「藤沢オペラコンクール」は、1992年以来2〜3年間隔で開催さているため、まだ歴史が浅く、 今回が第6回である。このコンクール入賞者(含、奨励賞)の中からは、菅英三子、栗林朋子、 志村文彦、小森輝彦、佐藤美枝子、林正子、John Nuzzo、成田博之等国内外の第一線で活躍す る実力派のオペラ歌手を多く輩出しており、以前から関心を持っていた。しかし、会場(藤沢市民会館)が 都心から離れていることなどの理由で、出かけたことがなかったが、今回はじめて第一次、及 び第二次予選の一部と本選を聴く機会を持った。今回の応募者は,124名(A:1, Ms:7, S:90, Bs:5, Br:7, T:14)であったが、いわゆる三大コンクールの優勝者を含め、すでにオペラの舞 台で活躍中の人も何人か入っており、予想以上にレヴェルの高いコンクールであることを実感 した。審査委員も栗林義信、畑中良輔、松本美和子等最高のスタッフで構成されている。 このコンクールの趣旨に「オペラ歌手をめざす新進声楽家を対象に、卓越した才能を発 見し、楽壇への登場を促す」と謳われているように、当然ながら課題はすべてオペラアリアで、第一次予選が、 7分以内の自由曲1曲、二次予選が合計12分以内で自由曲1曲と選定曲1曲の計2曲、本選では時間制限なしで自由曲 2曲となっている。また、このコンクールの特徴は、一次予選通過者が多く(今年: 約40%)、二次予選 が2日にわたって行われるとともに、二次予選出場者は、”ワンポイント・アドヴァイス”を受けることが できることである。審査員には、大きな負担がかかるが、応募者にとっては、 実力を十分に発揮する機会が与えられる。3日間の一次予選(3月14〜16日)の結果、51名(Ms:4、S:34、Bs:2、Br:4、T:7) が二次予選(3月17〜18日)に進んだ。さらに本選には、10名(Ms:1, S:7, Br:2)が進んだ。これら10人の内8人は、一次又は二次予選で聴く事ができたが、まずは順当な勝ち残りかと思われた。 審査の結果入賞は、第一位:日比野幸(S)、第二位:丹藤亜希子(S)、第三位:田島千愛(S)、奨励賞:中村恵理(S)、野宮 淳子(S)、和泉純子(S)とソプラノが独占し、大隈智佳子(S)、藤田幸二(Br)、村林徹也(Br)、安永紀子(Ms)が 入選となった。個人的には、予選は聴けなかったが抜群の美声と歌唱力を示した中村恵理、力強い美声と優れた歌唱力 を持つ藤田幸二及び豊かな美声の日比野幸の3人の入賞を予想したが、これは大きく外れてしまった。(2005.3.24)
追記T:このコンクールが今年開催されることは、意識していたが、何故か9月頃と思い込んでいた。間違いに 気付いた時には、すでに本選(3月20日)も終わっていたため、せめて受賞者の声を聴きたいと思い、6月1日 に藤沢市民会館代ホールで開催された「第7回 藤沢オペラコンクール記念演奏会」に出かけた。下記の6名の受賞者及びゲストとして迎えた福井敬(T) 及び前回優勝の日比野幸(S)によるオペラアリア・コンサート は、畑中良輔同コンクール運営委員長の軽妙な司会もあり、大変楽しかった。
第一位:初鹿野 剛(Br)
第二位:友清 崇(Br)
第三位:藤岡弦太(Br)
奨励賞:大沼 徹(Br)、中島郁子(Ms)、岡田尚之(T)
(入選:真野路津紀、清水理恵、安井陽子、小野和歌子、堀 万理絵、小川里美)
なお、第一位受賞の初鹿野 剛は、2005年(第74回)の「日本音楽コンクール」で初めて聴いたが、その 抜群の美声と歌唱力が強く印象に残っている。オーケストラと協演する同コンクールの本選では、選曲の関係 で損をした為か「入選」どまりであったが、今回は、見事優勝を勝取ったのは、ご同慶の至りである。(2008.6.2日 記)