10)
  このオペラも、10年程前に文京区主催公演で若手歌手による実演に接したことがあったが、今公演は、超一流を歌手を揃えた豪華な公演であり、 喜劇としても大変面白かった。特に、ノリーナ役のアンナ・ネトレプコは、10年ほど前にマリインスキー劇場で観た時よりは、かなり太めになったが声、 演技、容姿とも申し分なく素晴らしかった。

C ヴェルディ「ドン・カルロ」: (MET上演:2010.12.11、日本上映:2011.1.8〜14)
R.アラーニャ(T)、F.フルラネット(Br)等お馴染みの歌手も良かったが、エボリ公女を歌ったA.スミルノヴァ(Ms)の美声も印象に残った。

D プッチーニ「西部の娘」: (MET上演:2011.1.8、日本上映:2011.1.29〜2.4)
ダイエットで有名になったデボラ・ヴォイト(S)、マルチェッロ・ジョルダーニ(T)、ルチオ・ガッロ(Br)の歌も良かったが、映画的な演出は、 ドラマとしても迫力満点であった。

E ジョン・アダムス「ニクソン・イン・チャイナ」: (MET上演:2011.2.12、日本上映:2011.2.26〜3.4)
オスティナート技法を駆使した管弦楽の響きが大変心地よく、また、ドキュメンタリー調のストーリーも面白く、20世紀オペラの傑作のひとつと 言われるにふさわしい感動的なオペラであった。歌手も適材適所で良かった。

F グルックの「タウリスのイフィゲニア」: (MET上演:2011.2.26、日本上映:2011.3.19〜25)
風邪気味とは思えない主役の2人(プラシド.ドミンゴ、スーザン.グラハム)の名唱・名演とスティーヴン.ワズワースの正統的な演出により、 感動的な公演であった。

G ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」:(MET上演:2011.3.19、日本上映:2011.4.9〜15)
抜群の歌唱力をもつナタリー・デセイ(ルチア)の歌と演技は良かったが、3人の男声陣(特にR.テジエ)の豊な美声も素晴らしかった。

H ロッシーニ「オリー伯爵」:(MET上演:2011.4.9、日本上映:2011.5.7〜13)
自作の「ランスへの旅」のメロディーを流用して作曲した「笑劇」であるが、フローレス、ダムラウ、ディドナート以下最高の歌手を集めただけに、まさに声の饗宴であった。手動式の古風な舞台転換を見せる劇中劇方式を採用したB.シャーの演出も面白 かった。

I R.シュトラウスの最後の一幕物オペラ「カプリッチョ」:(MET上演:2011.4.23、日本上映:2011.5.14〜20)
主演のルネ・フレミングは、アメリカ人ながらドイツ留学経験もあり、 R.シュトラウス歌いを自認しているだけに素晴らしかった。 このオペラは、芸術論をたたかわす場面が多いだけに、実演よりも字幕が見やすいのが助けになった。

J ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」:(MET上演:2011.4.30、日本上映:2011.5.28〜6.3)
ルーナ伯爵を歌ったD.ホロストフスキーは、期待通りの名唱であったが、レオノーラ役のS.ラトヴァノフスキーの声は、透明感に乏しく好きにはなれない。 アズチェーナ役のD.ザジックは、なかなか良かった。舞台は、大変リアルであったが、暗過ぎた感もあった。

K ワグナー「ワルキューレ」:(MET上演:2011.5.14、日本上映:2011.6.11〜17)
11年前に観た正統的なMETの旧演出も素晴らしかったが、ハイテクを利用した斬新な新演出も迫力十分であった。歌手では、ジークムント役の J.カウフマン、ウォータン役のB.ターフェル、フリッカ役のS.ブライズが特に素晴らしかった。ブリュンヒルデ役のD.ヴォイトは、減量のせいか11年前に ジークリンデ役で聴いた時より声の力がかなり落ちたように思えた。

追記Y : 今シーズン(2011-2012)は、11演目が上演された。
@ ドニゼッティ「アンナ・ボレーナ」:主題役の美人ソプラノ、 アンナ・ネトレプコが急に太目になったのには、少々驚いたが、この難役を見事な歌と演技でこなした。

