別記様式第8号(第4条関係)

                       救済申出処理結果通知書  
   
                           21文情審第13−1号
                           平成22年3月25目
                  様

                   文京区情報公開及び個人情報保護審査会  印

 平成22年3月15日付けで救済の申出のあったことについて審査した結果、次のとおり処理す
ることにしましたので、文京区情報公開及び個人情報保護審査会条例第12条第2項の規定に基づ
き通知します。

1 救済の申出のあった
決定及び内容
平成21年11月6目付21文都地第210号
「春日・後楽園駅前地区再開発事業における「事業が成り立つために
は141mという高さがどうしても必要」という区の説明を裏付けるため
の根拠、事業採算見積もり若しくは概算がわかる資料及び損益分岐点を
示す数値的データ」という趣旨の情報公開請求について、該当する文書
の不存在を理由として非公開決定を行った。
2 救済申出処理結果
別紙審査会事件処理結果のとおり、実施機関への勧告は行いません。

審査会事件処理結果 事件名 市街地再開発事業関係資料非公開決定取消申出事件(第49号事件) 1 審査会の結論   本件非公開決定処分は妥当である。 2 救済申出の経過 (1)救済申出入は、平成21年11月2日付で「春日・後楽園駅前地区市街地再開発事業におけ   る『事業が成り立つためには141mという高さがどうしても必要』という区の説明を裏づけ   るための、これ以上下げられない根拠、また事業採算見積もしくは概算がわかる資料及び損 益分岐点を示す数値的データ」について、文京区情報公開条例(以下「条例」という。)第   5条に基づいて文京区長に対して行政情報の公開請求をした(以下「本件請求」という。) (2)実施機関である文京区長は、本件請求に係る行政情報を、都市計画決定に基づき今後実施   が予定される春日・後楽園駅前地区第一種市街地再開発事業(以下「本件事業」という。)の   事業収支を確認できる資金計画(以下「本件行政情報」という。)であると特定した上で、当   該行政情報が存在しないことを理由として、平成21年11月6日付文都地第210号によりこ   れを非公開とする決定を行った(以下「本件処分」という。)。 (3)救済申出入は、本件処分について平成22年1月5日付で、条例第20条1項の規定により   当審査会に対して救済の申出を行った。 3 救済申出入の主張 (1)救済申出の趣旨   救済申出の趣旨は、本件処分を取り消し、本件請求に係る行政情報の公開を求めるものであ  る。 (2)救済申出の理由の要旨  イ. 区は、区民有志による意見交換会や都市計画説明会、あるいは所管課である地域整備課と   の面談において、本件事業の事業採算に踏み込む具体的な説明をしており、またその根拠と   なる情報を再開発準備組合から明示されたことを認めている。さらに、本件事業について審   議した文京区都市計画審議会において事業採算に関する具体的な質疑応答が行われている。   以上から、事業採算に関する説明の根拠となる資料が一時的にせよ存在したはずである。  ロ. 区は、現段階では本件行政情報を保有していないというが、再開発準備組合から明示を受   け、都市計画決定という重要な行政処分の根拠とした情報は、区は当然自ら保有すべきであ  る。仮に保有していないとすると、情報公開条例の適正かつ円滑な運用等を規定した条例第   26条、27条に違反している。 ハ. 区は、「現段階では本件事業の太棹(フレーム)を決めるだけ」として事業採算の概要の   公開を拒否しているが、実際には事業採算性をフレーム決定の根拠としており、明らかに矛   盾していると同時に区民の知る権利を侵害している。 ニ. 条例第25条第3項により、区は、財政援助団体の情報提供を促す努力義務が課せられて   いる。再開発準備組合は区から財政援助を受けており、財政援助団体に当たる。 4 実施機関の処分理由 (1)本件事業計画についての都市計画を検討した結果、計画地区の土地利用の方針として本都   市計画に定める建築物の高さの制限は155mが妥当であると判断したところであるが、近隣   住民等の意見を受けて再開発準備組合に建築物の高さの限度を下げる検討を要請したところ、   同準備組合から「141mの制限であれば、本件再開発事業を実施できる」との申し出があった。   