「沈黙」:あらすじ

 時は江戸時代の初期、日本でキリスト教が禁止されたころ。数年前に消 息を絶ったかつての恩師、フェレイラの安否を探るとともに、新たな布教 活動をするため、若き宣教師ロドリゴは、マカオの教会で出会ったキチジロー を案内人として、反対をおして日本に渡る。 長崎の小村で布教を始めた彼が目にしたものは、残酷な拷問を受けながら も信仰を棄てず、嬉々として死につく信徒の姿だった。意志が弱く、踏み絵を 踏んでしまったキチジローの密告によってやがてロドリゴも 捕らえられ投獄されてしまう。ある日、牢内にフェレイラを迎えたロドリ ゴは、彼の余りの変節ぶりにショックを受け、「出て行ってくれ」と怒鳴 る。いよいよ明日が処刑の日となったとき、再びフェレイラが訪問し、 「お前が転ばねば信徒は救えない。だいいちこのような状況になっても神 は何もしてくれないではないか」とロドリゴに棄教を迫る。絶望の縁に立 たされたロドリゴは、捕らえられた信徒をこれ以上苦しめないために、 踏み絵に足をかける。この時、神の存在を語るかのように奥から柔らかな 合唱が響き、幕が下りる。(新国立劇場公演案内、プログラム、原作等よ り)。