A モーツアルト「ドン・ジョヴァンニ」:フリットリとヴァルガス以外は、初めて見る名前であったが、さすがにMET、素晴らしいキャストであった。 特に、フリットリのエルヴィーラが良かった。正統的な演出であったが、場面転換が特に見事であった。

B ワグナー「ジーク・フリート」:著名なワグナー歌い総出演の豪華な公演であったが、アルベリヒを歌った Eric Owensの重厚な美声が特に印象に残った。映像の高度な利用も今後のオペラ上演の手本になりそう。

C F.グラスの「サティアグラハ」:ミニマル・ミュジックの旗手であるF.グラスが作曲したこのオペラは、ガンジーの半生を描いたもので、 サンスクリット語の歌詞と舞台上の出来事とに関連性が無いという異質なもので、演出も能舞台のように静的ながら斬新であった。

Dヘンデル「ロデリンダ」Renee Fleming をはじめ適材適所のキャスティングであった。しかし、著名なカウンターテナーの Andreas Schollは、歌は確かに巧いが、女性以上に女性的な声質であり、王様役としては、最後まで違和感が拭えなかった。

Eグノー「ファウスト」: 美男・美女のJ.カウフマン/M.ポプラフスカヤ、R.パーペと言う豪華キャストであり、D.マッカナフの 演出も感動的であった。後日 WOWOWでの放映があれば、是非録画して保存版にしたい。

Fヘンデル、ヴィヴァルディ、ラモー「魔法の島」:ストーリーはシェイクスピア、音楽はヘンデルやラモー等の名作から切り取り、 これをつぎはぎしてバロック風のオペラに仕上げたものであるが、 Danielle de Niese 等出演歌手の歌唱力が凄かった。

Gワグナー「神々の黄昏」:新制作「リング」の総括として、演奏、演出とも素晴らしく、12年前のMETでの実演同様の感動を覚えた。 しかし土曜日だったとは言え、開映45分前に着きながら良い席が取れなかったのは誤算であった。 http://t.co/aMVQK0Xy

Hヴェルディ「エルナーニ」:M.ジョルダーニ、D.ホロストフスキー、F.フルラネット、A.ミードという超弩級の歌手を揃えた公演は、 正に声の饗宴であったが、やはりホロストフスキーが一段と素晴らしかった。

Iマスネ「マノン」:主題役のアンナ・ネトレプコは、 12年前マリインスキー劇場で初めて観た時(スザンナ役)に比べると、少々太目になったが、歌と演技は相変わらず、素晴らしかった。 しかし、舞台装置(特に第2幕)は、殺風景過ぎた。

Jヴェルディ「椿姫」:ヴィリー・デッカーの斬新な演出は、ネトレプコの主演も話題になった2005年ザルツブルグ音楽祭公演と同じものである。 ヴィオレッタ役のナタリ・デセイは熱演ではあるが、やはり声では ネトレプコに軍配を上げたい。威厳とやさしさを兼ね備えたホロストフスキーのジェルモンは圧巻であった。

追記Z : 2012-2013年度は、12作が放映された。

@「愛の妙薬」:舞台装置は、やや陳腐であったが、コミカルな動きを抑え、ラブロマンスに重点を置いたバートレット・シャーの演出は、成功。 ネトレプコのアディーナは、素晴らしいの一言。ネモリーノのボレンザーニ等も好演。 http://www.youtube.com/watch?v=51vIcz1IoyQ

A「オテロ」 ルネ・フレミングヨハン・ボータファルク・シュトルックマン等 役者がそろい、感動的な名演であった。 奥行きのある重厚壮大な舞台装置も見事であった。

B「テンペスト」: 現代英国の俊英作曲家トーマス・アデス作曲の このオペラは、シェイクスピアの原作を再構成した2004年初演の現代オペラであるが、「リング」の新演出で大きな話題を呼んだR.ルパージュの演出も 斬新であり、S.キーンリーンサイドI.レナード、A.シュレイダー 等の出演歌手も素晴らしく、 見応え十分であった。

