オペラ「ル・グラン・マカーブル」のあらすじ

 舞台はある世紀におけるブルーゲルランド侯国。

第1場(荒れ放題の墓地)

 陽気ではあるが大酒呑みのピートが、場所を求めて現れたカップル:アマンダとアマンドの情事を眺めていると、突然墓の中から <大いなる死(ル・グラン・マカーブル)>であるネクロツァールが現れる。そして自分が<死神>あり、今宵世界は破滅するで あろうと預言する。彼はピートを隷属させ、墓のなかから大鎌やラッパ等の小道具を取ってこさせる。この間もアマンダとアマンド は情事にふける。ネクロツァールはピートを馬にしてまたがり、侯国の首都へと向かう。

第2場(宮廷占星術師アストラダモルスの家)

 家の中には、望遠鏡、測量機器、星座表などが台所用品、汚れた洗濯物などとともに置かれている。女主人のメスカリーナはアスト ラダモルスをむち打ったり、ペットの蜘蛛を押し付けたりして彼を虐待する。アストラダモルスが星の様子を観察しはじめると、 メスカリーナは赤ワインを手に眠り込み、女神ヴィーナスが彼女にいい男を贈ってくれる夢を見る。そこに実際、ヴィーナスとともに ネクロツァールが、ピートにまたがって現れる。アストラダモルスは飲み友達ピートができたので喜ぶ。ネクロツァールは眠っている メスカリーナを犯すとともに、吸血鬼のように彼女の喉笛に噛みつき、絶命させる。アストラダモルスは彼女から解放され快哉を叫ぶ。 アストラダモルスとピートは、ネクロツァールに命令され、メスカリーナの屍を地下室に運ぶ。ネクロツァールが直前に迫っている 世界の終末を、勝ち誇ったように告げ、3人は一緒に侯爵の宮殿へ向けて出発する。

第3場(侯爵の宮殿)

 ブルーゲルランドの支配者は、食い意地がはり、子供じみたゴーゴー侯。彼は対立するふたつの党派、すなわち白党派と黒党派を率い る二人の大臣に虐げられている。二人の大臣は絶え間なく罵詈雑言をぶつけあう。その上、彼らは侯爵に姿勢の訓練と乗馬の訓練を強い る。彼らは国家の憲法を無視する一方、税金を極端に引き上げるための法令に署名するようゴーゴー侯に迫る。空腹のゴーゴー侯は、食 べ物のこと以外は頭にない。二人の大臣がやっと引下った後、秘密政治警察長官ゲポポが、配下たちとともに現れる。ゲポポは激昂した 民衆が押し寄せてくると警告する。民衆をなだめようと、バルコニーから大臣たちが演説を試みるが、民衆は彼らに靴やトマトを投げつけ、 ゴーゴー侯を出すように要求する。結局、ゴーゴー侯の語りかけに民衆は、歓喜する。ゲポポは彗星が接近し、<大いなる死>が迫って いるとの情報を伝える。しかし、実際に現れたのは、連れ合いが死に、嬉しくてたまらない様子のアストラダモルスであった。この間、 二人の大臣たちも逃げてゆく。ゴーゴー侯とアストラダモルスはいっしょに歌い踊る。突如、警鐘が鳴る。ゴーゴー侯は救いを求めて嘆願 する。アストラダモルスは彼を食卓の下に隠す。ネクロツァールがピートにまたがって登場し、さし迫っている世界の終末を告知する。 民衆はネクロツァールに命乞いする。その後、隠れていたゴーゴー侯も加わり、すすめられて痛飲した4人はすべて酩酊してしまう。突然、 爆発が起こり、恐怖の叫びとともに彗星の光がすぐ近くまで迫っていることが分かる。ネクロツァールは、パニックに陥り、またがった 木馬から落ちる。

第4場(第1場と同じ墓地)

ピートとアストラダモルスは、自分たちは死んで天国に召されたと思っている。酩酊したゴーゴー侯が現れ、自分は生きていると感じるが、 自分がこの世の人類最後の生き残りで、あとはみな死体だと怖れている。突然、3人の兵士が、戦利品の宝物を山と積んだ手押し車ととも に登場する。彼らはゴーゴー侯を「市民」であるために捕らえ、殺そうとする。自分は侯爵であると主張するゴーゴー侯のことばも虚しい。 その時、酔いからさめたネクロツァールが立ち上がり、ゴーゴー侯を認めたため、ゴーゴー侯は、救われる。
 落胆し、弱気になったネクロツァールは死のうとする。そのとき地下墓所から仮死状態にあったメスカリーナが現れ、怒り狂ってネクロ ツァールに飛びかかってくる。ふたりの兵士が彼女を押さえつけたので、彼は命拾いをした。その間に、もうひとりの兵士が縄に縛られた ふたりの大臣たちを連れてくる。彼らは意気地なく、卑屈に許しを請う。高率の税金の提起、異端審問所の設置を案出などについて、二人 の大臣とメスカリーナは互いに罪をなすりつけ合う。罵い合いは一同の殴り合いに発展し、みなすべて地面に倒れてしまう。ピートとアス トラダモルスが散策しながらやって来る。彼らはまだ天国にいると思っている。けれども、ゴーゴー侯が彼らにワインをふるまうと、「我ら の喉は渇く、ゆえに、我らは生きている」と気がつく。ネクロツァールは悲嘆に暮れ、しぼみはじめ、だんだんと小さな球になってゆき、 ついには跡形なく消えてしまう。アマンダとアマンドのカップルが乱れた恰好で墓のなかから現れる。彼らは、世界が終わりかけたことなど いっこうに知らない。
フィナーレでは、「死を恐れることなかれ、善良なる人々よ! 自分の死時など、誰にも分からぬ! 陽気に生きよう、それまでは!」 とすべての登場人物たちが歌う。  (Wikipedia等内外のネット上の資料、公演プログラム等より)