オペラ「いのち」のあらすじ

【第1幕】松尾医師は妻の夏子を原爆症で亡くした。彼は墓参りの帰り、僧から妻が大好きだった"つつじ"を貰い、
     彼女の幻影に出会ったのではないかと錯覚し号泣する。自分の過去を振り返り、子供たちに戦争の悲惨さを、
     そして"いのち"の大切さを思う松尾は、日本の歴史の中でも大切な事件の一つ、宗教弾圧を語る。
     原爆投下の日、松尾は福岡に出張中で被爆しなかった。恩師の山田医師は長崎で診療中に被爆した。看護婦
     の夏子は防空壕に入る間際に閃光を浴びた。この三人の心の葛藤が描かれる。1957年、死を目前にした山田は、
     松尾に自分の被爆経験を語ろうと決心をする。

【第2幕】原爆投下日、浦上地区の人々は必死に裏山から逃げ道を探した。山田医師夫妻は出張をしていた病院で
     被爆し治療を行っていたが、自分の病院が心配になり移動する。被爆した人たちが次々に登場し、そのうちの
     一人の子ども、奈々子が戦争と変わってしまった人間の心を歌う。 夏子は急ぎ病院に駆けつける途中、この
     場所を通り奈々子に会う。夏子は奈々子を助けたつもりでいたが......。

【第3幕】戦後14年初秋、山田医師の後を継いだ松尾と夏子がグラバー邸を訪れ、元入院患者たちに偶然再会する。
     被爆者の話をする彼らに同情するが、自分の病状を松尾に隠している夏子はあまり多くを語らずわかれた。
     松尾と夏子の愛は深まるが、何回求婚しても夏子は返事をはぐらかす。そして夏子は倒れてしまい、病院に
     運ばれる。被爆者である担当女医岩村は、夏子の心を救うために、自分の過去と夏子の病状を初めて松尾に
     告白する。松尾は夏子の好きな"つつじ"の絵を持って病室を訪れ、もう一度結婚を申し込む。夏子は自分の
     "いのち"の短さを感じながらも、その心に変化が起きる。1960年結婚、翌1961年夏子死す。大合唱の中、梵鐘
     の音と教会の鐘の音が聞こえてくる。(新国立劇場「公演詳細」より)