行政情報非公開決定についての救済申出書(別紙) 

                                                        平成22年1月5日

文京区情報公開及び個人情報保護審査会 殿

             救済申出者  ■■■■■ 
                           文京区■■ ■−■−■(
          
1.救済の申出をする決定及び内容

  区長が、平成21年11月6日付 文都地第210号により行った決定

  @春日・後楽園駅前地区市街地再開発事業における『事業が成り立つためには141m
という高さがどうしても必要』という区の説明を裏付けるための、これ以上下げられない
根拠。また、事業採算見積もり、もしくは概算がわかる資料、および損益分岐を示す数値
的データ
  A上記事業の施行区域の要件に関して、都市再開発法第三条二号のイ〜ヘの除外規定に
該当しない耐火建築物の面積の合計

を請求したのに対し、「請求内容に合致する文書および資料は存在しないため」という理
由により非公開が決定された。


2.救済の申出の内容

 非公開とされた決定を取り消し、請求した行政情報@を公開する決定を求める。

3.救済の申出の理由

  不存在につき非公開とされた決定は、次のとおり違法・不当である。

  @.不存在とすることについて
          下記のア、イのとおり、区は区民に対して計画について事業採算にふみこむ具
        体的な説明をしており、その根拠となる情報が存在し明示を受けたことを認めて
        いる。
          また、ウの内容により区と都市計画審議会委員によって計画について具体的な
        質疑応答が行われている事は明白であり、少なくとも審議会の開催時には、その
        根拠となる検討資料が一時的にせよ存在しなければ、憶測で審議を行ったという
        ことになり、行政の権威ある審議会としてまったく妥当性が無い。
          区はエのように述べ、保有しないのが当然としているが、かつて明示を受け、
        審議会でこれを元に答弁し、都市計画決定という重要な行政処分の根拠とした情
        報はまぎれもなく行政情報であり、計画が存続する限り区は当然自ら保有するべ
        きと考える。
          仮にこれが事実で、文書が区の管理下になく、保有もしていないとすれば、「文
        書の適正な保存と円滑な運用、公開請求をするものの利便を考慮した適正な措置
        を講ずる」とした文京区情報公開条例第26条、27条に違反しているものと考
        えられる。 (末尾の参考文献参照)
   
  A.非公開とすることについて
       オ、カのとおり、都市計画審議会会長や区は、現段階では計画の大枠(フレー
        ム)を決めるだけということで区は事業採算の概要の開示を拒否している。
        しかし実際にはア、イ、ウのように事業採算性を都市計画のフレーム決定の根拠
        としており、採算に関する情報を利用しながら開示を拒否しているわけで、これは
        明らかに矛盾であると同時に区民の知る権利の侵害である。
          文京区情報公開条例第1条の「区民の知る権利を保障する」という趣旨を遵守し、
        審議会の審議時に存在した検討資料は「区が区政に関し区民に説明する責務を全う」
        するために当然公開されるべきと考える。同様に、本件で公開を請求した事業採算
        に関する情報を非公開とすることは、条例の趣旨に照らして著しく不当である。
          なお、141mという周囲から突出した高さは、周辺住民の環境を害する可能性
        がきわめて高いため、条例第7条3号によって、再開発準備組合(法人その他の団
        体に該当)に関する情報といえども公開するべきと考える。
          また、条例第25条3項では「区長は、財政援助団体の情報提供について必要な
        措置を講ずるよう努めるものとする」と規定している。再開発事業は多額の税金を
        投入するものであり、文京区長には再開発準備組合に関する情報を積極的に公開す
        ることが求められている。

                                        記

    ア.H20年8月以来の区民有志による意見交換会、およびH21年2月〜3月の都市
      計画説明会で、都市計画部地域整備課は「高さを155mもしくは141mより下げ
      ると採算がとれない」と再三説明している。

    イ.区は、当該都市計画の妥当性を判断するにあたり、高さを決める大きな要素である
        事業採算に関する情報を再開発準備組合から明示されたことを認めている。(H21.
        11.9地域整備課との面談時に口頭にて)

    ウ.H21年度第1回都市計画審議会では、「できれば中高層の開発でできないか」(議
      事録32頁)、「フレームを小さくして高さを下げることはできないか」(同40頁)な
      どの質問が委員から出ており、区は、当該計画における土地利用および施設整備のため
      には、「(周辺の建物の)その高さに合わせると事業自体が成立しない」(同35頁)、
     「高さが賑わいや防災性とも極めて緊密な関係であり、防災トイレとか水を貯蔵しよう
      とするにも一定のスペースが必要であり、そのために高層化せざるを得ない。今回の
      計画は141が限度だと考える」(同43頁、要約)などと回答している。

    エ.地域整備課は、「準備組合はその情報を保有しているが、現段階では提出を求めてい
      ないので、区の管理下にはなく保有していない」(11.9面談時口頭にて、11.2
      0文都地第226号)と説明している。

    オ.都市計画審議会の市川宏雄会長は「事業採算の審議をすることは、そもそも都市計
      画審議会の趣旨に反している」(同議事録41頁)と発言されており、区も「都市計画
      は地域の課題を捉えて策定するもので、事業採算を審査する手続きではない」(前出文
      都地226号)と言っている。

    カ.第1回審議会で「この計画を決定していいのかどうか判断できる資料として、事業
      が成り立たないと言われている数字的根拠を示してほしい」(議事録37頁、要約)と
      委員が要望しているのに対して、都市計画部長は「事業性が成り立つかどうかの根拠
      は・・・現時点では具体的なものは示すことはできない」(同40頁)と回答している。

 

                                           以上


【参考文献】

新潟市情報公開・個人情報保護審査会 平成20年9月2日付「新情審第1号の7」

新潟市情報公開条例は,同条例における公文書の定義について,第2条で「実施機関の職
員が職務上作成し,又は取得した文書図画及び電磁的記録であって,当該実施機関の職員
が組織的に用いるものとして保有しているもの」としているため,12条5項報告書を公
文書と認定するためには,同条で規定する「保有」されていたものと判断されなければな
らない。
一般に,情報公開制度における「保有」とは,公文書を事実上支配している状態をいい,
事実上の支配とは,文書の作成,保存,閲覧,廃棄等の取扱いを判断する権限を有してい
ることを意味するものとされている(総務省行政管理局(編)「詳解情報公開法」(平成
13年25頁参照)。
実施機関が建築基準法第12条第5項の規定により,指定確認検査機関に報告を求め,提
出を受けた書類については,法の規定に基づき提出された書類という性格からして,施行
規則等により指定確認検査機関で保管すべき書類として,廃棄等について制限を受けるこ
とがあるとしても,その検査期間中においては,当該文書の管理,保存,閲覧等について
事実上支配している状態にあると考えられる。
  よって「保有」に該当すると言うべきものであり,条例第2条で規定する公文書に該当
するものと判断できる。