そこで、本都市計画で定める建築物の高さの制限を141mに変更してその後の都市計画説明会   で説明し、さらに文京区都市計画審議会にも諮問したところである。    実施機関は、準備組合から上記高さ制限に関する準備組合の判断について口頭で通知され   ただけであって、事業採算に関する文書等による資料については提供を受けていない。 (2)都市計画は、東京都市再開発方針や文京区都市マスタープランなどのまちづくりに関する   上位計画に沿って土地利用方針や市街地整備の方針を定めるものであって、都市計画決定の   時点では事業採算性に関する情報を必要とするものではなく、また、都市計画審議会は事業   採算性を審議、検討する場でもない。事業採算の見積となる資金計画等は、都市計画決定さ   れた後に再開発準備組合が当該都市計画に沿って作成するものである。実施機関がそれらの   事業計画の提出を再開発準備組合から受けるのは、本件事業について認可の申請があった時   点であり、したがって、現時点で実施機関が本件行政情報を保有する理由も、必要もないも   のである。 5 審査会の判断 (1)文書の存否について   実施機関は、本件行政情報は存在しないと言っているので、この点について検討する。   本件行政情報については、救済申出入が主張するとおり実施機関の職員が都市計画説明会や  都市計画審議会の場で事業採算に関する具体的な発言をしており、実施機関が事業採算の根拠  に関する何らかの資料を保有していてしかるべきとも考えられる。 しかし、実施機関は当該地  区における建築物の高さ制限を当初は155mとしていたことが認められるが、これは当該地区の 地域特性や周辺地域で実施された都市計画事業などを踏まえて、高さの上限として判断したも のであるから、それよりも低い高さとするための根拠となる情報は、都市計画決定手続き上か らは実施機関にとって必ずしも不可欠な情報であったとは言えないことが認められる。一方で 多数の地元権利者がかかわる第一種再開発事業において、将来の建物に対する権利関係に影響 する事業採算性に関わる情報は、複雑な権利関係を整理しながら慎重に事業を進めていかなけ ればならない再開発準備組合や権利関係者にとっては機微な情報であることが認められ、再開 発準備組合において慎重な取扱いがされていることが予想される。  実施機関が、都市計画審議会や住民説明の際に事業採算性に関して伝聞でなく、あたかもそ の内容を実施機関でも検証したかのようなニュアンスで説明していることから、救済申出入等 が、区が一定の目的のもとに主体的にその情報を取り扱っているかのような受け止め方をした のは無理からぬ点があり、事業採算性に関して再開発準備祖合から文書等による情報の提供が あった可能性も否定できないが、上述のとおり、本件情報の実施機関にとっての必要性や性質 等に照らして、本件行政情報が明らかに存在する、あるいは存在したとまでは断定できない。 (2)救済申出入のその他の主張について   救済申出入は、本件事業の事業採算性に関する情報は都市計画決定という重要な行政処分の 根拠とした情報であるから実施機関は当然に保有すべきである、と主張する。この点、本件事 業の計画決定については、区長の諮問により平成21年度第1回及び第2回文京区都市計画審議 会で審議されているが、都市計画は、土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する 計画を定めるものであって(都市計画法第4条)、上記都市計画審議会議事録に記録された同審 議会会長の「(事業採算性に関する審議は)この審議会の趣旨に反する」旨の発言等からも、都 市計画決定手続きにおいて事業採算性は審議の対象とならないことが認められる。したがって、 実施機関が同審議会において本件事業の採算性に言及したことの妥当性については疑問が残る が、事業採算性に関する情報について実施機関が当然に保有すべきものであるとは言えない。   また、実施機関において本件事業に関する補助金等の予算は計上されておらず、実施機関も 再開発準備組合に対して補助金等は支出していないということであるので、実施機関が再開発 準備組合に対して財政援助をしている事実は認められない。 (3)以上から、本件行政情報が存在しないという実施機関の説明に明らかな不合理な点は認め られないことから、当審査会は、当該情報の不存在を理由とする本件非公開決定処分は妥当な  ものと認める。