オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」:あらすじ

第1幕

第1場:イズマイロフ家居間、第2場:同庭先、第3場:カテリーナの寝室
カテリーナは裕福なイズマイロフ家に嫁いだが、意地悪な舅ボリスと、夫ジノーヴィとの愛のない生活に傷心の日々を送っている。 製粉所の堤防が壊れたので夫は外出、舅は「亭主が出て行くのに涙一つ流しよらん。貞操を誓わんか。」とねちねちと小言。 そこへ、新しい下男セルゲイが女中を手ごめにしようとして大騒ぎになる。カテリーナはセルゲイを叱責するが、 セルゲイは下心を抱きカテリーナを押し倒す。それを見たボリスは「不倫じゃ。息子に言いつけてやる。」と怒る。 その夜遅く、カテリーナのもとにセルゲイが忍び込み強姦する。カテリーナはセルゲイの虜になり、2人は固く抱き合う。

(第3場幕開けの孤独を嘆くカテリーナの悲痛なアリアは極めて美しい。後半のレイプ・シーンは、性行為を音楽で描写した有名な場面で、 作曲者の非凡な才能がうかがわれる。スターリンが激怒したのもまさにこの点にあった。)

第2幕

第1場:イズマイロフ家庭先、第2場:カテリーナの寝室
ボリスが夜回りをしながらカテリーナに対する抑えきれない欲望を歌う。そこへ情事を終えたセルゲイが窓から逃げ出す。 ボリスはセルゲイを捕まえ、鞭で打ちすえる。驚くカテリーナや下男たちに、ボリスは怒りに打ち震え、息子をすぐ呼びにやらせ、 スープを作れと命じる。切羽詰ったカテリーナはスープに毒キノコを入れる。ボリスは苦しみだし、臨終に立ち会った牧師に懺悔するが、 カテリーナを恨めしげに指さして死ぬ。カテリーナは嘘泣きをして食中毒とごまかす。再びカテリーナは寝室でセルゲイとの逢瀬を楽しむが、 ボリスの亡霊に悩まされる。そこへジノーヴィが帰ってくる。ジノーヴィは不義の現場を押さえ、カテリーナを革のベルトで打ちすえるが、 セルゲイにより殺される。

(第1場のボリスのグロテスクなアリアと、牧師のシニカルなアリアが面白い。第1場から第2場の間奏曲はパッサカリア形式の壮大なもので、 舞台外のバンダも加わり、悲劇的要素を強調する。ショスタコーヴィッチのすぐれた管弦楽法が聴きものである。)

第3幕

第1場:イズマイロフ家納屋の前、第2場:村の警察署、第3場:イズマイロフ家納屋の前(宴会場)
カテリーナとセルゲイの結婚式が自宅で行われる。納屋にジノーヴィの死体を隠し、何食わぬ顔をする2人。だが、酔いどれの農夫が死体を発見し、 警察に通報する。2人は結婚式の宴席で逮捕される。

(この幕は全体的に短めで、農夫のコミカルな歌やバンダが大活躍する軽快な「怒りの日」のパロデイの間奏曲、警官のユーモラスで グロテスクな合唱と行進曲など、重苦しい劇の中で息抜きの役割を持つ。なお、この幕を交響曲のスケルツォに相当するとする意見もある。)

第4幕

第1場:シベリア街道 湖のほとり
カテリーナとセルゲイは刑に服し、シベリアに流される。2人と流刑者たちはとある村の湖のほとりで休憩する。すべてを失ったカテリーナにとって、 ただ一つの頼みは愛するセルゲイの存在であった。だがセルゲイは心変わりし、別の女囚ソネートカと関係を持ってしまう。囚人たちに囃され、 カテリーナは絶望のあまり、ソネートカを道連れに湖に身を投げる。役人は出発を告げ、囚人たちは物悲しい歌を歌いながら船に乗り舞台を去る。

(ここは、ムソルグスキーの影響を受けたロシア色豊かな場面。特に幕切れ近く、絶望したカテリーナが歌うアリアは悲痛そのもので、 劇的なクライマックスを作り上げている。)

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