「高野聖」のあらすじ

敦賀に帰る「私」が、東海道線の中で一人の旅僧に出会い、その僧と同宿することとなった。 その僧侶から「私」が聞いた話である。 僧が若い頃、加賀から飛騨の山々を抜け信州へ旅していた時のこと、洪水の後の荒道で迷って しまった。彷徨うほどに、蛇の等恐怖におびえ、蛭の森で血を吸われ這々の態で抜け出したと ころで、僧は馬の嘶きを聞いた。 「やれ助かった」と訪ねた孤家には、奇妙な夫婦と下働きの親仁がいた。女は若いとは云えぬが 妖艶な女、女の親切に誘われて僧が降りて行った湯の湧く谷川は、秘密の切り穴のよう。そこで女は 蛭に吸われた僧の肌を撫でるように洗ってくれた。 「わたし、汗っかきですから」と、さらりと着物を脱いだ女の姿は、まるで白桃の花の艶やかさ。 あたりは陶然とした空気に包まれる。しかしその美しさとは掛け離れた異様な光景に出会う。女の 足元に纏わりつく蟇蛙、はだけた女の胸に張り付く蝙蝠、女はそれらを邪険に振り払った。けれど もこんな奇妙な出来事も、女の魅力を損なうものではなかった。優しさに満ちた女の振舞に、僧は 「いっそ仏の道を捨てても、この孤家で暮らせたら」と夢想するほど、女の魅力に惹かれていった。 さて、翌朝、女は初めて味わった僧への清純な心のときめきを内に秘め、何事もなかったように僧を 送り出した。別れを告げ、里近くの夫婦滝まで辿りついた時、僧は目の前に幻のような女の姿を見た。 僧は自分を抑えきれず女の元に駆け寄った。そして・・・・・ああ!!(公演チラシより)