C「皇帝ティートの慈悲」:演出は、2006年の新国立劇場公演の奇を衒ったハチャメチャな コンヴィチュニーの演出 の対極を行く、歴史的なJ・P・ポネルによるきわめて正統的なものであり、 ガランチャ、フリットリ、 K・リンジー等の歌手も素晴らしく感動的な演奏であった。

D「仮面舞踏会」:今公演は、ボストンを舞台にした通常版(改定版)ではなく、本来のスウェーデンを舞台としたものであった。 改定前のこの版で見るのは初めてであり、興味深かったが、時代を原作 の18世紀末にせず、20世紀初頭に設定した 演出の意図がよくわからない。 歌手では、やはり当代一の吊バリトン: D.ホロストフスキーの声、演技力が圧倒的であった。

E「アイーダ」:(2009-2010シーズン上演と同じソニア・フリゼルの演出)

F「トロイアの人々」:この長大なオペラは、これまで実演に接したことがなく、今後も国内での上演は余り期待できないだけに、 この実況映画は、貴重な鑑賞の機会であった。S.グラハム、M.ジョルダーニ等が好演し、また、いつもの 出演者インタービューも面白かった。

G「マリア・ストゥアルダ」:このオペラのビデオは持っているが、昔1-2度見ただけで、記憶が薄れていたので、音楽、 ドラマとも新鮮で面白かった。特に、第一幕の2人の 女王の対面の場の迫力は、圧倒的であった。歌手では、J.DiDonatoやMET初登場のElza van den Heeverなどが好演。

H「リゴレット」:この公演の最大の特長は、時代設定を数百年ずらして1960年代の ラスベガスに設定したことであるが、違和感がないという以上に、 新鮮で大変面白く、大成功であった。歌手はみな素晴らしかったが、特に抜群の歌唱力と真迫の演技でジルダを演じた D.ダムラウが素晴らしかった。

I「パルシファル」J.カウフマンR.パーペ、K.ダライマン、新国で「さまよえるオランダ人」を好演した E.ニキティン等の理想的なキャストによる演奏は、10年程前に接した 実演に勝るとも劣らない感動を覚えた。 F.ジラールの「血の海」の演出も凄かった。

J「フランチェスカ・ダ・リミニ」:METでも27年ぶりというこのオペラは、実演はもとより、ビデオでも観たことがなかったが、 音楽は素晴らしく、物語も良くできており、面白かった。

K「ジュリアス・シーザー」:1724年の初演にならってシーザー、トロメオ、ニレーノの3役をカウンター・テナーが歌ったが、 トロメオ王を歌ったクリストフ・デュモーが特に素晴らしかった。 また、D.マクヴィカーのコミカルな演出は楽しかったが、時代設定を千数百年 もずらした狙いと効果は疑問。

追記[ : 2013-2014年度は、10作が上映された。

@「エフゲニー・オネーギン」:6年前のMETライブで観たフレミング/ホロストフスキー版も良かったが、今回の ネトレプコ他ロシア語圏の歌手を揃えたキャストも素晴らしかった。 映画的というか舞台の細部まで写実的な新演出も出色であった。

A「鼻」 : このショスタコーヴィチの風刺オペラは何年か前、新国立劇場でのモスクワ室内歌劇場による上演を観たこともあるが、 ストリーは荒唐無稽、音楽的には悪くはないが、繰り返し見たくなるような傑作とは思えない。しかし、背景のアニメ 映像と舞台が渾然一体となった今回の W.ケントリッジの演出は秀抜で、楽しかった。

B「トスカ」:(4年前の再演だったので、今回はパス。)

C「ファルスタッフ」:題名役のアンブロージョ.マエストリの名唱・名演もあったが、時代を20世紀半ばの移した ロバート.カーセンの演出が面白く。また、映画なので字幕が見易いこともあり、大いに楽しめた。しかし、クイックリー夫人役のS.ブライズ及び フォード夫人アリーチェ役のA.ミードの滑稽な程の巨躯にも目を見張った。

D「ルサルカ」 : 祖父母がチェコ出身であり、METのオーディションでもこのオペラの アリアを歌ったというR.フレミングはもとより、王子役のP.ベチャワ、 魔女役のD.ザジック、王女役のE.マギー等まさに適材適所で理想的なキャストであった。O.シェンク のオーソックスかつ幻想的な演出も良かった。

