マスネー作曲「マノンの肖像」のあらすじ

 初老のシュヴァリエ・デ・グリュは書斎で、外から聞こえる農民たちの楽しい歌を聴いている。それは彼に、
かつての幸福な日々を想起させる歌であった。小箱の底から彼はだいじにしまってあるマノンの肖像画を取
り出して想い出にふける。死んだ友人の子である子爵ジャンがローマ史を習いに来るが、やがて彼は恋につ
いて論じはじめ、デ・グリュの親友ティベルジュ(マスネの「マノン」ではカットされた役であるが、原作では神学
校の仲間であったデ・グリュを献身的に助ける役)が後見人となっている少女オロールへの恋心を打ちあける。
オロールには財も身分もないことを理由に、デ・グリュはそれを退ける。ちょうどやって来たティベルジュ
の説得も効かない。部屋に残されたジャンとオロールは、絶望して心中も考えるが、キスをしようともみ合う
内に、小箱が落ちて中から肖像画が出てくる。ふたりが描かれている女性の美しさに驚いているところへティ
ベルジュが戻ってきてそれを見るなり、一計を案じる。デ・グリュが戻り、しばらく説教をしてジャンを帰したあ
と、ふたたびオロールが現れる。しかし今度は、その衣装や姿が、かつてアミアンの旅龍で馬車から降りてきた
マノンそっくりであった。実は、ティベルジュの育て上げたオロールは、マノンの兄レスコーの娘だったのである。
似ていて当然。デ・グリュは納得して若いふたりの間を認める。(公演プログラムより)