E「イーゴリ公」: METでも100年振りの公演ということであったが、今公演は、ボロディンの台本原案などを参考にした 新演出であった。歌手は初めて聴く人が多かったが、イーゴリ公役の Ildar Abdrazakovをはじめ、、 Oksana DykaAnita RachvelishviliStefan Kocan等の適材を配したキャストは素晴らしかった。一方、 新機軸の演出には、見るべきものもあったが、土俗的で勇壮な 「ポロヴェツ人(韃靼人)の踊り《を軟弱に見える踊りに変えてしまった のには違和感を持った。

F「ウェルテル」:主題役のJ.カウフマンは、 相変わらずの力強さで熱演・好演であった。初めて聴いたシャルロッテ役の ゾフィー・コッシュは、歌も演技も抜群であった。一方、意識的にフレームによって舞台を狭くした リチャード・エアの演出は、特別に効果的とは思えなかった。

G「ラ・ボエーム」:(2007-2008シーズンの再演、パス)

H「コジ・ファン・トゥッテ」 S.フィリップスD.ドゥ・ニース他のMETの若手歌手も皆素晴らしく、L.ケーニッヒ演出による舞台装置 とその転換、衣装も見事であり、モーツアルトの四大オペラの中では、一番好きな このオペラを堪能した。なお、指揮は、J.レヴァイン。

I「ラ・チェネレントラ」:(2008-2009シーズンの再演、パス)

追記\:2014-2015シーズンは10公演(12作)が放映された。

@ ヴェルディ「マクベス」:男声陣も良かったが、やはり豊麗な声と迫真の演技でマクベス夫人を歌ったA.ネトレプコが        圧巻!しかしA.ノーブルの演出は、舞台が暗すぎたし、自動車まで登場させた現代化は無意味に思えた。 A モーツアルト「フィガロの結婚」:(再演)

B ビゼー「カルメン」:(再演)

C ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」:(再演)

D ワグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 :初めて聴く歌手が多かったが、さすがMET、ザックス役のM.フォレ、ヴァルター役の J.ボータ、ポークナー役のH-P.ケーニヒ等理想的な歌手を揃えた名演奏であった。

E レハール「メリー・ウィドウ」:METとブロードウェイの合作ともいえる華麗な公演であった。ハンナ役の ルネ・フレミングは、期待通りであったが、初めて聴いたダニロ役の ネイサン・ガンがなかなか良かった。また、衣装、 踊り、舞台装置も豪華で素晴らしかった。

F オッフェンバック「ホフマン物語」:(再演)

G チャイコフスキー「イオランタ」ネトレプコ、ベチャワは正に適材適所 で素晴らしかった。このオペラは、数年前に来日したロシアのオペラ団の実演に接したことがありながら筋を忘れていたため、ドラマ的にも感動した。

バルトーク「青ひげ公の城」:このオペラも2度ほど実演に接したことがあるが、演出的には満足できなかった。このMET初演の演出もあまり 面白くなかった。多分20年以上前になるが、NHKで放映されたテレビ用に撮った素晴らしい演出が一番印象に残るっている。

H ロッシーニ「湖上の美人」:METでも初演という珍しい作品であるが、 J.ディドナード、J.D.フローレス、J.オズボーン等の名歌手を揃えた演奏が素晴らしかったこともあり、音楽にもドラマにも感動した。

I マスカーニ「カヴァレリア・ルスチカーナ」Z.Lucic 他の歌手はよかったが、昼間のドラマをわざわざ夜に設定した暗い舞台(演出:David MacVicar)には、違和感を覚えた。
レオンカヴァッロ「道化師」:2本立て公演の双方で主役を歌った Marcelo Alvarez他の歌手陣はよかったが、コミカルな劇中劇を含めて、David MacVicarの演出もなかなか良かった。

追記]:2015-2016シーズンは10作が放映された。

@ ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」 A.ネトレプコ、D.ホロストフスキーをはじめとするキャストが素晴らしく、感動的な声の饗宴であった。

A ヴェルディ「オテロ」:オテロを歌った A.アントネンコは、確かに輝かしい美声の持ち主であったが、白人のまま’の出演であったのには驚いた。「オテロ」は1959年(デル・モナコ主演) 以来、数多く見ているが、白いムーア人は初めてであり、やはり多少の違和感を持った。

B ワグナー「タンホイザー」:第一幕が暗過ぎたこと、主人公が太目のオジサンなど映像的には多少の不満を持ったが、 正統的な演出とE.ヴェストブルックをはじめとする歌手陣は素晴らしかった。

C ベルク「ルル」:今回でこの役を卒業するという主題役のM.ペターセン、シェーン博士/切り裂きジャック役のJ.ロイター等の歌手 はみな素晴らしかった。なお、影絵を多用したアニメ的なスクリーンを取り入れたW.ケントリッジの 斬新な演出は秀抜!

D ビゼー「真珠採り」: このオペラは、METでは100年振りの上演とのこと。 D.ダムラウ、M.ポレンザーニ等の名唱・熱演もあり、映画でありながら35-36年前 に東京文化会館で観た実演以上に感動的であった。

E プッチーニ「トゥーランドット」:(再演)

F プッチーニ「マノン・レスコー:J.カウフマンに 代わって急遽デ・グリューを歌ったR.アラーニャは意外にもこれが初役とのことであったが、マノン役のK.オポライスとともに熱演・好演であった。 時代をナチス占領下のパリに、また第4幕を荒野ではなく廃墟に設定したのも新鮮であったが、壮大な舞台装置はなかなか見事であった。

G プッチーニ「蝶々夫人」:この公演が7年前の再演(演出:A.ミンゲラ)であることは知りながら再度観たが、観客と共に 大スクリーンで見る上映は、実演同様の臨場感があり、感動的であった。題名役の K.オポライスの歌が特によかった。

H ドニゼッティ「ロベルト・デヴェリュー」:METでも今回が初演というこのオペラは、これまでもビデオで見ただけであったが、 一応史実に基づくという緊迫した悲劇は、なかなか見ごたえがあった。歌手では、 M.ポレンザーニ、E.ガランチャ及びM.クヴィエチェンが好演であったが、難役のエリザベッタを歌ったS.ラドヴァノフスキーは、中音域の声が透明感 に乏しく聞き苦しかった。

I R.シュトラウス「エレクトラ」:国王の暗殺者と再婚した王妃(及びその情夫)を実子の姉弟が協力して殺害するという陰惨極 まりないオペラではあるが、最大編成のオケの響きは聴きごたえ十分である。適材適所のキャステイングであったが、特に題名役の N.ステンメの強靭な美声と熱演は、見事であった!

追記XI:2016-2017シーズンも10作が上映された。

@ ワグナー「トリスタンとイゾルデ」 ニーナ・ステンメ以下のキャストも理想的!映画としては料金も高く、いずれWOWOWで放映されることが分かっていながら、天井桟敷で観る実演 より臨場感もあり、やはり出かけてしまった!

A(モーツアルト「ドン・ジョヴァンニ」)

B カイヤ・サーリアホ「遥かなる愛」:2000年に作曲された話題のこのオペラは、歌手は3人だけで、能舞台のように動きも 少ないが、LEDを活用した幻想的な舞台が素晴らしかった。 E.オーウェンズ、スザンナ・フィリップス他の歌手も最高!

C ヴェルディ「ナブッコ」:装置も重厚で、歌手も粒ぞろいであったが、題名役の プラシド・ドミンゴは、バリトンに戻ったとはいえ、75歳を越えている にもかかわらず、立派な声は健在であった。

D グノー「ロメオとジュリエット」:ロメオを含めた他の出演者には、多少の不満が残ったが、ジュリエットを歌った ディアナ・ダムラウは歌唱、演技、容姿ともまさにこの役にぴった りで素晴らしかった。

E ドヴォルザーク「ルサルカ」:R.フレミング主演の3年前の公演同様、今回の演奏・演出も素晴らしかった。題名役の K.オポライスは期待通り好演であった。脇役ではJ.バートン(魔女役) 及びE.オーウェンズ(水の精役)が特に良かった。

F(ヴェルディ「椿姫」)

G(モーツアルト「イドメネオ」)

H チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」A.ネトレプコはもとより、お目当てのホヴォロストフスキーに代わって出演したP.マッテイのオネーギンもなかなか良かった。 I R.シュトラウス「ばらの騎士」:主演の R.フレミングの卒業公演ということもあってか、大抵は空いている最前列も埋まるほぼ満席の盛況あった。やはり フレミングの元帥夫人は最高!!

追記XU:2017-2018シーズンも10作が上映された。

@ ベッリーニ「「ノルマ」:ノルマ役のS.ラドヴァノフスキーは 声域も広くなかなか良かったが、アダルジーザを歌った、今回が役デビューという、J.ディドナートが特に素晴らしかった。舞台を森の中に設定したのは良かったが、 少々暗過ぎた。

A(モーツアルト「魔笛」)

B トーマス・アデス「皆殺しの天使」: 密室における極限の人間模様を描いたスペイン映画を鬼才T.アデスがオペラ化したもので、特殊な楽器を活用した管弦楽の響きは抜群であったが、絶叫が連続する歌 には少々閉口した。また、シュールなストーリー展開にはついて行けなかった。

C プッチーニ「トスカ」:D.マクヴィガーによる新演出の舞台は、現地ロケかと見紛う程重厚。細部もリアルで臨場感満点であった。 出演歌手は皆好演であったが、個人的には、スカルピアを歌ったジェリコ・ルチッチ が一番気に入った。

D (ドニゼッティ「愛の妙薬」)

E (プッチーニ「ラ・ボエーム」)

F ロッシーニ「セミラーミデ」: アンジェラ・ミード(S)、 エリザベス・ドゥショング(Ms)ほか超絶技巧をもつ歌手を集めたキャストは、声としては理想的であり、ロッシーニの難曲の完璧な歌唱は、感動的でさえあった。 衣装も素晴らしかった。

Gモーツアルト「コジ・ファン・トゥッテ: 舞台を20世紀中頃 のNYの遊園地やモーテルに設定し、本職の大道芸人も多数出演する賑やかなもので、視覚的にも楽しめた。歌手は、ブロードウェイの歌姫 K.オハラを含めて初めて聴く 人達ばかりであったが、粒ぞろいであった。

H ヴェルディ「ルイザ・ミラー」:S.ヨンチェヴァ、P.ペチャワ、 P.ドミンゴ及びバス2人の出演者はみな素晴らしかったが、実演に接したことがないオペラだけに、ドラマとしてもなかなか見応えがあった。

I マスネ「サンドリヨン」:曲自体、J.ディドナート、S.ブライズ等METの名歌手による歌は勿論素晴らしかったが、 奇抜な衣装も大いに楽しめた。また、同じ物語であるロッシーニ版(「チェネレントラ」) との切り口の違いも面白かった。

追記XV:2018-2019シーズンも10作が上映される。

@ ヴェルディ「アイーダ」
主演のA.ネトレプコが観たかったので新宿ピカデリーに出かけた。 19年前、マリインスキー劇場で彼女のスザンナを見てファンになったが、今回も期待通りの歌唱で演技も素晴らしかった。 演出(再演)は、S.フリゼル

Aサン=サーンス「サムソンとデリラ」)
アラーニャとE.ガランチャの歌はもとより、METならではの壮大な舞台装置や豪華な 衣装が素晴らしかった。このオペラは、実演に接したことがなかったので、物語的にも新鮮に感じた。

Bプッチーニ「西部の娘」
ジョンソン役のJ.カウフマンは、期待通りの好演で、声、容姿ともまさに適材適所。 ミニー役のドラマティック・ソプラノ:ヴェストブルックもさすがA立派。

Cニコ・ミューリー「マーニー」
題名役のI.レナードは声、容姿とも大変魅力的であったが、盗癖を持つ女の異常な言動は、 理解できず、不自然にさえ思えた。ヒッチコックが映画化したものがyoutube にあったので、後日観てみたい。